前回は後継ぎ遺贈と受益者連続型信託についてご説明させていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/minnjishintaku/306
今回は、借り主が行方不明になった場合の今後の対応について取り上げたいと思います。
家賃の滞納が続いているため、入居者に連絡してもつながらず、どういう状況になっているのか確認するために入居者の借りている物件に行ったところ、郵便物が溜まっていたり、住んでいる様子がないということの相談をよく受けます。
このような場合、まず、連帯保証人や入居者の家族に連絡し、入居者と連絡をとってもらって入居者と連絡がつくようであれば、今後の賃貸借契約を終了させる方向での話し合いをします。
連帯保証人や家族の方を通じても入居者と連絡がつかないような場合には、裁判を起こし、訴訟手続の中で賃貸借契約を解除して、強制執行手続により建物を明け渡すように進めることになります。
(解説)
1.連帯保証人や家族に連絡して、入居者に連絡を取ってもらうことについて
入居者が建物に住んでいる様子がないといっても、長期間の旅行に行っていたり、あるいは何らかの事故に巻き込まれたなどの事情で家を空けていることもあります。そのため、まず、入居者と関係のある方に連絡をとって、入居者の現状について確認することになります。
連帯保証人には、滞納賃料を請求することができますが、連帯保証人ではないご家族の方には滞納賃料の請求はできないので対応には十分気をつけてください。
入居者と連絡がつくようでしたら、事情を確認して滞納賃料の支払いや今後の賃貸借契約を継続するのか、それとも終了して明け渡す方向で進めるのかについて話し合いをします。
2.連帯保証人等を通じても入居者と連絡が取れない場合
賃料不払いにより信頼関係が破壊されたとして、建物明け渡し請求の訴訟手続をします。
事前に滞納賃料支払いの催告や契約解除についての意思表示を内容証明郵便によってすることができないので、訴状の中に「訴状の送達をもって解除する。」という記載が必要になります。
そして、訴状の提出にあわせて、公示送達の申し立てをする必要があります。
公示送達とは、当事者の住所、居所その他送達をすべき場所がしれない場合に、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、裁判所の掲示板にそれらの書類を交付すべき旨を記載した書面を掲示して2週間を経過すると、それらの書類が送達されたとする制度です。
公示送達の申し立てをする場合には、入居者が住所地等に住んでいないことを証明するために、添付資料として入居者の所在調査報告書や入居者の住民票が必要になります。
そして、訴訟手続を終えて勝訴判決がでた場合は、その判決に基づき強制執行手続をして建物明け渡しを進めることになります。
Q:入居者が行方不明の場合、状況確認のために室内に入ってもよいですか?
A:入ってはいけません。このようなことをしてしまうと後々損害賠償請求を受ける可能性もあります。
また、賃貸借契約の特約として「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに本件建物内に立ち入り適当な処置を取ることができる」といった条項を設けていたとしても、裁判例によるとそのような条項は公序良俗に反し無効としているものもありますので(東京地判平成18年5月30日)、その特約があることを根拠として入室することは避けた方がよいでしょう。
次回は、滞納家賃は契約者の配偶者にも請求できるのか?について取り上げたいと思います。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/315
いつもありがとうございます。