カテゴリー別アーカイブ: 土地明け渡し請求

建物買取請求権について

前回は、民法改正による敷金と原状回復請求の明文化についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/504

今回は借地契約における建物買取請求権について取り上げてみたいと思います。

1.建物買取請求権とは

建物買取請求権とは、借地権(建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)について、存続期間が満了した場合に契約の更新がないとき、あるいは、借地権上の建物等が譲渡された場合において賃貸人が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときに、借地人あるいは建物の譲受人が、賃貸人に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求する権利です。

建物所有目的の土地の賃貸借契約が終了すれば賃借人は原状回復義務の一環として建物を収去して土地を明け渡す義務を負いますが、建物を築造した賃借人に投下資本の回収を図らせ、建物の取り壊しによる社会経済上の損失を防ぐために建物買取請求権が認められています。

2.建物買取請求権の行使の効果

建物買取請求権を行使することで、賃借人は建物引き渡し義務と所有権移転登記義務を負い、賃貸人は代金支払い義務を負うことになります。

したがって、賃借人は賃貸人から代金の支払いを受けるまでは、建物の明け渡しを拒むことができるようになり、その反射的効果として敷地(借地)の明け渡しも拒むことが判例上認められています

ただし、敷地の明け渡しを拒むことができても、その敷地を利用している間は不当利得として賃料相当損害金を支払う必要があります。

3.賃貸借契約が賃借人の債務不履行の場合に行使できるか?

建物所有目的の土地の賃貸借契約について、賃借人の債務不履行により賃貸借契約を解除された場合には、賃借人は建物買取請求権を行使することは判例上認められていません。

これは、建物買取請求権が誠実な借地人を保護するための規定であるためです。

そのため、賃借人の債務不履行により土地の賃貸借契約を解除された場合には、建物買取請求権を行使して建物収去義務・土地明け渡し義務を拒むということができないということになります。

次回は、固定資産税のお得な支払い方法について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/519

 

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一時使用のための賃貸借契約とは

前回は、引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/484

今回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げたいと思います。

建物を所有する目的で土地の賃貸借契約をする場合には、その期間は最低30年以上必要です。

そのような場合であったとしても一時使用のためであればその期間制限はありませんので、30年を経過していなくとも、賃貸借契約で定めた一時使用期間が満了すれば終了します。

このように、賃貸借契約が一時使用の場合には早期に賃貸借契約を終了させることができます。

それでは、以下解説します。

(解説)

1.一時使用のための賃貸借契約とするためには

一時使用のための賃貸借契約とするためには次の要件を満たしている必要があります。

① 賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約を短期間に限って存続させる旨合意したこと

② 一時使用のためのものであることを基礎づける事実

一時使用のための賃貸借契約といえるためには、当事者間の合意、期間の長短だけではなく、契約に向けた動機、賃貸物件の利用目的、賃貸物件が土地である場合にその地上に建てられている建物の種類、設備、構造など諸般の事情が判断材料となります

具体例としては、天変地異・火災等の後に応急的に仮設建物を建てる目的で設定された借地権などが挙げられます。

そのため、一時使用となるためには賃貸期間が1年未満でなければならないということはないし、判例においても賃貸期間が3年であっても一時使用と認めている例もあります。

2.建物賃貸借契約における一時使用

以前、普通借家契約において、賃貸借契約を期間満了で終了させ明け渡しを求める場合と、法定更新されて期間の定めのない賃貸借契約となったため解約の申し入れをして終了させ明け渡しを求める場合について取り上げたことがありました。

いずれの場合も、更新拒絶ないし解約の申し入れには、賃貸人の正当事由、立ち退き料の提供などが必要になりますが、一時使用目的のための建物賃貸借契約であれば、そのような事情が不要となります。

一時使用とする賃貸借契約を締結するのであれば、土地の賃貸借契約であっても、建物の賃貸借契約であっても、賃貸人と賃借人の間で契約前に一時使用であることにより、以上のような効果が生じることを認識し、契約書とは別の覚え書き等で明確にして、後日トラブルにならないようにすると良いでしょう。

 

次回は、賃貸物件の現況調査について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/495

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放置自動車に所有権留保が設定されていたら

前回は駐車場の明け渡し請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/449

今回は、放置自動車に所有権留保が設定されていた場合の土地明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方は誰になるか?についてご説明させていただきます。

1.自動車の所有権留保とは

駐車場に放置されている自動車の使用者が、その自動車をオートローンなどの分割払いで購入していた場合には、販売店や立て替え払い業者の担保のため、その自動車に所有権留保が設定されていることが一般的です。

自動車の所有権留保とは、販売代金あるいは立て替え払い代金の分割払いを完了するまで、担保のために自動車の車検証(登録事項等証明書)の名義を使用者ではなく、販売店名あるいは立て替え払い業者名にしておくことをいいます。

自動車使用者が代金を完済した場合には、車検証の所有者名を使用者名に変更することになります。

一方、オートローンの分割払いを滞納した場合には、使用者は自動車販売店等に自動車を引き上げられ、売却されてその売却代金はオートローンの残債務に充当されるとする内容の契約になっていることが多いです。

2.駐車場の賃貸借契約の解除の相手方について

所有権留保の設定されている自動車の使用者が駐車場代金を滞納した場合に、賃貸借契約を解除する相手方は、賃借人である自動車の使用者になります。

3.駐車場の賃貸借契約解除後の土地の明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方について

この点については、「車検証上の所有者である自動車販売店等は担保目的で所有者名義になっているにすぎず所有権は帰属していない。」「使用者が分割払いを滞納して期限の利益を喪失したため、自動車販売店等に自動車の引き上げ義務が生じている場合でも、現実に自動車を使用・利用していないため、自動車の占有者とはならない。」という見解もありますが、判例(平成21年3月10日最高裁第三小法廷判決)においては、

「残債務弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である。」

として、使用者が自動車のオートローンの分割払いを滞納した場合に、留保所有権者(車検証上の所有者である自動車販売店等)に自動車の撤去義務があると判断しました。

また、駐車場の賃料相当損害金請求については、

「妨害の事実を告げられるなどこれを知ったときに不法行為責任を負う。」

として、自動車が放置されている事実を知ったときから不法行為責任として賃料相当損害金を請求することができると判断しました。

放置自動車を撤去する場合には、まず車検証の内容を確認して、所有権留保が設定されているなら、まず留保所有権者に分割払いが滞っているか、滞っている場合には自動車を撤去していただくよう連絡することが必要になります。

次回は、強制執行における目的外動産の売却について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/464

 

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駐車場の明け渡し請求について

前回は、敷引き特約の有効性についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/444

今回は、駐車場の賃貸借契約について、賃借人による賃料の支払が滞っている場合に、駐車場の明け渡し請求(放置している自動車の撤去を請求すること)をする場合について取り上げます。

流れとしては次のようになります。

1.自動車所有者の確認

原則的には自動車の所有者が土地明け渡しの相手方となるため、自動車登録番号(ナンバープレート)と車台番号を確認した上で、最寄りの陸運支局で登録事項等証明書を取得して自動車の所有者を確認します。

放置自動車でナンバープレートが外されていて自動車登録番号が分からないような場合は、自動車の外観から車台番号を確認して請求します。

反対に車台番号が分からないような場合は、自動車登録番号を確認して、自動車の写真を添付した私有地放置車両関係位置図をつけて請求します。

軽自動車の場合は、登録事項等証明書の制度がないので、軽自動車協会にて閲覧申請して所有者を確認します。

2.駐車場契約の解除

賃借人の住所が判明している場合には、目安として借り主が3か月以上賃料を滞納したら内容証明郵便によって、滞納賃料の支払いを催告し、支払がない場合には駐車場賃貸借契約を解除する旨の催告書を送付します。連帯保証人がいるのであれば、同様に催告書を内容証明郵便の方法で送付します。

賃借人の住所が分からない場合は、後記3の訴訟手続において、訴状に駐車場賃貸借契約を解除する旨を記載して、公示送達の方法により賃借人に送達することになります。

3.賃貸借契約解除後の訴訟手続

賃借人と自動車の所有者が同一人の場合は、同人を被告として、土地明け渡しと滞納賃料及び賃料相当損害金請求の訴訟を提起します。

賃借人と自動車の所有者が別々の者であれば、賃借人には滞納賃料及び賃料相当損害金請求、自動車の所有者には土地明け渡しの訴訟を提起することになります。

なお、自動車を撤去させる目的の土地明け渡しの訴訟においては、請求の趣旨に「自動車の撤去」を掲げる必要はありません。これは、強制執行の段階で、その放置自動車を目的外動産として扱い、土地の明け渡しの判決等で取り除くことができるからです。

また、土地の一区画の部分を駐車場として使用させている場合には、その範囲及び面積を図面等で明らかにしておく必要があります

次回は、放置自動車に所有権留保が設定されていたらどうする?について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/458

 

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