前回は、オーナーチェンジがあった場合の敷金、滞納家賃についてご説明させていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/261
今回は、賃貸借契約が終了して借り主が建物を明け渡した際の原状回復費用について取り上げたいと思います。
賃貸借契約書において、「借主は、明け渡しの際に原状回復しなければならない。」という条項を盛り込んでいるかと思います。そして、原状回復費用は、契約当初に預かっていた敷金から控除することができますが、この原状回復費用について大家さんと借り主とでトラブルになることが多いため、大家さんとしては、借り主に請求できる原状回復費用は何かということについて正しく把握しておく必要があります。
原状回復とは、入居当時の状態にまで回復することをいうのではなく、借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借り主の責任によって生じた損耗や傷などを復旧することをいいます。
1.大家さんが負担すべき原状回復費用
「建物の経年劣化」、「借り主の通常の使用による損耗・キズ等」の回復費用は大家さんが負担します。
経年劣化の例としては、床の日照等による変色、備え付けの冷暖房機器の劣化などが挙げられます。
通常損耗の例としては、鍵の交換費用、ハウスクリーニング代、壁に貼ったポスターや絵画の跡(画鋲、ピンの穴を含む。)を補修するためのクロス交換などが挙げられます。
なお、自然災害による損耗についても大家さんの負担となります。自然災害による損耗の例としては、地震等により窓ガラスが割れた場合などが挙げられます。
このような費用は賃料の中に含ませて回収します。
2.借り主が負担すべき原状回復費用
「借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など借り主の責任によって生じた損耗やキズなど」、「故障や不具合を放置したり、手入れを怠ったことが原因で、発生・拡大した損耗やキズ」の回復費用は借り主の負担となります。
例えば、通常の使用方法を超えた使用をしたことによりハウスクリーニングを要するような場合は、借り主負担になることがあります。
また、クロス交換についても、借り主が手入れを怠っていて、タバコのヤニで変色や臭いが付着していたり、カビやシミをつけてしまった場合なども借り主負担となることがあります。
3.通常損耗補修特約について
賃貸借契約時において、通常損耗に関する修繕費用を借り主負担とする特約がされることがあります。この特約について有効にするためには、国土交通省のガイドラインにおいて次のような要件を公表しているため注意が必要です。
① 特約の必要性があり、かつ、暴利でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 借り主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 借り主が特約による義務負担の意思表示をしていること
なお、東京都においては、賃貸住宅紛争防止条例において、上記特約を設けた場合には賃貸借契約の媒介又は代理をする宅地建物取引主任者が契約段階で上記特約の内容について説明する義務を課しています。
次回は借り主が破産した場合の問題点について取り上げたいと思います。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/271
いつもありがとうございます。