作成者別アーカイブ: katagiri

民法改正による敷金と原状回復請求の明文化について

前回は、賃貸物件の現況調査について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/495

現在、平成27年3月31日に閣議決定されました民法改正案について審議がされています。

今回は、その民法改正案の中で敷金と原状回復請求について明文の規定を置く改正が検討されていますので、そのことについて取り上げてみたいと思います。

1.敷金について

現在の法律では、敷金という文言を用いた規定はありますが、その要件、性質、権利義務については具体的に定めていません。そのため、敷金に関する事項については判例においてルールが定められてきました。

例えば、

①敷金の定義

敷金は、借家人の賃料など賃貸借の債務を担保するために貸主に交付される金銭であること

②敷金の充当関係

滞納家賃など賃貸借契約終了前に賃借人について債務が生じた場合に、その預かっている敷金をもって充当することができること

そして、その充当を賃借人側から請求できないこと

③敷金返還請求権の具体的発生時期

敷金返還請求は、賃貸借終了後、目的物の明渡時において、それまでに生じた延滞賃料や損害賠償額等、一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであること

④オーナーチェンジがあった場合の敷金返還請求の相手方について

オーナーチェンジがあった場合の敷金関係は、旧賃貸人から新賃貸人に移転することから、新賃貸人に対して敷金返還請求をすること

などです。

これらの事項については、以前まとめた記事がありますので参考にしてみてください。

(参考記事)

敷金の定義、充当関係、敷金返還請求権の具体的発生時期について

オーナーチェンジがあった場合の敷金関係について

2.原状回復請求について

原状回復請求についても敷金と同様に判例において、通常損耗は賃貸人負担、通常使用を超える損耗については賃借人負担とルールが定められてきましたが、この点も民法改正により明文化されることが検討されています。

原状回復に関する参考記事→原状回復費用について

民法改正によって、敷金あるいは原状回復請求をめぐるトラブルが少なくなることを期待するばかりです。

 

次回は、建物買取請求権について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/511

いつもありがとうございます。

賃貸物件の現況調査について

前回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/489

今回は、建物明け渡し請求を行う際の賃貸物件の現況調査について取り上げたいと思います。

家賃滞納など様々な理由から建物明け渡し請求を行うかどうか検討する場合に、まず賃借人に内容証明郵便で催告書を送り、未払賃料を催告して賃貸借契約を解除することが多いと思いますが、それと同じくらいに重要なことが賃貸物件の現況調査になります。

1.賃貸物件の現況調査とは

賃貸物件の現況調査とは、現地に行って建物の利用状態を調査・確認することです。

2.現況調査が必要な理由

建物明け渡し請求の前提として、未払賃料の催告や賃貸借契約の解除をするため、賃借人に対し、催告書を内容証明郵便で送り、それに対する応答がないため訴訟を起こし判決を取得したとしても、その建物に賃借人以外の者が居住していると、その賃借人以外の者に対して強制執行を行うことができない場合があります。また、はじめから賃借人が建物に居住しておらず、不法占有者や無断転貸の転借人などが賃借人になりすまして書類を受け取っている場合もあります。

そのような場合、その賃借人以外の占有者を相手に訴訟を行うことから始めないといけなくなり、手続が二度手間になり、明け渡し手続を完了させるための時間と費用がかかってしまいます。

そのため、まず、賃貸物件の現況調査をして、現在の賃貸物件の占有状態を確認する必要があります。

3.現況調査において行ってはいけないこと

現況調査を行う場合は、外観から判断できることしかできませんので次のようなことは行ってはいけません。

(1)無断で家の中に入って確認すること

(2)勝手にポストを空けて中を確認すること

(3)玄関入り口の共用部分に置かれている占有者の動産の処分

など

このようなことをしてしまうと住居侵入・器物損壊といった刑事上の責任を負うことになることのほか、民事上においても損害賠償請求をされる可能性があります。

また、賃貸人に限らず、そのような行為を管理会社の方が行った場合には、その管理会社は法律違反行為をする会社と知らしめられ社会的評価を下げる結果につながります。

どのように現況調査をしたらよいかは、事案によりきりですので、一度専門家に相談した方がよいでしょう。

4.賃借人以外の者が占有していることが判明した場合の対応

現況調査の結果、賃借人以外の全くの他人や、賃借人が代表を務める会社などが占有していることが判明した場合は、その占有者との接触は避けてください。その様な者を建物明け渡し請求の相手方とすべきか、占有移転禁止の仮処分の申立が必要かどうかなどを検討することが必要になるので、一度、専門家に相談した方がよいでしょう。

 

次回は、民法改正による敷金と原状回復請求の明文化について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/504

いつもありがとうございます。

一時使用のための賃貸借契約とは

前回は、引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/484

今回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げたいと思います。

建物を所有する目的で土地の賃貸借契約をする場合には、その期間は最低30年以上必要です。

そのような場合であったとしても一時使用のためであればその期間制限はありませんので、30年を経過していなくとも、賃貸借契約で定めた一時使用期間が満了すれば終了します。

このように、賃貸借契約が一時使用の場合には早期に賃貸借契約を終了させることができます。

それでは、以下解説します。

(解説)

1.一時使用のための賃貸借契約とするためには

一時使用のための賃貸借契約とするためには次の要件を満たしている必要があります。

① 賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約を短期間に限って存続させる旨合意したこと

② 一時使用のためのものであることを基礎づける事実

一時使用のための賃貸借契約といえるためには、当事者間の合意、期間の長短だけではなく、契約に向けた動機、賃貸物件の利用目的、賃貸物件が土地である場合にその地上に建てられている建物の種類、設備、構造など諸般の事情が判断材料となります

具体例としては、天変地異・火災等の後に応急的に仮設建物を建てる目的で設定された借地権などが挙げられます。

そのため、一時使用となるためには賃貸期間が1年未満でなければならないということはないし、判例においても賃貸期間が3年であっても一時使用と認めている例もあります。

2.建物賃貸借契約における一時使用

以前、普通借家契約において、賃貸借契約を期間満了で終了させ明け渡しを求める場合と、法定更新されて期間の定めのない賃貸借契約となったため解約の申し入れをして終了させ明け渡しを求める場合について取り上げたことがありました。

いずれの場合も、更新拒絶ないし解約の申し入れには、賃貸人の正当事由、立ち退き料の提供などが必要になりますが、一時使用目的のための建物賃貸借契約であれば、そのような事情が不要となります。

一時使用とする賃貸借契約を締結するのであれば、土地の賃貸借契約であっても、建物の賃貸借契約であっても、賃貸人と賃借人の間で契約前に一時使用であることにより、以上のような効果が生じることを認識し、契約書とは別の覚え書き等で明確にして、後日トラブルにならないようにすると良いでしょう。

 

次回は、賃貸物件の現況調査について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/495

いつもありがとうございます。

引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者とは

前回は、競売手続における引き渡し命令の申立について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/475

今回は、前回の記事の中で触れた、引き渡し命令の申立の相手方となる不動産の占有者について取り上げたいと思います。

1.引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者とは

競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者

になります。

不法占有者がこれに該当することはもちろんですが、占有権原を有している占有者の場合は、抵当権者、差押債権者等に対抗することができかを考える必要がありますので更に細かく説明します。

2.抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原とは

競売物件には抵当権等の担保権が設定されていることが多いです。また、一般の債権者や国から、債権回収のためあるいは公租公課の徴収のために、差押あるいは仮差押がなされていることも少なくありません。

それらの担保権や差押・仮差押の効力は、その担保権設定時・差押の効力発生時における不動産の担保価値を把握するものですので、その時点で、占有者が存在する物件ならば占有者が存在する物件として、占有者が存在しない物件であれば占有者の存在しない物件として担保価値を把握しています。

そして、一般的には占有者の存在しない物件の方が、借地権割合を考慮しないので担保価値が高い物件となります。

そのため、占有者の存在しない物件に担保権を設定あるいは差押等をした後に、占有者が存在することになったとしても、担保権者等は占有者に対して、その担保権あるいは差押の効力が、その占有者の占有権原(地上権・賃借権等)に優先することを主張できることになります。

この場合の占有者は、引き渡し命令の申立の相手方となる競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者」に該当します。

逆に、占有者の存在する物件に担保権を設定あるいは差押をした場合には、担保権者等は占有者が存在することを認識して担保価値を把握しているのだから、その占有者の占有権原は担保権あるいは差押の効力に優先します。この担保権・差押の効力に優先する占有権原のことを、対抗することができる占有権原といいます。

3.対抗することができる占有権原かどうかを見分ける方法

(1)占有権原が賃借権(登記なし)の場合

①建物所有の借地の場合は、建物への保存登記と土地への抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。

②借家の場合は、建物の引き渡しのあったときと建物への抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。

(2)占有権原が地上権・賃借権(登記あり)の場合

地上権(賃借権)設定登記と抵当権設定登記あるいは差押(仮差押)登記の先後によって優劣を決します。

 

次回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/489

 

いつもありがとうございます。

競売手続における引き渡し命令の申立について

前回は、強制執行における目的外動産の売却について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/464

今回は、競売で取得した不動産の占有者に対する引き渡し命令の申立について取り上げさせていただきます。

1.引き渡し命令の申立とは

不動産競売手続において売却許可決定が確定し、代金を納付することによって、買受人は競売物件の所有権を取得します。

一方で、競売物件を占有している債務者(元所有者)は占有権原(所有権)を失いますので、買受人は、債務者(元所有者)に対し、所有権に基づく引き渡し請求権を有することになります。

また、抵当権者、差押債権者等に対抗することのできない用益権(地上権、賃借権等)は、売却により消滅するため、消滅する用益権を根拠に占有していた者は占有権原を失い、買受人は、債務者(元所有者)に対し、所有権に基づく引き渡し請求権を有することになります。

これらの占有者が任意に不動産の引き渡しをしない場合、本来であれば、建物明け渡し請求などの訴えを提起して判決等(債務名義)を取得し、強制執行手続を行うべきでありますが、それに要する時間、費用を考えると、買受希望者を広く募ることが困難になってしまうため、競売手続の中で簡易迅速に明け渡しの債務名義を取得することができるよう、引き渡し命令の申立を行うことができます。

2.引き渡し命令の申立時期について

買受人が代金を納付してから6か月以内に申し立てる必要があります。

ただし、順位番号の一番古い抵当権設定時期よりは遅れるものの、競売手続開始前に建物賃貸借契約を締結して居住していた入居者に対して、引き渡し命令を申し立てる場合は代金を納付してから9か月以内に申し立てる必要があります(賃借人は、代金納付から6か月以内は引き渡しをしなくてもよいため、申立期間が長くなります。)。

3.申立人について

代金を納付した買受人又はその相続人等が申立人になります。

買受人から転売等で譲り受けた者は申立を行うことができませんが、そのような場合でも、買受人は申立権を失うことはありません。

なお、買受人が目的不動産の占有を取得したり、占有者に対して占有権原を付与した場合は、以後、申立権を失いますので注意が必要です。

4.相手方について

 (1)債務者(所有者)

債務者(所有者)は、実際にその競売物件を占有していなくても、引き渡し命令を発することができます。

破産手続中で破産管財人が選任されているようであれば、破産管財人が相手方となります。

(2)不動産の占有者

競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者は相手方となります。

抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原を有していると認められるか否かについては、あらためて詳しく取り上げたいと思います。

次回は、引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/484

 

いつもありがとうございます。

強制執行における目的外動産の売却について

前回は、放置自動車に所有権留保が設定されていた場合について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/458

今回は、建物明け渡しの強制執行手続において、賃借人が所有する動産のうち賃借人に引き渡すことができない目的外動産の売却手続について取り上げます。

1.目的外動産の引き渡しと売却

建物明け渡しの強制執行手続において、建物内に賃借人の動産が残置されている場合に、その動産の処理をどうするかについては、建物明け渡しの強制執行についての記事で取り上げました(その記事の下部のQ&Aをご覧ください。)。

賃借人が残置した動産は原則賃借人に引き渡しますが、引き渡すことができなかった動産は売却されることになります。この動産には、差押禁止債権となっている動産(衣服、寝具、台所用品、畳、建具、66万円までの現金、タンス、洗濯機、冷蔵庫、 電子レンジ、ラジオ、テレビ(通常のサイズのもの)、掃除機、エアコンなどの動産)も含まれます(神戸地判平成6・10・18)。

2.引き渡すことができない目的外動産の売却手続の種類

① 執行官が明け渡し催告の際に目的外動産を確認し、明け渡しの断行期日に売却することを公告した上で明け渡しの断行期日に売却

この方法は、明け渡しの催告時において、明け渡しの断行期日に売却することが適していると認められた場合に用いられる方法です。明け渡し催告の時点で賃借人の目的外動産の数が限られている場合に用いられます。

② 執行官が明け渡しの断行期日に、公告なく即日売却

この方法は、目的外動産を断行期日以降にも保管しておく必要性が乏しく、買い受け希望者が断行実施場所に同席しているような場合に用いられます。ただし、高額な動産は行うことはできません。

例えば、賃借人が断行期日までにほとんどの目的外動産を搬出して任意退去し、ある程度の目的外動産を残置し、その後も引き取りに来る見込みのないような場合に用いられることがあります。

③ 執行官が目的外動産を保管し、明け渡しの断行期日から1週間未満の日を売却期日と指定して売却 

上記②と同じ場面で用いられます。

④ 動産執行の例による売却

上記①~③の方法で行うことができない場合には、動産執行と同様の方法により売却されます。

具体的には、次の順で手続が行われます。

・目的外動産の保管(賃借人が居住していた建物内で保管することが多いです。)

・保管の日から1週間以上1ヶ月未満の日に売却期日が指定される。

・売却期日において、一般的には競り売りの方法で売却されます

この方法は、例えば、明け渡し期日において確認できた目的外動産が明け渡しの断行期日においてもほとんど残っていたような場合は、この方法によることが多いです。

 

次回は、競売手続における引き渡し命令の申立についてに取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/475

いつもありがとうございます。

放置自動車に所有権留保が設定されていたら

前回は駐車場の明け渡し請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/449

今回は、放置自動車に所有権留保が設定されていた場合の土地明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方は誰になるか?についてご説明させていただきます。

1.自動車の所有権留保とは

駐車場に放置されている自動車の使用者が、その自動車をオートローンなどの分割払いで購入していた場合には、販売店や立て替え払い業者の担保のため、その自動車に所有権留保が設定されていることが一般的です。

自動車の所有権留保とは、販売代金あるいは立て替え払い代金の分割払いを完了するまで、担保のために自動車の車検証(登録事項等証明書)の名義を使用者ではなく、販売店名あるいは立て替え払い業者名にしておくことをいいます。

自動車使用者が代金を完済した場合には、車検証の所有者名を使用者名に変更することになります。

一方、オートローンの分割払いを滞納した場合には、使用者は自動車販売店等に自動車を引き上げられ、売却されてその売却代金はオートローンの残債務に充当されるとする内容の契約になっていることが多いです。

2.駐車場の賃貸借契約の解除の相手方について

所有権留保の設定されている自動車の使用者が駐車場代金を滞納した場合に、賃貸借契約を解除する相手方は、賃借人である自動車の使用者になります。

3.駐車場の賃貸借契約解除後の土地の明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方について

この点については、「車検証上の所有者である自動車販売店等は担保目的で所有者名義になっているにすぎず所有権は帰属していない。」「使用者が分割払いを滞納して期限の利益を喪失したため、自動車販売店等に自動車の引き上げ義務が生じている場合でも、現実に自動車を使用・利用していないため、自動車の占有者とはならない。」という見解もありますが、判例(平成21年3月10日最高裁第三小法廷判決)においては、

「残債務弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である。」

として、使用者が自動車のオートローンの分割払いを滞納した場合に、留保所有権者(車検証上の所有者である自動車販売店等)に自動車の撤去義務があると判断しました。

また、駐車場の賃料相当損害金請求については、

「妨害の事実を告げられるなどこれを知ったときに不法行為責任を負う。」

として、自動車が放置されている事実を知ったときから不法行為責任として賃料相当損害金を請求することができると判断しました。

放置自動車を撤去する場合には、まず車検証の内容を確認して、所有権留保が設定されているなら、まず留保所有権者に分割払いが滞っているか、滞っている場合には自動車を撤去していただくよう連絡することが必要になります。

次回は、強制執行における目的外動産の売却について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/464

 

いつもありがとうございます。

駐車場の明け渡し請求について

前回は、敷引き特約の有効性についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/444

今回は、駐車場の賃貸借契約について、賃借人による賃料の支払が滞っている場合に、駐車場の明け渡し請求(放置している自動車の撤去を請求すること)をする場合について取り上げます。

流れとしては次のようになります。

1.自動車所有者の確認

原則的には自動車の所有者が土地明け渡しの相手方となるため、自動車登録番号(ナンバープレート)と車台番号を確認した上で、最寄りの陸運支局で登録事項等証明書を取得して自動車の所有者を確認します。

放置自動車でナンバープレートが外されていて自動車登録番号が分からないような場合は、自動車の外観から車台番号を確認して請求します。

反対に車台番号が分からないような場合は、自動車登録番号を確認して、自動車の写真を添付した私有地放置車両関係位置図をつけて請求します。

軽自動車の場合は、登録事項等証明書の制度がないので、軽自動車協会にて閲覧申請して所有者を確認します。

2.駐車場契約の解除

賃借人の住所が判明している場合には、目安として借り主が3か月以上賃料を滞納したら内容証明郵便によって、滞納賃料の支払いを催告し、支払がない場合には駐車場賃貸借契約を解除する旨の催告書を送付します。連帯保証人がいるのであれば、同様に催告書を内容証明郵便の方法で送付します。

賃借人の住所が分からない場合は、後記3の訴訟手続において、訴状に駐車場賃貸借契約を解除する旨を記載して、公示送達の方法により賃借人に送達することになります。

3.賃貸借契約解除後の訴訟手続

賃借人と自動車の所有者が同一人の場合は、同人を被告として、土地明け渡しと滞納賃料及び賃料相当損害金請求の訴訟を提起します。

賃借人と自動車の所有者が別々の者であれば、賃借人には滞納賃料及び賃料相当損害金請求、自動車の所有者には土地明け渡しの訴訟を提起することになります。

なお、自動車を撤去させる目的の土地明け渡しの訴訟においては、請求の趣旨に「自動車の撤去」を掲げる必要はありません。これは、強制執行の段階で、その放置自動車を目的外動産として扱い、土地の明け渡しの判決等で取り除くことができるからです。

また、土地の一区画の部分を駐車場として使用させている場合には、その範囲及び面積を図面等で明らかにしておく必要があります

次回は、放置自動車に所有権留保が設定されていたらどうする?について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/458

 

いつもありがとうございます。

敷引き特約の有効性について

前回は、敷金・礼金・権利金・保証金の意味合いについてご説明させて頂きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/435

今回は敷引き特約の有効性についてご説明させていただきます。

1.敷引き特約とは

敷引き特約とは、賃貸借契約における敷金について、賃貸借契約終了後にそのうち一定金額又は一定割合の金員を返還しない旨の特約をいいます。

2.敷引き金の性質

敷引き金の性質は、①謝礼(礼金と同じ性質)、②自然損耗料(通常使用による損傷部分の補修費)、③更新料免除の対価(契約更新時に無条件で更新を承認する対価)、④空室補償、⑤賃料の一部などと説明されていますが、主に②の自然損耗を補修するための財源を理由に徴収していることが多いです。

3.敷引き特約の有効性

敷引き特約(性質としては特に自然損耗料として)の有効性については、消費者契約法の規定により無効となるかならないかについて争いになることが多いです。

このような問題が生じるのは、以前、原状回復費用の記事について触れたことがあるのですが、賃借人は、特約のない限り、通常損耗について原状回復義務を負わず、その補修費用を負担する義務を負いません。そのため、通常損耗等の補修費用を負担させる趣旨の敷引き特約は、消費者である賃借人の義務を過重するものと考えられてしまうためです。

原状回復費用の記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/266

そのため、判例においては、「通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無その額等に照らし、敷引き金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。」としています(最高裁平成23年3月24日判決)。

そのため、敷引き特約を設けている場合は、その額が高額過ぎるわけではない、近隣の賃料相場に比べて基本賃料を低額に設定しているなどといった特段の事情があるかどうかによって有効か無効かの判断が分かれることになりますので注意が必要となります。

 

次回は、駐車場の明け渡し請求について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/449

いつもありがとうございます。

敷金・礼金・権利金・保証金の意味合いについて

前回は、賃料相当損害金は賃料の2倍請求できるか?ということについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/427

賃貸借契約を締結する際には、敷金、礼金などといった様々な名目の金銭が賃借人から賃貸人に交付されることが多いと思います。

今回は、このような名目の金銭がそれぞれどのような意味合いを持っているものかについてご説明します。

1.敷金について

敷金とは、不動産の賃貸借契約に付随して、賃貸人の賃借人に対する賃貸借契約に関する一切の債権(未払賃料、原状回復費用)を担保するために交付される金銭です。

したがって、賃貸借契約期間中の未払賃料や賃貸借契約終了後の賃料相当損害金があれば、それらに当然に充当されます。

そして、敷金は賃貸借契約が終了し、賃借人が不動産を明け渡したときに、充当後の残額の敷金について返還義務が生じます

敷金の滞納家賃等への充当に関してはこちらから

2.礼金について

礼金とは、賃貸借契約の成立の対価としての性質を有し、契約成立後、その返還を請求できないものをいいます。

3.権利金について

権利金とは、その性質は一定ではありませんが、

① 地理的に有利な不動産を借りられることに対する利益に対する対価

② 賃料の一部の一括前払い

③ 賃借権設定の対価

という意味で用いられています。③の意味においては、上記2の礼金と意味合いを同じくすると考えられます。

権利金は、敷金と同様に返還を要請求できないものといわれています。

4.保証金について

保証金は、一般的には、上記1の敷金と同様の性質(賃貸人の賃借人に対する一切の債権(未払賃料、原状回復費用)を担保するために交付される金銭)を有すると考えられています。

ただし、敷金とは別に保証金として交付していたり、保証金の額が高額な場合には、「賃貸人への建設協力金」などの意味合いで、不動産賃貸借に伴う貸金契約と判断される場合もあります。

 

次回は、敷引き特約の有効性について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/444

いつもありがとうございます。