前回は、無断増改築された物置は誰の物?というテーマで、賃貸家屋について増改築された部分の所有関係について取り上げさせていただきました。
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今回は、賃貸家屋に付着させた増改築部分が、賃貸家屋の所有者の所有物となった後の清算関係について取り上げます。
前回もご説明しましたが、賃借人が賃貸家屋に簡単に取り外せないような物置を設置するなどの増改築を施した場合、その増改築が賃貸人の承諾の有無にかかわらずその増改築部分は賃貸家屋の所有者の所有物になってしまいます。
それではその場合に、賃貸家屋に増改築を施した賃借人はその増改築に要した費用は回収できないのでしょうか?
結論としては、賃借人は、賃貸人に対し、その増改築に要した費用などの損失を不当利得として返還請求することができます。
(解説)
1.付合に伴う償金請求
賃借人は、不動産の付合によって増改築部分についての所有権を失うため、増改築を施した際に要した費用が無駄になってしまいます。一方で賃貸人は増改築部分の所有権を取得するといった利得を受けているので、その利得に相当する金銭(償金)を賃借人に返還することが必要になります。
一般的には、その償金の範囲は、賃借人が賃貸家屋を明け渡した時点における現に存する利益の範囲となります。
2.償金請求を回避するために
賃借人が増改築した部分について償金請求できるとなると、無断増改築の場合においては、賃貸人としては、自らの希望で増改築したわけでもないのにその費用を請求される事態に陥ってしまいます。
そのため、そのような事態を回避するために、賃貸人としては賃借人に対して増改築部分を賃借人の費用で撤去して原状回復請求していくことを求めます。
もっとも、その増改築部分が有益でそのまま維持しておくことがよいと考えるようであれば賃借人からの償金請求に応じるという選択肢を選ぶことも可能です。
いつもありがとうございます。