保証会社との間の契約条項はよく読みましょう。

前回は、借家の立ち退き料の相場についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/537

賃貸借契約を締結する際、賃借人が親族などの連帯保証人をつけられない場合に、賃借人の委託により家賃債務保証会社に保証人になってもらうことがあります。

契約関係を整理すると、賃貸人と保証会社の関係は保証契約となり、入居者と保証会社の関係は保証委託契約となります。

これらの契約により、保証会社は、賃借人が家賃を滞納した場合、賃借人に代わって賃貸人に滞納家賃を支払い、賃借人に立て替えた家賃分を求償することになります。

そして、保証会社と賃借人の間の保証委託契約書の契約条項について、

「賃借人が家賃を滞納した場合には、賃借人は保証会社が賃貸家屋内に立ち入り、適当な処置をすることができることを事前に承諾する。」

といった内容の条項がある場合には要注意です!

1.賃借家屋への立ち入り及びその使用を排除する内容の事前承諾は有効か?

こういった内容の条項を自力救済条項と言います。

この自力救済条項を根拠に、賃借人が家賃を滞納した場合に、賃借人が外出中に建物内に侵入してドアの鍵を交換したり、建物の内側の扉に「○月○日までに未払賃料を支払わない場合には賃貸借契約を解除する。」旨を記載した書面を貼り付けるといった行為をしてしまうと非常に問題があります。

賃借人も合意の上でそのような内容の契約を締結しているから問題ないのでは?とも言えそうですが、裁判所の判例は、このような手段による権利の実現(建物明け渡し・家賃回収)は、法的手続によったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合を除くほかは、原則として許されないとしており、そのような自力救済条項を公序良俗に反するので無効としています。

2.自力救済条項による民事上・刑事上の責任

この問題は民事上無効というだけだけでなく、不法行為(プライバシー侵害・器物損壊)による損害賠償といった民事上の責任や、住居侵入・器物損壊という犯罪を構成する可能性もあり、その場合には刑事上の責任も追求されかねません。

実際に、賃貸人、管理会社、保証会社などの自力救済行為をした者に民事上の責任を認めている裁判例もありますので注意が必要です。

次回は賃貸経営におけるマイナンバーについて取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/552

 

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