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火災保険の長期契約が廃止に!

前回は競売物件購入のメリットと注意点について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/572

不動産賃貸経営を始めてはや数ヶ月が経ちました。

これまでは業務の性質上、賃貸経営にまつわる法律トラブルを中心にその周辺知識を知る機会が多かったのですが、実際に不動産賃貸経営自体を始めてみると、法律分野以外のことについてもいろいろと学ばされます。

例えば、以前のブログで取り上げたこともあるのですが、固定資産税を電子マネーで払うことができ、クレジットカードでチャージすることでポイントを貯めることができることを知りました。

参考→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/519

そして、最近知ったのですが、平成27年10月から保険期間が10年を超える火災保険の長期契約が廃止になってしまうことを知りました。

これまでは、長期の保険期間の保険料を一括で支払うことで、かなりの割引がきいて安い金額となっていたのですが、平成27年10月以降はこの方法で契約することができませんので、実質的に値上げとなります。

火災保険は、火災のほかにも落雷・風災(台風)・雹(ひょう)災・雪災(豪雪)などの自然災害が原因で損害が生じた場合にも補償があり、さらにこれらの事故の後の片づけ、清掃、搬出などにかかる費用についても補償の対象となっていることがあります。

近年は、このような自然災害が増加し、保険金の支払事案が増加したことが、今回の火災保険の長期契約の廃止につながったと考えられているようです。

現在、そろそろ自宅を持とうとか、不動産経営を始めようとか、不動産の購入を検討されている方は、この機会に購入し、火災保険の保険料の節約を考えてみるのもいいかもしれません。

また、実際に加入済みの方も契約内容の変更ができるようなら、一度相談に行ってみて変更することにメリットがありそうなら変更を検討してみてもいいかもしれませんね。

次回は、相続対策としてのアパート建設は本当に有効?について取り上げます。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/582

 

いつもありがとうございます。

競売物件を購入してみよう!

前回は、任意売却についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/567

今回は不動産を安く購入する方法である任意売却に引き続いて、不動産競売による競落という方法について取り上げます。

1.不動産競売とは?

一般的に、不動産を購入するときには銀行などの金融機関から融資を受けることが多いです。

融資を受けた金銭は不動産の売却代金や諸費用の支払に充て、買主は不動産を取得した後、不動産に融資の担保(借金のカタ)のために抵当権を設定します。住宅購入目的ではなく、事業のために融資を受けるために所有する自宅に(根)抵当権を設定する場合もあります。

そして、融資を受けた者は、その金融機関との融資額について契約どおりに返済をしていくわけですが、この返済が滞ったり、あるいは返済できなくなる場合があります。

その場合に、金融機関が、その不動産に設定している抵当権を実行することを担保不動産競売といいます。

抵当権を実行する(地方裁判所に担保不動産競売の申立をする)ことで、競売手続が開始され、手続の中で買受人を募り、入札等により競売物件を競落させ、支払われた競落代金は抵当権者である金融機関の残債権に優先的に充当されます。

不動産競売事件には、お金の貸し借りについて債務者所有の不動産に担保権を設定してはいないものの、債務者に支払を求める内容の判決や和解調書に基づき、債務者が所有する不動産を競売にかける強制競売の申立というケースもあります。

2.なぜ、競売物件は安く購入できるのか?

(1)そもそも不動産の価格が市場価格の6割程度

競売物件は、競売市場修正などの計算により、評価額が市場価格の6割程度の価格になることが多いです。

そして、一般に競売手続は、一定期間に買受希望価格を記載した入札書を提出させて、その中で最高価格申出人となった方について売却許可決定をして、残代金を納付させるという期間入札の方法をとっています。

しかし、その期間入札において一つも入札がなければ、特別売却期間が始まります。この場合は早い者勝ちとなり買受可能価額(売却基準価格の8割)で入札することができます。

その特別売却期間を過ぎても入札がなければ、売却代金の価額の再評価がされて、さらに競売物件の評価額は値下がりします。

(2)仲介手数料がかからない

不動産競売事件で落札した場合は、不動産会社から不動産を購入したわけではないので、不動産会社に不動産の媒介(または代理)にかかる仲介手数料がかかりません。

(3)書記官が所有権移転登記をする

落札した後には、裁判所書記官が不動産の所有権移転の登記嘱託を行ってくれるので、司法書士などの専門家に対して報酬を支払うことがありません(融資を受けて購入する場合は、抵当権設定について報酬が発生する場合もあります)。

3.安さだけで購入しないように注意が必要

以上のように、不動産競売であると不動産を安く取得することができますが、占有者との関係や不動産に瑕疵があった場合の負担などリスクも多く存在するので、購入する場合には競売物件の情報をしっかり検討してから購入するようにしましょう。特に、売れない物件はそれなりの理由があったりするので、購入する場合は要注意ですね。

次回は、火災保険の長期契約が廃止に!について取り上げます。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/576

 

いつもありがとうございます。

任意売却とは?

前回は、賃貸経営におけるマイナンバーの利用場面についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/552

賃貸経営において利回りを高くするため方法の一つとして、不動産を市場価格より安く購入するということが挙げられます。そして、不動産を安く購入する方法としては、任意売却(任売)と不動産競売(競売)という方法があります。

今回は、任意売却(任売)についてご説明させていただきます。

1.任意売却(任売)とは?

住宅ローンを組んで購入した不動産の所有者や、銀行などの金融機関から事業のために融資を受けた会社経営者が借入金の返済ができなくなり、ローン会社・銀行などから所有する不動産に設定した抵当権を実行されそうな場合に行われます。

一般的には、所有者が破産手続あるいは債務整理手続中で、弁護士が所有者の代理人となり、不動産会社との間で媒介契約を結んで、売却に出されていることが多いです。

2.任意売却のメリット

抵当権者である金融機関(銀行・ローン会社)からすれば、競売手続に要する時間と費用がかからず、かつ競売手続よりも高く売却できることから多く債権回収を図ることができるというメリットがあります。

所有者にとっても、競売に要する費用負担から免れるし、競売手続よりは高額で売却できるので、多く返済に充てられますので、残債務の支払について計画を練りやすくなります。

購入者においては、市場価格よりは安く購入できることのほか、抵当権者も所有者も売却の意向があるので、不動産の内部を確認することができる場合が多いです。

さらには、物件内の占有者を排除しなければならないとか、残置動産をどのように処分するかといった問題もほとんどありません。

そのほか、抵当権を実行され不動産競売事件が始まってしまうと、不動産の登記事項に差押の登記が入ります。それが一度入ってしまうとその物件を傷物として気にして購入を控える方もいらっしゃいます。任意売却の場合は差押の登記は入りませんのでその点を気にすることがありません。

このように任意売却ならではのメリットも多くありますが、それでも、不動産競売で売りに出されている競売物件の方が価格は安い傾向にあるので、更に利回りを高めたいという方は不動産競売にも注目した方が良いと思います。

次回は、不動産競売物件の購入について取り上げてみたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/572

 

いつもありがとうございます。

マイナンバー制度が始まります。

前回は、保証会社との間の契約条項の注意点についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/544

今回は、賃貸経営におけるマイナンバーの利用についてご説明したいと思います。

1.マイナンバー制度とは

平成27年10月から、市区町村から住民票を有する国民全員に対して、12桁の番号からなる個人番号が1人1つ指定され通知されます。企業や公官庁などの法人においては、国税庁から13桁の番号からなる法人番号が1法人1つ指定され通知されます。

マイナンバー制度は、このように個人あるいは法人に番号を付すことで、複数の機関に存在する情報を、同一人の情報であると確認するための制度です。

マイナンバーの利用目的は、「社会保障」、「税」、「災害対策」に限定して利用されることになっていますが、今後は医療などの他の分野にも利用されることが検討されているようです。

平成28年1月からの利用開始が予定されています。

2.なぜマイナンバー制度を導入するのか?

(1)所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくする。

例えば、併給できない支給を受けているなど、行政による過払いを防ぐ事ができるようになります。

(過払いを受けている場合は返還しなければなりません。)

(2)行政の効率化

同一人であるかどうかなどの情報の照合事務が軽減されます。

(3)国民の利便性の向上

他の行政機関で発行する書類の添付が不要になる場合があります。

3.賃貸経営におけるマイナンバーの利用場面

不動産の賃貸借契約において、年間の賃料等の合計金額が15万円を超えて支払をする法人と不動産業者である個人の方(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方を除く。)は、賃貸人に対して、支払調書の提出が必要になります。

社宅として利用するために法人で賃貸借契約を結んだり、サブリース契約をしたような場合が該当することになるかと考えられます。

参考→https://www.nta.go.jp/taxanswer/hotei/7441.htm

新しい支払調書のサンプルはこちら→

http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jizenjyoho/pdf/hotei1_04.pdf

そのような場合には、支払調書作成・提出事務のため、賃貸人である大家さんはマイナンバーの提供を求められることになります。

通常、賃貸借契約を結んだ時点で、月々の賃料額が決まっていることが多数であることから、年内に支払う賃料額が15万円を超えていればマイナンバーの提供を求められることになります(一方で、年の途中で賃貸借契約を締結したことにより年内での賃料額合計が15万円に達しないときは、支払調書の作成が不要になるため、契約時点においては、マイナンバーの提供を求められることはありません。)。

また、賃貸借契約の更新契約を締結した場合においても、既に提供を受けている賃貸人のマイナンバーを更新後の賃貸借契約の支払調書作成・提出事務のために利用されることがあります。

情報が一元化することで便利なことも多くありますが、その分リスクもあるとも言えるので、情報管理には気をつけたいですね。

 

次回は、不動産を安く購入する方法である任意売却について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/567

いつもありがとうございます。

保証会社との間の契約条項はよく読みましょう。

前回は、借家の立ち退き料の相場についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/537

賃貸借契約を締結する際、賃借人が親族などの連帯保証人をつけられない場合に、賃借人の委託により家賃債務保証会社に保証人になってもらうことがあります。

契約関係を整理すると、賃貸人と保証会社の関係は保証契約となり、入居者と保証会社の関係は保証委託契約となります。

これらの契約により、保証会社は、賃借人が家賃を滞納した場合、賃借人に代わって賃貸人に滞納家賃を支払い、賃借人に立て替えた家賃分を求償することになります。

そして、保証会社と賃借人の間の保証委託契約書の契約条項について、

「賃借人が家賃を滞納した場合には、賃借人は保証会社が賃貸家屋内に立ち入り、適当な処置をすることができることを事前に承諾する。」

といった内容の条項がある場合には要注意です!

1.賃借家屋への立ち入り及びその使用を排除する内容の事前承諾は有効か?

こういった内容の条項を自力救済条項と言います。

この自力救済条項を根拠に、賃借人が家賃を滞納した場合に、賃借人が外出中に建物内に侵入してドアの鍵を交換したり、建物の内側の扉に「○月○日までに未払賃料を支払わない場合には賃貸借契約を解除する。」旨を記載した書面を貼り付けるといった行為をしてしまうと非常に問題があります。

賃借人も合意の上でそのような内容の契約を締結しているから問題ないのでは?とも言えそうですが、裁判所の判例は、このような手段による権利の実現(建物明け渡し・家賃回収)は、法的手続によったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合を除くほかは、原則として許されないとしており、そのような自力救済条項を公序良俗に反するので無効としています。

2.自力救済条項による民事上・刑事上の責任

この問題は民事上無効というだけだけでなく、不法行為(プライバシー侵害・器物損壊)による損害賠償といった民事上の責任や、住居侵入・器物損壊という犯罪を構成する可能性もあり、その場合には刑事上の責任も追求されかねません。

実際に、賃貸人、管理会社、保証会社などの自力救済行為をした者に民事上の責任を認めている裁判例もありますので注意が必要です。

次回は賃貸経営におけるマイナンバーについて取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/552

 

いつもありがとうございます。

借家の立ち退き料の相場は?

前回は収益物件の実質利回りを計算方法について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousantoushi/532

最近は、家賃滞納による解除以外の原因での建物明け渡しのご相談をよく受けるようになりました。

特に期間満了解約の申し入れを原因とする事案が多いです。

いずれの事案も賃貸人側に明け渡す必要性(正当事由)が必要になるほか、その正当事由を補完するために一定の立ち退き料の提供が必要になる場合があります。

今回はその借家の立ち退き料についてご説明したいと思います。

1.正当事由の存在が前提であること

立ち退き料の提供は、それのみでは正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補完しあって正当事由の判断の基礎となるものとされておりますので、正当事由の存在が前提となります。

2.立ち退き料の提供の性質

立ち退き料は、

① 移転を伴うことで賃借人が支払わなければならなくなる費用(引っ越し費用、新しい賃貸物件を借り入れるために必要となる敷金・礼金、旧賃料との差額など)の補償

② 移転することで失われる賃借人の利益(間取り、通学通勤条件等の悪化、営業上の損失など)の補償

などの性質があると考えられています。

3.立ち退き料の相場は?

提案する立ち退き料は、事案ごとにケースバイケースですので、計算方法というのはありません。

例えば、居宅と店舗では、店舗の方が営業補償の観点を考慮する必要があるので、明け渡しを求めることで賃借人にとって負担が大きいのは店舗になりますので、その結果、立ち退き料も店舗の方が高額になります。

また、居宅の立ち退きの場合であっても長期間一定地域において生活した基盤を失わせることになる場合には、精神的慰謝料的な補償を必要とする可能性も出てきます。

そのため、具体的には個々の事案に応じて、立ち退きをすることでどのような損失があるかを考えて算出するしかありませんが、一般的には賃料の6か月から1年分の価格と言われています。

4.失う借家権の補償について

借地権は譲渡性があることから、借地権の取引においては、借地権価格(借地権の財産的価値・経済的利益の価額を示すもの)を用いることがあり、立ち退き料の算定の基礎として考慮されることが多いです。

一方、借家権の場合にも「借家権価格」というものがありますが、借家権は借地権と異なり譲渡性に乏しく、取引の対象となることが少ないことから、実際の裁判においても借家権価格の鑑定をすることは少ないです。

また、賃貸人側に賃貸借契約を終了させるのに正当事由がある場合において、実際の立ち退きに伴う費用等に比べて、借家権価格を基礎に算定された立ち退き料の方が高額になるような場合に、立ち退き料を借家権価格によって算定しないとする判例もあることから、あくまでも借家権価格は立ち退き料の算定のための参考資料の一つにしかならず、立ち退き料によって借家権価額が補償されるわけではないと考えられそうです。

 

次回は、保証会社との間の保証委託契約書の契約条項の注意点について取り上げます。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/544

いつもありがとうございます。

収益物件の実質利回りを計算してみよう!

前回は、建物明け渡しの強制執行手続に立ち会ってきましたので、その様子をレポートさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/528

最近は、不動産経営業を本格的に始めるべく、毎日、物件情報を調べ、利回り等を計算し、よい収益物件がないか探しています。

不動産会社からいただく販売図面には、よく「表面利回り○%」などと書いてあることがありますが、これは不動産を購入するために必要な費用や、購入してから所有し続けることで発生する諸経費を一切考慮していない数字なので実際の利回りよりも少なくなります。

1.表面利回りとは

表面利回りの計算式は、

年間賃料額÷不動産購入価額×100=表面利回り

となります。

たとえば、賃料が月額10万円得られる物件だとして、不動産購入価額が1200万円だとしたら、年間賃料額は120万円なので(10万円×12か月)、表面利回りは10%となります。

2.実質利回りとは

不動産を購入する場合には、不動産の購入代金のほかにも様々な費用が必要になります。

例えば、不動産取得税、登記手続のための司法書士報酬・登録免許税、不動産会社に支払う仲介手数料(あるいは代理報酬)、各種契約書に貼付する収入印紙、ローン手数料、火災保険料などなど

不動産購入後にも、不動産を所有していることで固定資産税・都市計画税がかかります。マンションであれば管理費、修繕積立金もかかります。

更にローンを組んでいるなら、元本返済と利息も支払わなければなりません。

不動産経営者は、このような諸費用を考慮して、実質的な利回りを計算しておく必要があります。

この実質利回りの計算式を挙げるとするなら、

年間賃料額-毎年あるいは毎月かかる諸費用(固定資産税・都市計画税・管理費等)・・・①

購入価格+不動産購入時に必要な諸費用(不動産取得税等)・・・②

①÷②×100=実質利回り

この実質利回りの計算方法から分かるように、収入は減る方向に動き、支出は増える方向に動いていることから実質利回りは表面利回りよりも低い数字になります。

そして計算の結果出てきた実質利回りの数字をもって、その不動産の収益力を判断することができます。

計算するに当たって、こもごもの諸経費が分からない場合もありますが、分からないところは不動産会社などに聞いて調べていくと良いでしょう。

こういった計算を続けて、良い収益物件かどうかを見極める目を持つことができるようになっていこうと思います。

次回は、借家の立ち退き料の相場は?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/537

 

いつもありがとうございます。

建物明け渡しの強制執行手続をしてきました。

前回は、「固定資産税を払うならnanacoで払ってクレジットカードのポイントを獲得しよう。」ということについて書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/519

ところで、先日、依頼を受けていた建物明け渡し請求の事案で、建物明け渡しの強制執行手続に立ち会ってきました。今回はそのレポートをしたいと思います。

家賃を約1年3か月ほど滞納していた事案だったのですが、大家さんから依頼を受けてから催告書を内容証明郵便で送ったものの、受け取ることもなく郵便物は返還され、一切話し合いの余地がありませんでした。

そのため、やむなく訴訟を提起しましたが、訴訟の最中も入居者は訴状副本を受け取ることもなく、判決が出されてもなお、一切の連絡もありませんでした。

そのため、話し合いで解決することも困難で待っていても滞納賃料がかさむだけなので、建物明け渡しの強制執行を進めることにしました。

明け渡し催告期日に、執行官、証人、執行補助者、依頼者、仲介不動産業者の立ち会いのもと、執行場所である建物所在地に臨場しました。

執行官はドアをノックし、「○○さん、裁判所です。」「○○さん、いらっしゃいませんか?」と声をかけるも反応なし。

そこで、執行補助者の解錠技術者の方に、玄関ドアを解錠していただき、建物内へ入室したところ、入居者は留守でしたが、執行官は、部屋の状況から入居者の占有を認定し、

「本日、明け渡しの催告をしたこと」

「占有の移転が禁止されること」

「引き渡し期限が切れるまでに占有を移転したときは、新しい占有者に対しても強制執行をすること」

「明け渡しの強制執行は○月○日(引き渡し期限)に実施すること」

などが記載された公示書を玄関入り口に貼り付けました。

その後、入居者から、玄関入り口に貼り付けられた公示書を見て何らかの連絡があるかなと期待していたものの、引き渡し期限まで何らの連絡もなく、強制執行実施日を迎えることになりました。

強制執行実施日当日、執行官が明け渡し催告期日と同様にドアをノックし呼びかけるものの、一切応答せず。解錠技術者の方にドアを開けてもらって居室内に入室したところ、公示書は剥がされていて丸めて捨ててありました。

部屋の状態は、明け渡し催告期日と大差ない状態で荷物がそのまま残っていたので、引き渡しを済ませるために執行補助者の方に搬出作業を進めていただき、目的外動産は動産執行の例にならい、別の保管場所に保管して後日売却手続をすることになりました。

この件に関して、着手してから明け渡しまで約半年の期間がかかりました。この期間も賃料を得ることはできませんし、執行手続費用もかかってしまいました。

これは私の経験上ですが、当初から入居者の連絡が一切ないケースは強制執行に至るケースが多いように思います。そのため、大家さんの方には、入居者との話し合いによる解決のためにも、賃貸物件からの収益力を確保するためにも、家賃滞納が始まったら速やかに対応することをお勧めします。

 

次回は、収益物件の実質利回りの計算について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousantoushi/532

 

固定資産税はnanacoで払おう

前回は、借地契約における建物買取請求権についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/511

今回は、固定資産税のお得な支払い方法について取り上げたいと思います。

 

結論からいうと、

固定資産税は、nanacoカードで支払うことができる

ということです。

 

nanacoは、セブンイレブン、イトーヨーカドー、西武などで使える電子マネーですが、このnanacoカードは、クレジットカードからチャージすることができます。

クレジットカードからチャージすることでクレジットカードのポイントを取得することができます。

そして、セブンイレブンに固定資産税納付書を持っていって、そのチャージされたnanacoカードで支払をすればOKです。

なお、nanacoで固定資産税の支払いをしても、nanacoカード自体のポイントはつきません。

注意点としては、nanacoにチャージできる限度額が5万円までなのと、チャージ回数、チャージ金額(1回につき29,000円)に制限があります。

そのため、一度にたくさんの固定資産税を支払う必要があるときは、nanacoカードを複数枚もってそれぞれに限度額いっぱいにチャージして支払をすれば良いかと思います(一人で複数枚nanacoカードを持つことは可能です。)。

実は、私も昨年から不動産賃貸経営の勉強を始め、利回り、担保力、稼働力などを計算しながら、近隣を中心に不動産を探し始めるようにしています。

しかし、いざ実践するとなかなかいい物件を見つけるのは難しく、また良い物件を見つけても、良い物件はすぐに買い受け申し出がされてしまうので、不動産投資はスピード勝負なんだと実感しています。

そのような中、今年になってようやく1軒目の物件を購入し、不動産賃貸業を始めることができました。

始めてみたことで、今回の記事のようなことを知ることができました。どうせ同じ金額を支払うにしても、ちょっとした工夫でお得になったりするもんなんだと実感しています。

今後は法律問題だけではなく、不動産賃貸経営に関して実践する中で有益な情報を学べたときは、そのようなことも記事として取り上げていきたいと思います。

次回は、建物明け渡しの強制執行手続に立ち会ってきましたので、その様子をレポートさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/528

 

いつもありがとうございます。

建物買取請求権について

前回は、民法改正による敷金と原状回復請求の明文化についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/504

今回は借地契約における建物買取請求権について取り上げてみたいと思います。

1.建物買取請求権とは

建物買取請求権とは、借地権(建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)について、存続期間が満了した場合に契約の更新がないとき、あるいは、借地権上の建物等が譲渡された場合において賃貸人が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときに、借地人あるいは建物の譲受人が、賃貸人に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求する権利です。

建物所有目的の土地の賃貸借契約が終了すれば賃借人は原状回復義務の一環として建物を収去して土地を明け渡す義務を負いますが、建物を築造した賃借人に投下資本の回収を図らせ、建物の取り壊しによる社会経済上の損失を防ぐために建物買取請求権が認められています。

2.建物買取請求権の行使の効果

建物買取請求権を行使することで、賃借人は建物引き渡し義務と所有権移転登記義務を負い、賃貸人は代金支払い義務を負うことになります。

したがって、賃借人は賃貸人から代金の支払いを受けるまでは、建物の明け渡しを拒むことができるようになり、その反射的効果として敷地(借地)の明け渡しも拒むことが判例上認められています

ただし、敷地の明け渡しを拒むことができても、その敷地を利用している間は不当利得として賃料相当損害金を支払う必要があります。

3.賃貸借契約が賃借人の債務不履行の場合に行使できるか?

建物所有目的の土地の賃貸借契約について、賃借人の債務不履行により賃貸借契約を解除された場合には、賃借人は建物買取請求権を行使することは判例上認められていません。

これは、建物買取請求権が誠実な借地人を保護するための規定であるためです。

そのため、賃借人の債務不履行により土地の賃貸借契約を解除された場合には、建物買取請求権を行使して建物収去義務・土地明け渡し義務を拒むということができないということになります。

次回は、固定資産税のお得な支払い方法について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/519

 

いつもありがとうございます。