前回は、引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者についてご説明させていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/484
今回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げたいと思います。
建物を所有する目的で土地の賃貸借契約をする場合には、その期間は最低30年以上必要です。
そのような場合であったとしても一時使用のためであればその期間制限はありませんので、30年を経過していなくとも、賃貸借契約で定めた一時使用期間が満了すれば終了します。
このように、賃貸借契約が一時使用の場合には早期に賃貸借契約を終了させることができます。
それでは、以下解説します。
(解説)
1.一時使用のための賃貸借契約とするためには
一時使用のための賃貸借契約とするためには次の要件を満たしている必要があります。
① 賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約を短期間に限って存続させる旨合意したこと
② 一時使用のためのものであることを基礎づける事実
一時使用のための賃貸借契約といえるためには、当事者間の合意、期間の長短だけではなく、契約に向けた動機、賃貸物件の利用目的、賃貸物件が土地である場合にその地上に建てられている建物の種類、設備、構造など諸般の事情が判断材料となります。
具体例としては、天変地異・火災等の後に応急的に仮設建物を建てる目的で設定された借地権などが挙げられます。
そのため、一時使用となるためには賃貸期間が1年未満でなければならないということはないし、判例においても賃貸期間が3年であっても一時使用と認めている例もあります。
2.建物賃貸借契約における一時使用
以前、普通借家契約において、賃貸借契約を期間満了で終了させ明け渡しを求める場合と、法定更新されて期間の定めのない賃貸借契約となったため解約の申し入れをして終了させ明け渡しを求める場合について取り上げたことがありました。
いずれの場合も、更新拒絶ないし解約の申し入れには、賃貸人の正当事由、立ち退き料の提供などが必要になりますが、一時使用目的のための建物賃貸借契約であれば、そのような事情が不要となります。
一時使用とする賃貸借契約を締結するのであれば、土地の賃貸借契約であっても、建物の賃貸借契約であっても、賃貸人と賃借人の間で契約前に一時使用であることにより、以上のような効果が生じることを認識し、契約書とは別の覚え書き等で明確にして、後日トラブルにならないようにすると良いでしょう。
次回は、賃貸物件の現況調査について取り上げたいと思います。
その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/495
いつもありがとうございます。