前回はマンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について取り上げさせていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/340
今回は、賃貸人が土地を賃借し、賃借人がその借地上に建物を建てている場合に、地代の滞納があって借地の賃貸借契約を解除して、建物を収去し土地を明け渡しを求める場合(建物収去土地明け渡し請求)について取り上げさせていただきたいと思います。
(事案)
賃貸人Aは賃借人Bに対し、賃借人Bの建物所有を目的として、賃貸期間を30年、地代を月額5万円として賃貸借契約を締結した。
その後、賃借人Bは、借地上に住宅用建物を建築し、その建物をCに賃借した。
賃貸借契約から約2年後、賃借人Bの賃貸人Aに対する地代の支払いが滞るようになり、滞納額は1年分以上となった。
そのため、賃貸人Aは賃借人Bとの賃貸借契約を解除して、土地を明け渡してもらいたいと考えている。
このような場合、賃貸人Aは誰にどのような手続をしたらよいか?
(解説)
基本的には、賃料不払いによる建物明け渡しの例に準じて手続を行います。
(参考)賃料不払いによる建物明け渡しについて
→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/137
ただし、建物収去土地明け渡し請求の場合は、次の点に注意が必要です。
1.訴状の請求の趣旨
「別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」とするのではなく、「別紙物件目録記載の建物を収去して、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」と記載することになります。
このようにするのは、土地明け渡しを命ずる判決では、建物の収去執行をすることができないためです。
2.被告について
今回の事案の場合、被告はBとCになります。
そして、賃借人Bには建物収去土地明け渡し請求を行い、建物賃借人Cには建物退去土地明け渡し請求になります。
そして、賃貸人Aと建物賃借人Cとの間では、契約関係はないので、建物賃借人Cに対しては、賃借人Bの場合と異なり、賃貸借契約の解除による賃貸借契約の終了を理由とするのではなく、賃貸人Aがその土地の所有者であり、建物賃借人Cが何ら権原なくその土地を占有していることを理由に建物退去土地明け渡し請求を行っていきます。
3.建物賃貸借の終了時期について
賃借人Bとの間で敷地についての賃貸借契約が解除されたからといって、直ちにBC間の建物賃貸借が終了するわけではありません。賃貸人Aと賃借人Bとの間で土地の明け渡し義務が確定されるなど、建物の使用収益が現実に妨げられる事情が客観的に明らかになり、又は建物賃借人Cの現実の明け渡しが余儀なくされたときにBC間の建物賃貸借契約は履行不能により終了することになります。
Q:土地の賃貸借契約が終了した場合に、建物賃借人Cに対して賃料相当損害金の請求をすることができますか?
A:必ず請求できるとは限りません。
建物賃借人Cに賃料相当損害金を請求するには、賃貸人Aにとって、建物賃借人Cが土地上に占有を続けるため、その土地を使用収益できないという事情が必要です。例えば、賃貸人Aが建物収去土地明け渡しをしようとしているにも関わらず、建物賃借人Cが故意に退去しないなどの事情です。
また、建物賃借人Cには土地全体の地代ではなく、建物敷地部分の土地の地代を請求することになります。
次回は無断増改築された物置は誰の物?について取り上げさせていただきたいと思います。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/354
いつもありがとうございます。