前回は、競売手続における引き渡し命令の申立について取り上げさせていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/475
今回は、前回の記事の中で触れた、引き渡し命令の申立の相手方となる不動産の占有者について取り上げたいと思います。
1.引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者とは
競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者
になります。
不法占有者がこれに該当することはもちろんですが、占有権原を有している占有者の場合は、抵当権者、差押債権者等に対抗することができかを考える必要がありますので更に細かく説明します。
2.抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原とは
競売物件には抵当権等の担保権が設定されていることが多いです。また、一般の債権者や国から、債権回収のためあるいは公租公課の徴収のために、差押あるいは仮差押がなされていることも少なくありません。
それらの担保権や差押・仮差押の効力は、その担保権設定時・差押の効力発生時における不動産の担保価値を把握するものですので、その時点で、占有者が存在する物件ならば占有者が存在する物件として、占有者が存在しない物件であれば占有者の存在しない物件として担保価値を把握しています。
そして、一般的には占有者の存在しない物件の方が、借地権割合を考慮しないので担保価値が高い物件となります。
そのため、占有者の存在しない物件に担保権を設定あるいは差押等をした後に、占有者が存在することになったとしても、担保権者等は占有者に対して、その担保権あるいは差押の効力が、その占有者の占有権原(地上権・賃借権等)に優先することを主張できることになります。
この場合の占有者は、引き渡し命令の申立の相手方となる「競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者」に該当します。
逆に、占有者の存在する物件に担保権を設定あるいは差押をした場合には、担保権者等は占有者が存在することを認識して担保価値を把握しているのだから、その占有者の占有権原は担保権あるいは差押の効力に優先します。この担保権・差押の効力に優先する占有権原のことを、対抗することができる占有権原といいます。
3.対抗することができる占有権原かどうかを見分ける方法
(1)占有権原が賃借権(登記なし)の場合
①建物所有の借地の場合は、建物への保存登記と土地への抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。
②借家の場合は、建物の引き渡しのあったときと建物への抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。
(2)占有権原が地上権・賃借権(登記あり)の場合
地上権(賃借権)設定登記と抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。
次回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げたいと思います。
その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/489
いつもありがとうございます。