承諾のある転貸借契約における転借人に対する建物明け渡し請求

前回は、賃貸借契約が解除されると承諾のある転貸借契約はどうなるか?ということについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/375

今回は、承諾のある転貸借契約における転借人に対する建物明け渡し請求についてご説明させていただきます。

1.転借人に対する建物明け渡し請求の可否

前回、ご説明させていただきましたとおり、賃貸人による承諾がある転貸借契約が成立した場合に、賃貸人と賃借人の間の賃貸借契約が賃借人の賃料不払等の債務不履行を理由に法定解除されると、転借人は、転借権をもって賃貸人に対抗することができなくなります(転借権の基礎となる賃借権が消滅するため。)。

そのため、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借契約の解除に基づき、転借人に対しても建物明け渡し請求をすることができます。

そして、判例においては、この転借人に対して目的物の返還請求(建物明け渡し請求をした時)をもって、賃借人(転貸人)と転借人の間の転貸借契約は履行不能により終了するとされており、以後、賃借人(転貸人)は転借人に対し、転借料を請求することはできなくなります。

2.賃貸人による転借人に対する転借料請求の可否

一般的には、賃貸人は賃借人(転貸人)に賃料請求をして、賃借人(転貸人)は転借人に転借料請求をしますが、承諾のある転貸借契約をした場合には、転借人は賃貸人に対して直接義務を負うことになりますので(民法613条1項)、賃貸人は転借人に対して転借料を請求することもできます

この賃貸人の転借人に対する転借料請求の額は、

賃貸人が賃借人(転貸人)に対して請求することができる額(賃借料)と、賃借人(転貸人)が転借人に対して請求することができる額(転借料)の両方の範囲内になります

転借人がこの転借料請求に応じて、転借料を直接賃貸人に支払うことで、その額の範囲内で賃借人(転貸人)に対する賃料支払義務を免れます。つまり、事実上、その範囲で転借人が賃借人(転貸人)に代わって原賃貸借契約の賃料を支払っていることになります。

このことは結果的に、賃借人(転貸人)の債務不履行を防ぐことにつながるのですが、前回もお伝えしたとおり、賃貸人には転借人に対して転借料を請求する権利はあっても、請求しなければならないという義務はないので、請求しないことで告知せず賃借人との間の賃貸借契約を債務不履行に陥らせて解除させ、間接的に転借権を消滅させることも可能と考えられます。

 

次回は支払督促による滞納家賃の回収について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/398

 

いつもありがとうございます。