カテゴリー別アーカイブ: マンション管理

入居者の騒音をやめさせないリスクについて

前回は、「Airbnbを利用した空室物件の活用」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/801

今回は、賃貸物件を利用する入居者が騒音を出すなどして近隣に迷惑をかける場合に、賃貸人は入居者の迷惑行為をやめさせないとどのようなことになるのかについて取り上げたいと思います。

特にアパート、マンションと言った共同住宅の場合に多いのですが、ある部屋に住む入居者が騒がしくしたりすると、その近隣に住む入居者から大家さんに対して、「静かにさせてほしい。」などと苦情がでます。

1.アパートの場合

アパートの場合、特に苦情が来るのは、アパートの他の入居者からです。

大家さんは、入居者全員に対して、適切な状態で賃貸物件を利用させる義務を負っていますから、ある入居者の迷惑行為について、認識しているのにこれを注意せず放っておいたり、あるいは、注意してもやめさせることができないような場合は、他の入居者に対して適切な住環境を提供できていないことになります。

その結果、入居者から、適切な住環境を提供していないことを理由に、

損害賠償請求をされる

家賃の減額を要求される

家賃の支払いを拒まれる

退去されてしまう

といったリスクが生じます。

2.賃貸マンションの場合

(1)他の部屋の区分所有者あるいは占有者に対して

マンション管理組合の管理規約あるいは使用細則などで、

①「占有者は、対象物件の使用方法につき、区分所有者がこの規約に基づいて負う義務と同一の義務を負う。」

②「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項を第三者に遵守させなければならない。」

と定めてあることが一般的です。

賃貸に出しているマンションの入居者(占有者)が、騒音を出すなどして近隣に迷惑をかけるような行為があれば、入居者は①のルールに違反していることになります。

そして、迷惑行為をしている入居者に対して、迷惑行為をやめさせて管理規約や使用細則を守らせない場合には、区分所有者(賃貸人)は②のルールに違反していることになります。

その結果、他の部屋の入居者が退去してしまった、近隣の入居者が睡眠障害になってしまったといった損害が出てしまうと、他の部屋の区分所有者あるいは入居者(占有者)から、

損害賠償請求をされる

というリスクを負います。

 

(2)マンション管理組合に対して

入居者の迷惑行為を放置したままにしていたことで、マンション全体に関する何らかの損害が生じた場合には、マンション管理組合からは、

「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項を第三者に遵守させなければならない。」

というルールに違反したことに基づき、

損害賠償請求をされる

というリスクを負います。

 

なお、入居者(占有者)に対しては、管理組合集会で決議をとった上で、

迷惑行為の停止、結果の除去、迷惑行為を予防するための必要措置を求める訴え

あるいは

賃貸借契約の解除、専有部分の引き渡しを求める訴え

を起こされる可能性があります。

※入居者(占有者)に対する管理組合の対応についてはこちらを参考にして下さい。

 

次回は、シェアハウスの活用と契約上の注意点について取り上げたいと思います。

いつもありがとうございます。

マンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について

前回は、マンション管理費の滞納が始まったら?ということについて取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/335

今回は、マンションの一室の入居者(区分所有者または賃借人)が、他の区分所有者の生活に迷惑をかけるようなことをしている場合にどのようなことをすることができるか?について取り上げたいと思います。

対応方法としては、

1.迷惑行為の停止、結果の除去、迷惑行為を予防するための必要措置を求める訴え

2.入居者の専有部分の使用禁止請求を求める訴え

3.当該区分建物の競売、賃貸借契約の解除、専有部分の引き渡しを求める訴え

(解説)

1.迷惑行為停止請求、結果除去請求、予防措置請求について

これらの請求は、マンションの入居者が、建物の保存に有害な行為、共同の利益に反する行為をしたり、または、そのような行為をするおそれがある場合において、管理組合の集会の決議により行うことができます。

2.専有部分の使用禁止請求について

この請求は、入居者の共同生活上の障害が著しく、上記1の停止請求等では、その障害を除去して共用部分の利用の確保そのための区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合において、管理組合の集会の4分の3以上の賛成により決議された場合に行うことができます。

3.区分建物の競売請求、賃貸借契約の解除及び占有部分の引き渡し請求について

この請求は、入居者の共同生活上の障害が著しく、上記1の停止請求等のみならず、他の方法をもってしても、その障害を除去して共用部分の利用の確保そのための区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合において、管理組合の集会の4分の3以上の賛成により決議された場合に行うことができます。

4.共同の利益に反する行為とは?

マンションは、専有部分と共用部分に区別されます。専有部分は入居者が自由に利用することができますが、建物管理上(1つの建物に何世帯もの入居者が生活していることなど)の理由から一定の制約があります。

共用部分は、区分所有者全員が共同して利用する部分ですので、一部の区分所有者の自由な利用は認められません。各部屋のバルコニー部分については専用使用権が認められているものの、例えば、緊急避難路としての共用性もあるため、同部分は共用部分となります。

そのため、

① 他の区分所有者の専有部分の利用を妨害する行為(例えば、壁を破壊したりして、自己の専有部分を広げたりする行為)

② 共用部分の独占利用(例えば、共用部分に物置を設置して、避難路を塞ぐといった行為)

③ 他の区分所有者が不安感・恐怖感を覚えるような行為(例えば、管理組合規約で禁止されているような、反社会的勢力の関係者との間の賃貸借契約を締結するなど)

④ その他、一般の相隣関係問題(騒音、振動、ペット飼育禁止特約の違反行為など)

などが、共同の利益に反する行為ということができます。

マンションは、他の区分所有者との共同生活との関係を無視して利用することはできないので、お互いに譲歩し合って快適な住環境に努めることが必要になってきますので、このようなことを発見したら、問題が大事になる前に、管理組合を通じて対処するようにしていった方がよいかと思います。

 

Q:区分所有者がマンションの管理費を長期間滞納している場合に、専有部分の使用禁止や区分所有建物の競売を行うことはできますか?

A:管理費の長期間の滞納は、「共同の利益に反する行為」であり、かつ、「その障害の程度が著しいもの」ということができますが、「他の方法によっては障害を除去することができないこと」という条件を満たすために、他の債権回収の方法でも回収が困難であることを証明しない限り使用禁止請求や、競売請求はできないことが予想されます。

 

次回は、借地契約において地代を滞納された場合について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/348

 

いつもありがとうございます。

マンション管理費の滞納が始まったら

前回は、連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求できる?ということについて取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/330

大家さんの中には、マンションの管理組合の理事長をなされている方もいらっしゃいます。そういった方からマンション管理費の滞納問題についての問い合わせがされることがありますので、マンション管理費について一度ご説明させていただきたいと思います。

1.マンション管理費の種類について

一般的にマンションの管理にかかる費用としては次の4種類が主な費用です。

①管理費(共用部分、共用施設及び施設等の維持管理のための費用)

②修繕積立金(大修繕、環境・機能の増進のための積み立て。管理組合の集会で決定)

③立て替えた専有部分の水道料金、光熱費(管理組合が立て替えて支払う旨の規約がある場合)

④駐車場代(駐車場代を徴収する規約がある場合)

 

2.管理費等を滞納した場合の対応

1で挙げた管理費等は、先取特権(法定担保物権・一般の債権より優先して弁済を受けられる権利)を有していますから、区分所有建物の所有者がその建物を賃貸し、賃借人から賃料を受け取っているような場合は、訴訟手続をすることなく、その賃料について差押手続をすることができます。

区分所有建物を賃貸に出しているわけではなく、区分所有者が居住して利用している場合には、区分所有者に対して、内容証明郵便等で催告をして、それでも応じなければ、訴訟や支払督促等の法的手段をとっていくことになります。この点は、賃貸借契約における滞納家賃を入居者や連帯保証人に請求する場合と同様です。

そして、その手続の中でなされた判決、和解、支払督促等を債務名義として、区分所有者の財産について強制執行手続を進めることになります。

 

3.マンション管理費の時効は何年?

民法169条の定期給付債権となり、毎月の支払期から5年で時効になります。

滞納家賃と同様にマンション管理費についても、各月ごとに起算点が異なりますので、時効期間満了日は別々になります。

また、マンション管理費の時効を中断することについても、滞納賃料の時効の中断の場合と同様です。

(参考)滞納賃料の時効について→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/247

 

次回は、マンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/340

 

いつもありがとうございます。