前回は、「離婚の話し合いの最中に夫婦の一方が所有する家に住むことはできるのか?」というテーマでブログを書きました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/831
前回に引き続き、離婚協議に伴い、同居していた建物からの立ち退きに関するトラブルについて取り上げたいと思います。
今回は、配偶者の所有する建物ではなく、配偶者の両親などの親族が所有する建物に夫婦で居住していたところ、夫婦間で離婚協議が行われることになった場合に所有者である配偶者の親族から立ち退きを求められた場合について取り上げます。
〈事例〉
私(夫)は、妻と一緒に妻の父が所有する家に同居していましたが、このたび妻と離婚することになり、その話し合いの最中において、妻の父が私に直ちに家から立ち退くよう求めています。
この場合に、私は妻の父の要求に応じて直ちに立ち退かないといけないのでしょうか?
〈結論〉
過去の裁判例において、夫婦間の離婚協議中に使用貸借契約の解除を理由として無条件に即時明け渡しを求めることは、権利の濫用という意味で時期尚早であり、解除の意思表示の効力は夫婦関係の解消によって確定的に生じると判断されています。
〈解説〉
1.事例において、夫が妻と一緒に妻の父が所有する家に同居することは、妻の父との関係では使用貸借か?
使用貸借が何かについては、前回の記事で取り上げましたのでそちらをご確認ください。
この事例において、夫が妻と婚姻期間中に妻の父の所有する家に同居することは、夫と妻の父の関係は使用貸借契約に該当します。
2.夫は、妻の父の所有する家からはいつ立ち退かなければならないか?
配偶者の親族の所有する家において夫婦が同居する場合に、使用期間や使用目的を定めていないことが一般的ですので、上記事例でいう夫(借り主)と妻の父(貸し主)との関係が使用貸借契約だとすると、法律上、妻の父はいつでも夫に使用貸借契約を解除して夫に立ち退きを求めることが可能となり、夫はこれに応じなければならないということになります。
しかし、裁判例においては、夫婦間で離婚訴訟が係属している場合に、配偶者の親族から使用貸借契約の解除をされた場合には、借り主にとって酷であるので、権利濫用の意味で時期尚早であるとして、その解除の効力を離婚訴訟の判決が確定して、夫婦間の婚姻関係が解消したときに解除の効果が確定的に生じるとしています。
この裁判例の趣旨からすると、本件の事例の場合でも同様の事が考えられ、夫は妻の父からの立ち退き要求に直ちに応じなければならないというわけではなく、正式に離婚が成立するまでは立ち退きの義務は生じないと考えられそうです。
次回は、「借地権の買取を求められたら」というテーマでブログを書きます。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akiyamondai/846
いつもありがとうございます。