前回は、原状回復費用について取り上げさせていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/266
今回は、借り主が破産した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。
借り主が破産手続をした場合に大家さんとの関係で問題となるのは、
1.賃貸借契約は解除することができるのか?
2.滞納賃料・賃料相当損害金は破産手続の中でどのように回収されることになるのか?
の場面かと思われます。
結論から言うと、1については、
破産手続開始の申し立てをしたことのみでは大家さんからは賃貸借契約を解除することができない
2については、
破産開始決定の前後、破産管財人の関与の有無によって弁済の順番が異なる
ということができます。
以下、解説します。
(解説)
1.賃貸借契約の解除について
賃貸借契約において、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を設けていることがあります。
かつては、民法において借り主が破産した場合には、大家さんからも解約の申し入れをすることができるとする規定を定めていたこともありましたが、借り主の賃借権の保護の観点や、判例において賃料未払のない借り主が、破産手続開始の申し立てをしたという事実のみで解除することに否定的であったことなどから現在はそのような規定は削除されています。
そのような経緯から、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を有効とするのは困難とする見解が多いです。
なお、破産管財人においては、賃貸借契約について履行するか解除するかの選択権が与えられています。
もっとも、大家さんからの一般的な解除事由(賃料滞納など)に基づく賃貸借契約の解除は可能です。
2.滞納賃料・賃料相当損害金について
(1)破産手続開始前(決定日は含まない。)の滞納賃料・賃料相当損害金について
破産債権となりますので、破産手続の中で破産財団(破産者の財産)から清算します。
(2)破産手続開始後(決定日を含む。)の滞納賃料について
財団債権となりますので、破産手続によらず破産財団(破産者の財産)から随時弁済を受けます(破産債権となる上記(1)の債権よりも優先的に弁済を受けます。)。
(3)破産手続開始後(決定日を含む。)の賃料相当損害金について
破産財団(破産者の財産)である動産等で賃貸物件を占有している場合など、破産管財人がした行為によって生じた賃料相当損害金は財団債権となりますが、それ以外は劣後的破産債権(破産手続の中で配当の順位が劣後する破産債権)となります。
Q:借り主が破産手続をした場合、預かっている敷金はどうしたらよいですか?
A:賃貸借契約が解除されたわけではないので、そのままで結構です。
なお、破産手続き中に賃貸借契約が解除されて、明け渡しが終了した場合には、敷金から借り主の債務を控除した残額については、借り主の大家さんに対する敷金返還請求権という債権となり、破産財団(破産者の財産)を構成しますので、破産管財人が就いているときは破産管財人に返還することになります。
次回は家賃滞納者の念書・誓約書の必要性について取り上げさせていただきたいと思います。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/278
いつもありがとうございます。