前回は承諾のある転貸借契約における転借人に対する建物明け渡し請求について取り上げました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/382
これまで家賃滞納があった場合の回収方法については、基本的に訴訟を起こした場合を例にして取り上げてきましたが、今回は支払督促手続による回収方法について取り上げたいと思います。
1.支払督促とは
支払督促とは、金銭等請求について、債権者に簡易迅速に債務名義を取得する手続です。
債務名義とは、強制執行をするために必要な公文書です。
2.支払督促のメリット
① 書面審査であること
訴訟手続とは異なり、書面審査だけなので裁判所に足を運ぶ必要がありません。そして、最初の審査の段階では、相手の言い分を聞かず発せられます。
② 簡易迅速に債務名義が作成されること
申立書に不備がなければ、迅速に督促が発せられ、債務者に送達されます。
送達されてから2週間以内に異議がなくその期間経過後30日以内に、仮執行宣言申し立てをします。
仮執行宣言付き支払督促が発せられ、債務者に送達されて更に2週間が経過すれば、確定した債務名義とすることができます。
申し立てから最短で1か月ちょっとで債務名義を作成することができます。
③ 手続費用が安いこと
手数料等が訴訟の場合の半額になります。
④ 時効の中断
訴訟と同様に、申し立てをした時点で時効が中断します。
3.注意点
以上のとおり説明した、支払督促手続ですが、注意しておかなければならない点がありますのでご説明します。
① 支払督促手続は金銭の支払いを目的とした手続であるので、滞納家賃請求はできても建物明け渡し請求はできません。
② 支払督促手続は、債務者の言い分を聞かず発せられる手続であるので、支払督促正本が送達されると、同封されている異議申立書の提出により、支払督促手続は訴訟手続に切り替わってしまいます。
その場合、訴訟分の手数料が必要になってしまいますので、支払督促申し立て当時に納めた手数料分を控除した残額について追納する必要があります。また、その追納があって約1か月後に訴訟の期日が決まるので、場合によっては、はじめから訴訟手続をしていた方が早く終わっていたというケースも少なくありません。
異議が出て、訴訟に切り替わったときには、和解の場で滞納家賃の事のみならず、建物明け渡しについての話し合いも可能です。
次回は、調停手続による滞納家賃の回収について取り上げさせていただきます。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/405
いつもありがとうございます。