作成者別アーカイブ: katagiri

サブリース契約の期間が満了した場合、契約を終了できるか?

前回は、借り主に相続人がいない場合の取り扱いについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/297

今回は、不動産業者が土地の所有者の建築した建物において転貸事業を行うため、土地建物の所有者とサブリース契約を締結していた場合に、契約期間が満了することでサブリース契約を終了させることができるかということについてご説明します。

(回答)

この場合、期間満了を理由として賃貸借契約を終了させる場合と同様に借地借家法28条を適用し、期間満了の1年前から6か月までの間に相手方に対して更新拒絶の通知を行うことのほか、賃貸人が建物の使用を必要とする事情等の正当事由が必要になります。

(解説)

1.サブリース契約とは

不動産業者が土地所有者の建築した建物において転貸事業を行うため、あらかじめ両者間で賃貸期間等についての協議を調え、土地所有者が協議の結果を前提とした収支予測の下、融資を受けて建物を建築し、不動産業者がその建物を一括して賃借することを内容とした賃貸借契約です。

サブリース契約により、土地建物の所有者は、空室リスクを不動産業者に転嫁し、安定的な賃料収入が見込めます。一方、不動産業者もその建物を転貸することで、入居者から得られる転貸料と土地建物の所有者に支払う賃料の差額の利益を得ることができます。

2.サブリース契約に対する借地借家法の適用

裁判所は、サブリース契約も賃貸借契約であるとして、サブリース契約に借地借家法の適用を認めています(サブリース契約の賃料増額請求につき借地借家法の適用を認めた判例 最高裁平成15年10月21日判決)。個人と不動産業者の間のサブリース契約ばかりでなく、事業者と事業者の間のサブリース契約においても借地借家法の適用があるとしています(札幌地裁平成21.4.21判決参照)。

そのため、サブリース契約を期間満了で終了させる場合には、借地借家法28条により、更新拒絶通知のほか、正当事由が必要です。

この正当事由は、土地建物の所有者がその建物を利用する必要性と不動産業者がその建物を利用する必要性を比較衡量したり、立ち退き料の支払いの申し出があるなどの諸事情を考慮して判断されますが、一般的にサブリース契約は建物一棟の賃貸借契約が多く、所有者がその一棟の建物を利用する必要性が高いと判断されにくいため、正当事由があると認められるケースは多くはありません。

正当事由が認められないといった事態を避けるためにもサブリース契約時においても、定期借家契約を締結しておくことを検討しておく必要があると言えます。

 

次回は、後継ぎ遺贈とは?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/minnjishintaku/306

 

いつもありがとうございます。

借り主に相続人がいない場合の取り扱い

前回は、更新料の請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/koushinryo/293

今回は、居住用の建物の賃貸借契約期間中に借り主が亡くなり、その借り主に相続人がいない場合について取り上げたいと思います。

借り主に相続が生じ、相続人がいる場合には相続人が借家権を相続します。しかし、借り主に相続人がいない場合や相続人がいても全員が相続放棄をした場合には、大家さんは家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをして、選任された相続財産管理人との間で賃貸借契約の終了(合意解除)について話し合いをすることになります。

ここで注意が必要なのが、賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子が同居していた場合です。この場合について詳しく解説していきます。

(解説)

賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子など相続人ではない者が居住していた場合

借地借家法36条においては、「建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。」ということを定めています。

したがって、内縁の妻や事実上の養子に対して居住権がないとして建物の明け渡しを求めることはできません。

また、その内縁の妻などが借り主の権利義務を承継することから、借り主が生存中に滞納していた家賃などの債務があれば、その内縁の妻などが承継することになります。

 

Q:借り主に相続人がいる場合には借家権は相続人が相続するため、賃貸物件内に内縁の妻が居住していても、内縁の妻には賃貸物件の借家権はありませんので、明け渡しを請求することができますか?

A:判例(最判昭和37年12月25日判決)は、「内縁の妻は、借り主の相続人の借家権を援用できる。」として、内縁の妻がそのまま賃貸物件に居住することを認めていますので、建物明け渡し請求をすることはできません。

ただし、内縁の妻は、大家さんに対しては、相続人が取得した借家権を自分の権利として主張することができるだけで、相続人に対しては借家権を主張することはできないため、内縁の妻は相続人に対して不法行為あるいは不当利得として賃料相当額を支払う義務を負うことになります(賃料は相続人が大家さんに支払う義務を負うことになります。)。

 

次回は、サブリース契約の期間が満了した場合に、契約を終了できるか?について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/301

 

いつもありがとうございます。

更新料を請求するには

前回は生活保護者の家賃滞納について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/282

今回は賃貸借契約の更新について取り上げていきたいと思います。

賃貸借契約の更新には、大家さんと借り主の間で更新契約をする「合意更新」と、賃貸借契約期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知をされず、かつ、大家さんと借り主との間で更新に関する合意がない場合に自動的に同一条件(ただし、期間については定めのないものとなります。)で更新される「法定更新」があります。

更新拒絶の通知に関してはこちらを参考にしてください。

このような更新の際に、借り主は大家さんに対し更新料を支払うことがありますが、

1.賃貸借契約書には、契約の更新をする場合には、借り主が更新料を支払う旨の条項があるかどうか?

2.法定更新された場合には更新料を請求することができるのか?

の点には注意が必要ですので、これらの点について解説します。

(解説)

1.賃貸借契約書に、契約の更新をする場合には、借り主が更新料を支払う条項があるかどうか?

更新料の支払い請求権は、賃貸借契約そのものや、賃貸借契約の慣習から認められたものではありませんので、大家さんと借り主との間で賃貸期間の満了にあたり、契約の更新をする場合には更新料を支払う旨の合意があることを根拠に認められるものです。

したがって、賃貸借契約書あるいは合意書などの中で、そのような合意が定められていることが必要です。

2.法定更新された場合に更新料を請求できるかどうか?

当初の賃貸借契約においては、更新料の支払い条項を定めていたものの、特に更新拒絶の通知をせず、かつ更新の合意をしなかったため賃貸借契約が法定更新されたような場合に更新料を請求できるか?という点については、肯定される場合もあれば否定される場合もあり判断が分かれています。

その当事者間で合意した更新料の性質が、

「低く設定した家賃の補充」としてとらえられるなら、肯定されやすく、

「更新拒絶権を放棄することの対価」とか「更新契約をすることで、期間の定めのある賃貸借契約となり、解約申し入れをすることができなくなることの対価」としてとらえられるなら、否定されやすい

とされています。

解約申し入れについては、こちらを参照してください。

また、これらの点以外の事情も加味されて判断されるため、契約書に更新料に関する合意があるというだけでは更新料を請求できない場合もありますので、お悩みでしたら一度専門家に相談されるのがよいと思います。

 

次回は借り主に相続人がいない場合の取り扱いについて取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/297

 

いつもありがとうございます。

賃貸経営+相続対策フェスタでのブース出店について

10月18日に新宿NSビルで開催される株式会社オーナーズ・スタイル様主催の「秋の賃貸経営+相続対策フェスタ」において当事務所がブースを置かせていただくことになりました。

「秋の賃貸経営+相続対策フェスタ」はこちら

http://www.owners-style.co.jp/festa_2014autumn/

このイベントは、様々な企業様がブースを出店し、建物建築、リフォーム・リノベーション、相続対策、管理・仲介・滞納保証、売買・設備・コンサルティングなどといった賃貸経営を進めるに必要な情報を得るのに良い機会になります。

また、不動産市況、空室対策、不動産投資に関するセミナーや、経済学者の竹中平蔵氏による特別講演も開催されますので、大家さんには見逃せないイベントになるかと思います。

私はブースにて、来訪者の大家さんに次のようなご説明をする予定です。

1.入居者の賃料滞納問題

・家賃滞納が発覚したときの大家さんの対応方法

・家賃滞納を未然に防ぐ方法

2.建物明け渡し手続

・建物明け渡し手続の流れ

・裁判といったおおごとにしない方法での建物明け渡し手続き

・定期借家契約

・賃料滞納以外の理由による建物明け渡し手続

3.遺言・民事信託を利用した相続対策

・民事信託を利用した万全な相続対策(賃貸経営をどのように引き継ぐか?他の推定相続人との調整はどのようにするか?)

・遺言の種類、メリット・デメリット

など

ご説明は無料なので、お気軽に足を運んでいただけたら幸いです。

どうぞ宜しくお願いします。

 

いつもありがとうございます。

生活保護者の家賃滞納

前回は、家賃滞納者の念書・誓約書の必要性について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/278

今回は、生活保護を利用している入居者が家賃を滞納した場合の対応について取り上げます。

特に大家さんが気にされているのが、生活保護利用者が家賃を滞納し、回収することができない場合に賃貸借契約を解除して建物明け渡し手続をすることができるのかということですが、この場合にも一般の入居者の場合と同様に建物明け渡し手続きを進めることは可能です。

ただし、入居者が生活保護者である場合には特別な制度があり、その制度を入居者に利用してもらうことでトラブル回避やスムーズな建物明け渡しにつながることもありますので、そのことについてご説明します。

1.家賃滞納を防ぐために

生活保護利用者である方は、病気や障害を抱えているため金銭管理を十分に行うことができない方も多いです。そのような場合には、生活保護費を支給する機関が生活保護利用者を代理して、大家さんに対し、月々の賃料を納付する代理納付の制度がありますので、その制度の利用を入居者に促して家賃滞納を未然に防いでいただくことをご検討していただくとよいでしょう。

2.強制執行手続に進む前に

生活保護者は、家賃滞納で入居者から明け渡しを求められ転居をする必要性が生じた場合、転居先の敷金等や引っ越し費用の支給を受けることができる場合があります

生活保護者の次の転居先が整っていない段階で強制執行手続で建物明け渡しを断行するとなると、入居者の身体・生命を脅かす可能性がありますので、強制執行の申し立てをする前に、入居者にその転居費用にかかる金銭の支給申請をすることを促して、入居者の転居先が定まってから、任意で退去していただいた方が建物明け渡しをスムーズに行うことができるかと考えられます。

 

次回は、更新料を請求するには?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/koushinryo/293

 

いつもありがとうございます。

家賃滞納者の合意書・念書・誓約書の必要性

前回は、借り主が破産した場合、賃貸借契約の解除ができるのか?滞納家賃、賃料相当損害金、敷金はどうなるのか?について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/271

今回は、借り主の家賃滞納期間が経過している場合に、事を荒立てたくないと法的手続に進むことを躊躇している大家さんにせめてしておいていただきたい最低限のことについてお話しさせていただけたらと思います。

家賃滞納が発生したら、どのように対応するかについては、以前、連帯保証人に対する請求の時にブログで取り上げさせていただきました。

参考→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/157

口頭で催促したりすることはあっても、借り主から懇願されたりすると、内容証明郵便を送付するなどといった法的手段に進むことを躊躇することがあるかと思います。それにちゃんと今後払ってくれそうなら、解除して明け渡しを進め空室にするより、賃料収入を確保できる方がよいと考える方もいらっしゃいます。

そういう場合であっても、無期限で待ってあげたりすることは、大家さんにとっても借り主にとってもよくないので、ちゃんと話し合って、滞納賃料をどのような期間でどのように支払っていくか、それでも払わないときはどうするかを決めて、念書や誓約書などの書面の形で残してください。

文面の例としては、

「私は、貴殿から賃借している△県◇市○番地所在の建物(アパート名 ○○)の○○号室の平成○○年○○月から平成○○年○○月の間の滞納賃料○○円を、平成○○年○○月から平成○○年○○月まで毎月○日限り○○円ずつ分割して支払います。この支払を怠ったときは何らの催告を要せず賃貸借契約を解除することに異議はありません。解除された場合には、建物を明け渡します。」

という形が一般的に多く使われています。

こういう形を取っておくことで、過去の滞納賃料の存在を認めることになり、滞納賃料の時効期間の進行を止める効果があり、最終的に法的手段に進む場合も強い証拠になります。

なお、合意書・念書・誓約書を公文書とする方法については下記リンクをクリックして参照してみてください。

公文書とする方法→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/410

 

次回は、生活保護者の家賃滞納について取り上げて行きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/282

 

いつもありがとうございます。

借り主の破産について

前回は、原状回復費用について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/266

今回は、借り主が破産した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。

借り主が破産手続をした場合に大家さんとの関係で問題となるのは、

1.賃貸借契約は解除することができるのか?

2.滞納賃料・賃料相当損害金は破産手続の中でどのように回収されることになるのか?

の場面かと思われます。

結論から言うと、1については、

破産手続開始の申し立てをしたことのみでは大家さんからは賃貸借契約を解除することができない

2については、

破産開始決定の前後、破産管財人の関与の有無によって弁済の順番が異なる

ということができます。

以下、解説します。

 

(解説)

1.賃貸借契約の解除について

賃貸借契約において、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を設けていることがあります。

かつては、民法において借り主が破産した場合には、大家さんからも解約の申し入れをすることができるとする規定を定めていたこともありましたが、借り主の賃借権の保護の観点や、判例において賃料未払のない借り主が、破産手続開始の申し立てをしたという事実のみで解除することに否定的であったことなどから現在はそのような規定は削除されています。

そのような経緯から、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を有効とするのは困難とする見解が多いです

なお、破産管財人においては、賃貸借契約について履行するか解除するかの選択権が与えられています。

もっとも、大家さんからの一般的な解除事由(賃料滞納など)に基づく賃貸借契約の解除は可能です。

 

2.滞納賃料・賃料相当損害金について

(1)破産手続開始前(決定日は含まない。)の滞納賃料・賃料相当損害金について

破産債権となりますので、破産手続の中で破産財団(破産者の財産)から清算します。

 

(2)破産手続開始後(決定日を含む。)の滞納賃料について

財団債権となりますので、破産手続によらず破産財団(破産者の財産)から随時弁済を受けます(破産債権となる上記(1)の債権よりも優先的に弁済を受けます。)。

 

(3)破産手続開始後(決定日を含む。)の賃料相当損害金について

破産財団(破産者の財産)である動産等で賃貸物件を占有している場合など、破産管財人がした行為によって生じた賃料相当損害金は財団債権となりますが、それ以外は劣後的破産債権(破産手続の中で配当の順位が劣後する破産債権)となります。

 

Q:借り主が破産手続をした場合、預かっている敷金はどうしたらよいですか?

A:賃貸借契約が解除されたわけではないので、そのままで結構です。

なお、破産手続き中に賃貸借契約が解除されて、明け渡しが終了した場合には、敷金から借り主の債務を控除した残額については、借り主の大家さんに対する敷金返還請求権という債権となり、破産財団(破産者の財産)を構成しますので、破産管財人が就いているときは破産管財人に返還することになります。

 

次回は家賃滞納者の念書・誓約書の必要性について取り上げさせていただきたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/278

 

いつもありがとうございます。

原状回復費用について

前回は、オーナーチェンジがあった場合の敷金、滞納家賃についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/261

今回は、賃貸借契約が終了して借り主が建物を明け渡した際の原状回復費用について取り上げたいと思います。

賃貸借契約書において、「借主は、明け渡しの際に原状回復しなければならない。」という条項を盛り込んでいるかと思います。そして、原状回復費用は、契約当初に預かっていた敷金から控除することができますが、この原状回復費用について大家さんと借り主とでトラブルになることが多いため、大家さんとしては、借り主に請求できる原状回復費用は何かということについて正しく把握しておく必要があります。

原状回復とは、入居当時の状態にまで回復することをいうのではなく、借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借り主の責任によって生じた損耗や傷などを復旧することをいいます。

 

1.大家さんが負担すべき原状回復費用

「建物の経年劣化」、「借り主の通常の使用による損耗・キズ等」の回復費用は大家さんが負担します。

経年劣化の例としては、床の日照等による変色、備え付けの冷暖房機器の劣化などが挙げられます。

通常損耗の例としては、鍵の交換費用、ハウスクリーニング代、壁に貼ったポスターや絵画の跡(画鋲、ピンの穴を含む。)を補修するためのクロス交換などが挙げられます。

なお、自然災害による損耗についても大家さんの負担となります。自然災害による損耗の例としては、地震等により窓ガラスが割れた場合などが挙げられます。

このような費用は賃料の中に含ませて回収します。

2.借り主が負担すべき原状回復費用

「借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など借り主の責任によって生じた損耗やキズなど」、「故障や不具合を放置したり、手入れを怠ったことが原因で、発生・拡大した損耗やキズ」の回復費用は借り主の負担となります。

例えば、通常の使用方法を超えた使用をしたことによりハウスクリーニングを要するような場合は、借り主負担になることがあります。

また、クロス交換についても、借り主が手入れを怠っていて、タバコのヤニで変色や臭いが付着していたり、カビやシミをつけてしまった場合なども借り主負担となることがあります。

3.通常損耗補修特約について

賃貸借契約時において、通常損耗に関する修繕費用を借り主負担とする特約がされることがあります。この特約について有効にするためには、国土交通省のガイドラインにおいて次のような要件を公表しているため注意が必要です。

① 特約の必要性があり、かつ、暴利でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

② 借り主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること

③ 借り主が特約による義務負担の意思表示をしていること

なお、東京都においては、賃貸住宅紛争防止条例において、上記特約を設けた場合には賃貸借契約の媒介又は代理をする宅地建物取引主任者が契約段階で上記特約の内容について説明する義務を課しています。

 

次回は借り主が破産した場合の問題点について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/271

いつもありがとうございます。

オーナーチェンジがあった場合の敷金、滞納家賃

前回は、敷金の滞納家賃等への充当についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/254

今回は、賃貸借契約中に建物の所有者が変わった事で賃貸人に変動があった場合(オーナーチェンジ)に、預かっている敷金や滞納家賃はどのように承継するかについてご説明させていただきます。

建物の所有者が変わると、これまで所有者であった大家さん(旧賃貸人)の立場は、新しい所有者(新賃貸人)に承継されます。

そして、敷金、滞納家賃については次のような取り扱いをする必要があります。

 旧賃貸人に差し入れられていた敷金は、旧賃貸人に対する借り主の債務があればその債務に充当され、その残額が新賃貸人に承継されます。

② 旧賃貸人が借り主に対して有する滞納家賃債権は、新賃貸人に対して当然には承継しませんので、承継するのであれば債権譲渡の手続が必要になります。

 

1.承継する敷金について

借り主が旧賃貸人に差し入れていた敷金が、オーナーチェンジがあったときに借り主の債務と充当されるのは、旧賃貸人と借り主との間の賃貸借契約が終了し、その清算の過程の中で借り主の債務(滞納家賃等)を担保(敷金)により回収させる必要があるためです。

充当後の敷金残額が新賃貸人に引き継がれるのは、敷金が賃貸人のための担保として密接に結びつくものであることから、賃貸人の地位の移転とともに担保も移転を伴うべきであるためです。

そのため、賃貸借契約終了後明け渡し前に、オーナーチェンジがあった場合には、新賃貸人のための担保としての実益がないので、旧賃貸人と新賃貸人の合意のみでは敷金が承継しませんので注意が必要です。

 

2.旧賃貸人の滞納家賃債権について

オーナーチェンジがあると、旧賃貸人と借り主の賃貸借契約は終了します。旧賃貸人と借り主との関係で生じた債権債務関係は賃貸借契約終了後も継続するため、旧賃貸人は所有者でなくなったとしても滞納家賃請求をすることができます。

未払家賃債権は敷金とは異なり、新所有者に承継されないので、承継するには債権譲渡手続を行う必要が出てきます。

 

Q:借り主側に変動があった場合(賃借人の変更)があった場合、旧賃借人が差し入れていた敷金はどうなりますか?

A:旧賃借人が差し入れていた敷金は新賃借人に承継されません。

賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転するには大家さんの同意が必要になります。大家さんが同意した結果、賃借権の移転があると旧賃借人との賃貸借契約は終了します。そしてその清算の中で敷金に関しても債務に充当したり、返還したりすることになります。

承継するには、旧賃借人の債務を充当した敷金残額について、旧賃借人と新賃借人との間で債権譲渡手続をするか、旧賃借人が先に交付している敷金をもって、新賃借人の賃貸借契約における担保とする合意をする必要があります。

次回は、原状回復費用についてご説明させていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/266

 

いつもありがとうございます。

敷金の滞納家賃等への充当について

前回は、滞納家賃の時効について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/247

今回は敷金の滞納家賃等への充当について取り上げさせていただきます。

敷金とは、不動産の賃貸借契約において、借り主の債務を担保するために大家さんに交付される金銭のことです。

そのため、借り主に家賃の滞納があるときは、この敷金を充当することができます

一方で、借り主に賃貸借契約から生じた債務がない場合には、賃貸借契約が終了し建物を明け渡したときにはその敷金を返還しなければなりません

この敷金の充当と敷金の返還についての注意点を説明させていただきます。

 

1.敷金の充当について

(1)充当できる借り主の債務について

滞納家賃、賃料相当損害金、保管義務違反による修理費用、原状回復費用などと充当することができます。

敷金は、原状回復費用への充当で問題になるケースが多いです。原状回復費用の問題については別の記事にてあらためて取り上げさせていただきます。

(2)充当の時期

①賃貸借契約存続中の場合(主に滞納家賃債務への充当)

大家さんは、賃貸借契約中に家賃の滞納があれば、契約が終了前であっても充当することができます

一方、借り主からは、滞納家賃と敷金を充当することを主張することはできません

(大判昭和5.3.10)

もっとも、大家さんとしては、充当しなければならないわけではないので、滞納家賃から敷金を控除しないで催告することも可能です(最判45・9・18)

②賃貸借契約終了時の場合

賃貸借契約終了後、建物の明け渡し完了の時までに生じた債務に当然に充当されます。

(3)充当するための意思表示の要否

敷金は借り主の債務に当然に充当されるため、大家さんから借り主に対して、「滞納家賃と敷金を相殺する。」といったような意思表示をする必要がありません

後述しますが、借り主の敷金返還請求権は、建物明け渡しによって発生する権利なので、その時点において借り主に債務があれば、敷金はその金額の範囲で当然に充当されて消滅するため、借り主から相殺の主張がされる余地がないことになります。

 

2.敷金の返還について

(1)返還時期について

大家さんは、賃貸借契約が終了して借り主が建物を明け渡したときに、滞納家賃等の債務一切を敷金から控除した残額について借り主に返還しなければなりません。(最判昭和48・2・2)

そのため、建物明け渡し時が借り主の敷金返還請求権の発生時期になります

このことから、借り主が、「敷金を返さない限り建物を明け渡さない。」という主張をすることはできないということになり、借り主としては敷金返還請求をしたいのであれば先に建物を明け渡す必要が出てきます。

(2)敷金返還請求にかかる利息・損害金

敷金返還債務については、特約の無い限り利息は付きません。

敷金返還債務の履行遅滞の起算日は、期限の到来したことを知った日である「建物明け渡しのあった日」となりその翌日から損害金が発生することになることが多いです。

Q:賃貸借契約終了前に借り主の債権者から敷金について差押がされました。借り主は家賃の滞納があるのですが預かっている敷金と充当してもよいのでしょうか?

A:充当することは可能です。

差押の対象となっている敷金は建物明け渡し時に発生する返還請求権であるため、借り主の全ての債務を控除した残額が差押の対象となります。

したがって、借り主の債権者より先に敷金から滞納家賃債権を回収することができます。

 

次回は、オーナーチェンジがあった場合の敷金、滞納家賃について取り上げさせていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/261

いつもありがとうございます。