前回は、放置自動車に所有権留保が設定されていた場合について取り上げました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/458
今回は、建物明け渡しの強制執行手続において、賃借人が所有する動産のうち賃借人に引き渡すことができない目的外動産の売却手続について取り上げます。
1.目的外動産の引き渡しと売却
建物明け渡しの強制執行手続において、建物内に賃借人の動産が残置されている場合に、その動産の処理をどうするかについては、建物明け渡しの強制執行についての記事で取り上げました(その記事の下部のQ&Aをご覧ください。)。
賃借人が残置した動産は原則賃借人に引き渡しますが、引き渡すことができなかった動産は売却されることになります。この動産には、差押禁止債権となっている動産(衣服、寝具、台所用品、畳、建具、66万円までの現金、タンス、洗濯機、冷蔵庫、 電子レンジ、ラジオ、テレビ(通常のサイズのもの)、掃除機、エアコンなどの動産)も含まれます(神戸地判平成6・10・18)。
2.引き渡すことができない目的外動産の売却手続の種類
① 執行官が明け渡し催告の際に目的外動産を確認し、明け渡しの断行期日に売却することを公告した上で明け渡しの断行期日に売却
この方法は、明け渡しの催告時において、明け渡しの断行期日に売却することが適していると認められた場合に用いられる方法です。明け渡し催告の時点で賃借人の目的外動産の数が限られている場合に用いられます。
② 執行官が明け渡しの断行期日に、公告なく即日売却
この方法は、目的外動産を断行期日以降にも保管しておく必要性が乏しく、買い受け希望者が断行実施場所に同席しているような場合に用いられます。ただし、高額な動産は行うことはできません。
例えば、賃借人が断行期日までにほとんどの目的外動産を搬出して任意退去し、ある程度の目的外動産を残置し、その後も引き取りに来る見込みのないような場合に用いられることがあります。
③ 執行官が目的外動産を保管し、明け渡しの断行期日から1週間未満の日を売却期日と指定して売却
上記②と同じ場面で用いられます。
④ 動産執行の例による売却
上記①~③の方法で行うことができない場合には、動産執行と同様の方法により売却されます。
具体的には、次の順で手続が行われます。
・目的外動産の保管(賃借人が居住していた建物内で保管することが多いです。)
・保管の日から1週間以上1ヶ月未満の日に売却期日が指定される。
・売却期日において、一般的には競り売りの方法で売却されます
この方法は、例えば、明け渡し期日において確認できた目的外動産が明け渡しの断行期日においてもほとんど残っていたような場合は、この方法によることが多いです。
次回は、競売手続における引き渡し命令の申立についてに取り上げたいと思います。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/475
いつもありがとうございます。