滞納家賃は契約者の配偶者に請求できるのか?

前回は、借り主が行方不明になった場合の対応方法について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/310

今回は、滞納家賃を契約者(入居者)の配偶者に請求できるのか?ということについてご説明させていただきます。

(事例)

入居者が、家族(妻及び子)と住むためにアパートの一室を賃借しました。入居者はごく普通の会社員であり、連帯保証人は入居者の父親です。

入居者は入居後3年を過ぎた頃から体調を崩して入院し、4か月前から家賃を滞納するようになりました。連帯保証人である入居者の父親も年金生活で滞納家賃をまとめて払えるような資力はほとんどありません。

一方、入居者の妻は仕事をしており収入がある状況です。

入居者の妻に対して、「入居者に滞納家賃を払ってほしいと伝えてほしい。」と伝えても、「私は契約者では無いのでよく分らない。夫には滞納家賃を払うよう催促があったことを伝えるけど、入院中なので今は払えないと思いますよ。退院したらこちらから連絡するように話しておきます。」と回答されてしまいました。

(結論)

家賃債務が、その夫婦の日常家事債務の範囲内に属する債務ということができれば、その債務は連帯債務となり、連帯保証人ではない契約者(入居者)の配偶者にも請求することができる可能性があります。

(解説)

1.夫婦の日常家事債務が連帯債務になるとは?

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負います(民法761条)。

これは、日常の家事取引は、実質的には夫婦共同生活体のためにされると考えられるのが通常であり、第三者である債権者を保護するために設けられた規定です。

2.どのような行為が、日常の家事に関する法律行為といえるのか?

日常の家事に関する法律行為とは、一般的には、夫婦が共同生活を営む上において通常必要とされる行為を指しますが、具体的には、夫婦の社会的地位・職業・資産・収入などの夫婦間の内部的事情によって異なるので、その夫婦ごとによって個別的に決められます。

さらに、そのような内部的事情のほかにも、客観的な行為の種類や性質も考慮する必要があります。例えば、多額の借金をしたり、不動産を売買することなどは一般的には日常の家事に関する法律行為ということはできないとされています。

本件事例の場合は、賃貸借契約という法律行為をしたのは入居者ではありますが、家族が同居するために賃借していることや、一般的な経済状態である夫婦であることから、賃料債務が日常家事債務の範囲内に属すると認められる可能性がありますので、認められる場合には入居者の妻にも連帯債務として請求することができます。

 

次回は近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応についてご説明させていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/320

 

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