連帯保証人に対する大家さんの対応

前回は、解約申し入れによる賃貸借契約の終了について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/152

今回は連帯保証人に対する大家さんの対応について取り上げていきます。

一般的に賃貸借契約を締結するときには、「連帯保証人は、借り主と連帯して、本契約から生じる借り主の債務を負担するものとする。」との条項が書いてあるかと思います。そして、その賃貸借契約書に大家さん、借り主、連帯保証人が署名押印することで賃貸借契約及び保証契約が成立します。

基本的に契約が成立した後に生じる賃料は借り主に請求をしますが、借り主がその賃料を支払わなかった場合、連帯保証人に請求することになります。

しかし、賃貸借契約の期間が満了し、契約が更新された場合には、連帯保証人に請求することができるのか?ということが問題になることがあります。

この記事では、どのタイミングで連帯保証人に請求すべきか?賃貸借契約更新後は連帯保証人との関係は維持されるのか?といった連帯保証人に対する大家さんの対応について説明させていただきます。

1.賃料滞納があった場合

借り主が賃料を滞納していることが発覚した場合、大家さんとしては次の流れで対応するのが良いでしょう。

(1)賃料滞納が発生してから1週間以内

電話などで借り主本人に繰り返し催促します。

(2)賃料滞納から1週間程度経過

連帯保証人に報告して、連帯保証人を通じて支払を催促します。

(3)賃料滞納から2週間程度経過

借り主に書面で催告したり、自宅に直接訪問して催告するようにします。

(4)賃料滞納から3週間経過した場合

連帯保証人に滞納家賃を請求します。

(5)賃料滞納から1か月経過した場合

借り主、連帯保証人に対して内容証明郵便を送付して請求します。

2.賃貸借契約更新後の連帯保証人について

賃貸借契約において定めた賃貸借期間が満了し、再度同じ条件で賃貸借契約を合意更新、あるいは法定更新した場合において、当初の原賃貸借契約における連帯保証人との関係について説明します。

合意更新の際に、改めて連帯保証人の意思確認をして、保証書などの書面を差し入れさせたり、連帯保証人の署名押印のある更新契約書を交わす場合には、その連帯保証人との関係は維持されるので特段問題はありません。

問題は、合意更新の際に連帯保証人の意思確認をしない場合法定更新の場合です。

(1)合意更新の際に連帯保証人の意思確認をしない場合

判例(最判平成9年11月13日)においては、「賃貸借の保証における当事者の通常の合理的意思からして、保証人が更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う。」として、合意更新後の滞納家賃について連帯保証人に支払義務があることを認めています。

(2)法定更新の場合

一般的に、賃貸借契約の期間が満了した後、賃貸人(大家さん)としては更新を拒絶することは難しいことから、連帯保証人としても賃貸借契約が継続することは予期すべき事であり、当初の契約において、「更新後の責任は負わない。」などの取り決めがない限り、連帯保証人は法定更新後の滞納家賃についても責任を負います(大判昭和8年4月6日)。

以上のことから、原則としては、連帯保証人は更新後の滞納家賃についても支払義務を負います。もっとも、借り主が家賃を滞納させている状態で契約を更新し、そのことを連帯保証人に伝えていなかったような場合は、連帯保証人に対する請求が信義則に反して許されないとされる場合もあるようです。

 

Q:連帯保証人に滞納家賃を請求したところ、「借り主にまず請求してください。」と言われましたが、借り主に請求してからでないと、連帯保証人に対して請求できないのでしょうか?

A:請求できます。

単なる保証契約であれば、保証人としては「借り主に請求してください(「催告の抗弁権」といいます。)」とか、「借り主は価値ある財産を持っているから、それを差し押さえて処分して、その代金を滞納家賃に充ててください(「検索の抗弁権」といいます。)」などと反論することができます。

しかし、連帯保証であるなら、そういった反論をすることはできないので、すぐに連帯保証人に請求することは可能です。

 

次回は、連帯保証人に対する請求の範囲について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/228

いつもありがとうございます。