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借地契約において地代を滞納された場合

前回はマンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/340

今回は、賃貸人が土地を賃借し、賃借人がその借地上に建物を建てている場合に、地代の滞納があって借地の賃貸借契約を解除して、建物を収去し土地を明け渡しを求める場合(建物収去土地明け渡し請求)について取り上げさせていただきたいと思います。

(事案)

賃貸人Aは賃借人Bに対し、賃借人Bの建物所有を目的として、賃貸期間を30年、地代を月額5万円として賃貸借契約を締結した。

その後、賃借人Bは、借地上に住宅用建物を建築し、その建物をCに賃借した。

賃貸借契約から約2年後、賃借人Bの賃貸人Aに対する地代の支払いが滞るようになり、滞納額は1年分以上となった。

そのため、賃貸人Aは賃借人Bとの賃貸借契約を解除して、土地を明け渡してもらいたいと考えている。

このような場合、賃貸人Aは誰にどのような手続をしたらよいか?

(解説)

基本的には、賃料不払いによる建物明け渡しの例に準じて手続を行います。

(参考)賃料不払いによる建物明け渡しについて

https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/137

ただし、建物収去土地明け渡し請求の場合は、次の点に注意が必要です。

1.訴状の請求の趣旨

「別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」とするのではなく、「別紙物件目録記載の建物を収去して、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」と記載することになります。

このようにするのは、土地明け渡しを命ずる判決では、建物の収去執行をすることができないためです。

2.被告について

今回の事案の場合、被告はBとCになります。

そして、賃借人Bには建物収去土地明け渡し請求を行い、建物賃借人Cには建物退去土地明け渡し請求になります。

そして、賃貸人Aと建物賃借人Cとの間では、契約関係はないので、建物賃借人Cに対しては、賃借人Bの場合と異なり、賃貸借契約の解除による賃貸借契約の終了を理由とするのではなく、賃貸人Aがその土地の所有者であり、建物賃借人Cが何ら権原なくその土地を占有していることを理由に建物退去土地明け渡し請求を行っていきます

3.建物賃貸借の終了時期について

賃借人Bとの間で敷地についての賃貸借契約が解除されたからといって、直ちにBC間の建物賃貸借が終了するわけではありません。賃貸人Aと賃借人Bとの間で土地の明け渡し義務が確定されるなど、建物の使用収益が現実に妨げられる事情が客観的に明らかになり、又は建物賃借人Cの現実の明け渡しが余儀なくされたときにBC間の建物賃貸借契約は履行不能により終了することになります。

 

Q:土地の賃貸借契約が終了した場合に、建物賃借人Cに対して賃料相当損害金の請求をすることができますか?

A:必ず請求できるとは限りません。

建物賃借人Cに賃料相当損害金を請求するには、賃貸人Aにとって、建物賃借人Cが土地上に占有を続けるため、その土地を使用収益できないという事情が必要です。例えば、賃貸人Aが建物収去土地明け渡しをしようとしているにも関わらず、建物賃借人Cが故意に退去しないなどの事情です。

また、建物賃借人Cには土地全体の地代ではなく、建物敷地部分の土地の地代を請求することになります。

 

次回は無断増改築された物置は誰の物?について取り上げさせていただきたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/354

 

いつもありがとうございます。

マンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について

前回は、マンション管理費の滞納が始まったら?ということについて取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/335

今回は、マンションの一室の入居者(区分所有者または賃借人)が、他の区分所有者の生活に迷惑をかけるようなことをしている場合にどのようなことをすることができるか?について取り上げたいと思います。

対応方法としては、

1.迷惑行為の停止、結果の除去、迷惑行為を予防するための必要措置を求める訴え

2.入居者の専有部分の使用禁止請求を求める訴え

3.当該区分建物の競売、賃貸借契約の解除、専有部分の引き渡しを求める訴え

(解説)

1.迷惑行為停止請求、結果除去請求、予防措置請求について

これらの請求は、マンションの入居者が、建物の保存に有害な行為、共同の利益に反する行為をしたり、または、そのような行為をするおそれがある場合において、管理組合の集会の決議により行うことができます。

2.専有部分の使用禁止請求について

この請求は、入居者の共同生活上の障害が著しく、上記1の停止請求等では、その障害を除去して共用部分の利用の確保そのための区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合において、管理組合の集会の4分の3以上の賛成により決議された場合に行うことができます。

3.区分建物の競売請求、賃貸借契約の解除及び占有部分の引き渡し請求について

この請求は、入居者の共同生活上の障害が著しく、上記1の停止請求等のみならず、他の方法をもってしても、その障害を除去して共用部分の利用の確保そのための区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合において、管理組合の集会の4分の3以上の賛成により決議された場合に行うことができます。

4.共同の利益に反する行為とは?

マンションは、専有部分と共用部分に区別されます。専有部分は入居者が自由に利用することができますが、建物管理上(1つの建物に何世帯もの入居者が生活していることなど)の理由から一定の制約があります。

共用部分は、区分所有者全員が共同して利用する部分ですので、一部の区分所有者の自由な利用は認められません。各部屋のバルコニー部分については専用使用権が認められているものの、例えば、緊急避難路としての共用性もあるため、同部分は共用部分となります。

そのため、

① 他の区分所有者の専有部分の利用を妨害する行為(例えば、壁を破壊したりして、自己の専有部分を広げたりする行為)

② 共用部分の独占利用(例えば、共用部分に物置を設置して、避難路を塞ぐといった行為)

③ 他の区分所有者が不安感・恐怖感を覚えるような行為(例えば、管理組合規約で禁止されているような、反社会的勢力の関係者との間の賃貸借契約を締結するなど)

④ その他、一般の相隣関係問題(騒音、振動、ペット飼育禁止特約の違反行為など)

などが、共同の利益に反する行為ということができます。

マンションは、他の区分所有者との共同生活との関係を無視して利用することはできないので、お互いに譲歩し合って快適な住環境に努めることが必要になってきますので、このようなことを発見したら、問題が大事になる前に、管理組合を通じて対処するようにしていった方がよいかと思います。

 

Q:区分所有者がマンションの管理費を長期間滞納している場合に、専有部分の使用禁止や区分所有建物の競売を行うことはできますか?

A:管理費の長期間の滞納は、「共同の利益に反する行為」であり、かつ、「その障害の程度が著しいもの」ということができますが、「他の方法によっては障害を除去することができないこと」という条件を満たすために、他の債権回収の方法でも回収が困難であることを証明しない限り使用禁止請求や、競売請求はできないことが予想されます。

 

次回は、借地契約において地代を滞納された場合について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/348

 

いつもありがとうございます。

マンション管理費の滞納が始まったら

前回は、連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求できる?ということについて取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/330

大家さんの中には、マンションの管理組合の理事長をなされている方もいらっしゃいます。そういった方からマンション管理費の滞納問題についての問い合わせがされることがありますので、マンション管理費について一度ご説明させていただきたいと思います。

1.マンション管理費の種類について

一般的にマンションの管理にかかる費用としては次の4種類が主な費用です。

①管理費(共用部分、共用施設及び施設等の維持管理のための費用)

②修繕積立金(大修繕、環境・機能の増進のための積み立て。管理組合の集会で決定)

③立て替えた専有部分の水道料金、光熱費(管理組合が立て替えて支払う旨の規約がある場合)

④駐車場代(駐車場代を徴収する規約がある場合)

 

2.管理費等を滞納した場合の対応

1で挙げた管理費等は、先取特権(法定担保物権・一般の債権より優先して弁済を受けられる権利)を有していますから、区分所有建物の所有者がその建物を賃貸し、賃借人から賃料を受け取っているような場合は、訴訟手続をすることなく、その賃料について差押手続をすることができます。

区分所有建物を賃貸に出しているわけではなく、区分所有者が居住して利用している場合には、区分所有者に対して、内容証明郵便等で催告をして、それでも応じなければ、訴訟や支払督促等の法的手段をとっていくことになります。この点は、賃貸借契約における滞納家賃を入居者や連帯保証人に請求する場合と同様です。

そして、その手続の中でなされた判決、和解、支払督促等を債務名義として、区分所有者の財産について強制執行手続を進めることになります。

 

3.マンション管理費の時効は何年?

民法169条の定期給付債権となり、毎月の支払期から5年で時効になります。

滞納家賃と同様にマンション管理費についても、各月ごとに起算点が異なりますので、時効期間満了日は別々になります。

また、マンション管理費の時効を中断することについても、滞納賃料の時効の中断の場合と同様です。

(参考)滞納賃料の時効について→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/247

 

次回は、マンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/340

 

いつもありがとうございます。

連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求できる?

前回は、契約後に賃料を増額することができる?ということについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tinryouzougaku/162

今回は、賃貸借契約の借り主が夫で、妻がその連帯保証人である場合に、その後その夫婦が離婚したことをもって連帯保証人に対し借り主の滞納賃料を請求することができるか?についてご説明させていただきます。

結論としては、入居者が離婚して、連帯保証人である妻が別居することになったとしても、その連帯保証人に入居者の滞納賃料を請求することができます。

(解説)

1.連帯保証契約の拘束力

連帯保証人は、大家さんと連帯保証人の間で保証契約を締結したものなので、契約者と連帯保証人が離婚したとしても、連帯保証人の地位はそのままです。つまり、借り主と連帯保証人の関係が契約当時と変わったとしても、そのことをもって保証契約には影響を与えません。

そのため、連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求することができます。

これは滞納賃料債務に限らず、一般の法律関係全般に言えることで、例えば、お金の貸し借りの契約(消費貸借契約)であっても、借り主が借金を返済することができなくなった場合に、離婚した元妻が連帯保証人であれば、元妻に請求することができます。

2.借り主が破産して免責を受けた場合に、元妻の連帯保証人に対して滞納賃料を請求することができるか?

この場合であっても、連帯保証人は連帯債務を免れることはできません。

破産手続(免責)により、借り主は滞納家賃を支払う責任は免れているだけで、滞納家賃債務自体は残っていますので、連帯保証人に滞納賃料債務を請求することは可能です。

3.元妻に請求する際に気をつけるポイント

離婚していることから、連帯保証人である元妻は元夫の債務を負担することに抵抗するかと思います。そのため、どうしようもなく入居者の滞納状況を受け入れているだけだと滞納賃料がかさみ、かえって連帯保証人に損失を与えかねません。

そのため、入居者との賃貸借契約を家賃滞納を理由に解除して賃貸借契約を終了させ、その連帯保証人に対する負担が重くならないように注意する必要があります。

以前、取り上げたこともあるのですが、連帯保証人に資力がある場合に、あえて入居者に建物明け渡し請求をせず、滞納賃料及び賃料相当損害金を増やして連帯保証人から回収しようとすると、信義誠実の原則に反して許されない場合がありますので、早急な手続を進める方がよいかと思います。

参考→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/228

次回は、マンション管理費の滞納が始まったらについて取り上げさせていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/335

 

いつもありがとうございます。

契約後に賃料を増額することは可能?

前回は近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/320

今回は、賃貸借契約後に予見することができないような状況が生じ、近隣との相場から契約当時の賃料額が相当ではなくなった場合に賃料を増額することができるか?ということについてご説明させていただきます。

1.賃料の増額請求はどのようなときに行うことができるのか?

賃貸借契約締結後に、その契約で定めた賃料が相当でなくなるような事情が発生しない限り、当初の賃貸借契約の内容に拘束されるため増額請求はすることができません。

この相当でなくなる事情の例としては、

① 固定資産税・都市計画税、維持修繕費の増加

② 周辺地域の利便性の向上などによる不動産の価格の上昇(経済事情の変動)

③ 近隣類似の不動産の賃料との比較

などが挙げられます。

また、このような客観的な事情に加え、貸し主と借り主の個人的な事情も考慮の要素となります。例えば、当初の契約が、借り主の窮状を見かねて相場より安い賃料で契約したことや借り主の営業が契約当時とは異なり軌道に乗っていて、低額な賃料で契約し続ける必要がなくなったことなどが挙げられます。

 

2.増額後の賃料はいつから請求するべきか?

賃料増額請求は、上記1の事情があることを前提に、借り主に対して賃料増額請求の意思表示(内容証明郵便等)を行う必要があります。

そのため、上記の事情が発生した当時に遡って請求することができるわけではなく、意思表示が到達してから賃料増額の効果が生じますので、内容証明郵便には「意思表示が到達した日の属する月の翌月1日から賃料を増額させる。」などと記載しておくことで、翌月分からの賃料は増額後の賃料を請求することになります。

 

3.借り主が賃料増額請求に応じない場合の手続の流れ

内容証明郵便等で、賃料増額請求の意思表示をした後、貸し主、借り主間で協議をすることになりますが、その協議で合意に至ることは多くはありません。

そのような場合は、次に宅地建物調停手続を行う必要があります。その調停手続を経ても合意に至らない場合には訴訟手続に進むことになります。原則的にこの訴訟を行うためには、いったん調停手続を経る必要があるのです。

 

Q:裁判手続において、賃料増額請求が認められた場合、差額の賃料額に利息をつけて請求することは可能ですか?

A:可能です。不足額に対して、意思表示が到達した後の賃料の支払期限から支払い済みまで1割の利息を請求することができます。

 

次回は、連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求することができる?について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/330

 

いつもありがとうございます。

賃貸経営+相続対策フェスタにご来場いただきありがとうございました。

平成26年10月18日に新宿NSビルにて行われましたオーナーズ・スタイル様主催の賃貸経営+相続対策フェスタでは当事務所のブースにたくさんのご来場をいただきありがとうございました。

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当事務所では、家賃滞納、立て替え等に伴う賃貸借契約の終了、原状回復請求、敷金返還請求対策、建物明け渡し、任意後見、相続、民事信託、サブリース契約の注意点等について多数ご相談を受けさせていただきました。

相談を受けてみて印象に残ったのが、民事信託制度を利用した相続対策の相談が多かったことでした。民事信託はあまり認知度は高くないのですが、自分の資産を自分の意思で血族となる二代目、三代目に渡って承継させ、相続を原因として姻族側に資産が承継されないようにすることができたり、残されるご家族の財産管理を信頼できる専門家に委ねることができます。

また、この制度は遺言や任意後見でカバーできない部分(例えば、矛盾抵触する新しい遺言の発見や、判断能力が低下してから、任意後見人の発効のための後見監督人選任までのタイムラグ)についても手当が可能です。その結果、残された家族間での遺産をめぐる紛争を事前に回避できたりするので非常に有益な制度と考えられます。一度ご検討されることをおすすめします。

不動産賃貸経営は、上記のような法律問題のほか、空室リスク対策、メンテナンス、入居者審査など様々な面で常に努力が必要で決して楽なビジネスではありません。それでも、良質な住環境を提供しようと努力するオーナーさん・大家さんには頭の下がる思いです。

今後ともオーナー様が抱えている様々なお悩みの解決の手助けになるアドバイスを行うように努めてまいります。

 

いつもありがとうございます。

近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応について

前回は、滞納家賃は契約者の配偶者に請求できるのか?について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/315

今回は近隣の入居者に迷惑をかける入居者への対応について取り上げたいと思います。

1.迷惑をかける入居者への注意について

入居者の中には、共用部分の通路に通行の妨げとなるような私物を置いたり、騒音を出して風紀を乱すなどの近隣の迷惑となるような方もいらっしゃいます。そのような場合、大家さんは迷惑を被っている入居者から、「やめるよう注意してほしい。」と頼まれることがあります。

大家さんには入居者に安心して居住できるような状態で建物を使用収益させる義務がありますので、迷惑をかける入居者に対して注意しなければなりません。

2.特約違反による解除は可能か?

契約書の中には、「テレビ、ステレオ等を大音量で流し、近隣に迷惑をかけるような行為をしてはならない。これに違反した場合は賃貸人は契約を解除することができる。」とか、「庭や物置などを近隣の迷惑をかけないように使用する。」といった特約を設けることが多いようです。

しかし、このような特約を踏まえて賃貸借契約を締結したとしても、その特約に違反したからというだけでは解除することができません。その迷惑行為の結果、信頼関係が破壊されたといえるほどの事情が生じた場合に賃貸借契約を解除することができます。なお、そのような信頼関係が破壊されたという事情があるなら特約がなくても解除することも可能です。

3.騒音の程度について

アパート等で共同生活をしていれば、一定の生活音は発生するのはやむを得ないことかと思われます。そのため、入居者は一定の生活音は受忍すべきであって、お互いに迷惑をかけないようにする配慮が必要です。

そして、この生活音が受忍すべき限度を超えたとき(例えば、夜間に長時間大音量でステレオを流すなど)に特約違反行為(騒音)となります。特約違反行為(騒音)は、やむを得ない生活音か?、音を出す時間帯は昼か夜か?音量は一般的に大音量と言えるものかどうか?などといった事情によって判断することになります。

入居者がそのような特約違反行為(騒音)となる生活音を出しているため、大家さんがやめるよう注意してもなお続けるような場合は信頼関係が破壊されているとして賃貸借契約の解除が有効になると考えられます。

次回は、契約後に賃料を増額することは可能?ということについて取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tinryouzougaku/162

 

いつもありがとうございます。

滞納家賃は契約者の配偶者に請求できるのか?

前回は、借り主が行方不明になった場合の対応方法について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/310

今回は、滞納家賃を契約者(入居者)の配偶者に請求できるのか?ということについてご説明させていただきます。

(事例)

入居者が、家族(妻及び子)と住むためにアパートの一室を賃借しました。入居者はごく普通の会社員であり、連帯保証人は入居者の父親です。

入居者は入居後3年を過ぎた頃から体調を崩して入院し、4か月前から家賃を滞納するようになりました。連帯保証人である入居者の父親も年金生活で滞納家賃をまとめて払えるような資力はほとんどありません。

一方、入居者の妻は仕事をしており収入がある状況です。

入居者の妻に対して、「入居者に滞納家賃を払ってほしいと伝えてほしい。」と伝えても、「私は契約者では無いのでよく分らない。夫には滞納家賃を払うよう催促があったことを伝えるけど、入院中なので今は払えないと思いますよ。退院したらこちらから連絡するように話しておきます。」と回答されてしまいました。

(結論)

家賃債務が、その夫婦の日常家事債務の範囲内に属する債務ということができれば、その債務は連帯債務となり、連帯保証人ではない契約者(入居者)の配偶者にも請求することができる可能性があります。

(解説)

1.夫婦の日常家事債務が連帯債務になるとは?

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負います(民法761条)。

これは、日常の家事取引は、実質的には夫婦共同生活体のためにされると考えられるのが通常であり、第三者である債権者を保護するために設けられた規定です。

2.どのような行為が、日常の家事に関する法律行為といえるのか?

日常の家事に関する法律行為とは、一般的には、夫婦が共同生活を営む上において通常必要とされる行為を指しますが、具体的には、夫婦の社会的地位・職業・資産・収入などの夫婦間の内部的事情によって異なるので、その夫婦ごとによって個別的に決められます。

さらに、そのような内部的事情のほかにも、客観的な行為の種類や性質も考慮する必要があります。例えば、多額の借金をしたり、不動産を売買することなどは一般的には日常の家事に関する法律行為ということはできないとされています。

本件事例の場合は、賃貸借契約という法律行為をしたのは入居者ではありますが、家族が同居するために賃借していることや、一般的な経済状態である夫婦であることから、賃料債務が日常家事債務の範囲内に属すると認められる可能性がありますので、認められる場合には入居者の妻にも連帯債務として請求することができます。

 

次回は近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応についてご説明させていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/320

 

いつもありがとうございます。

借り主が行方不明になった場合はどうしたらいい?

前回は後継ぎ遺贈と受益者連続型信託についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/minnjishintaku/306

今回は、借り主が行方不明になった場合の今後の対応について取り上げたいと思います。

家賃の滞納が続いているため、入居者に連絡してもつながらず、どういう状況になっているのか確認するために入居者の借りている物件に行ったところ、郵便物が溜まっていたり、住んでいる様子がないということの相談をよく受けます。

このような場合、まず、連帯保証人や入居者の家族に連絡し、入居者と連絡をとってもらって入居者と連絡がつくようであれば、今後の賃貸借契約を終了させる方向での話し合いをします

連帯保証人や家族の方を通じても入居者と連絡がつかないような場合には、裁判を起こし、訴訟手続の中で賃貸借契約を解除して、強制執行手続により建物を明け渡すように進めることになります

(解説)

1.連帯保証人や家族に連絡して、入居者に連絡を取ってもらうことについて

入居者が建物に住んでいる様子がないといっても、長期間の旅行に行っていたり、あるいは何らかの事故に巻き込まれたなどの事情で家を空けていることもあります。そのため、まず、入居者と関係のある方に連絡をとって、入居者の現状について確認することになります。

連帯保証人には、滞納賃料を請求することができますが、連帯保証人ではないご家族の方には滞納賃料の請求はできないので対応には十分気をつけてください。

入居者と連絡がつくようでしたら、事情を確認して滞納賃料の支払いや今後の賃貸借契約を継続するのか、それとも終了して明け渡す方向で進めるのかについて話し合いをします。

2.連帯保証人等を通じても入居者と連絡が取れない場合

賃料不払いにより信頼関係が破壊されたとして、建物明け渡し請求の訴訟手続をします。

事前に滞納賃料支払いの催告や契約解除についての意思表示を内容証明郵便によってすることができないので、訴状の中に「訴状の送達をもって解除する。」という記載が必要になります

そして、訴状の提出にあわせて、公示送達の申し立てをする必要があります。

公示送達とは、当事者の住所、居所その他送達をすべき場所がしれない場合に、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、裁判所の掲示板にそれらの書類を交付すべき旨を記載した書面を掲示して2週間を経過すると、それらの書類が送達されたとする制度です。

公示送達の申し立てをする場合には、入居者が住所地等に住んでいないことを証明するために、添付資料として入居者の所在調査報告書入居者の住民票が必要になります。

そして、訴訟手続を終えて勝訴判決がでた場合は、その判決に基づき強制執行手続をして建物明け渡しを進めることになります。

 

Q:入居者が行方不明の場合、状況確認のために室内に入ってもよいですか?

A:入ってはいけません。このようなことをしてしまうと後々損害賠償請求を受ける可能性もあります。

また、賃貸借契約の特約として「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに本件建物内に立ち入り適当な処置を取ることができる」といった条項を設けていたとしても、裁判例によるとそのような条項は公序良俗に反し無効としているものもありますので(東京地判平成18年5月30日)、その特約があることを根拠として入室することは避けた方がよいでしょう。

 

次回は、滞納家賃は契約者の配偶者にも請求できるのか?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/315

 

いつもありがとうございます。

後継ぎ遺贈とは?

前回は、サブリース契約の期間が満了した場合に、賃貸借契約を終了できるか?ということについて説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/301

今回は、後継ぎ遺贈、そして後継ぎ遺贈に代わる新しい資産承継の形として注目されている受益者連続型信託について取り上げたいと思います。

1.後継ぎ遺贈とは?

後継ぎ遺贈とは、例えば、遺言で「自分が亡くなった後は、自分の全財産を妻に遺贈する。その後、妻が亡くなった後は、妻が相続した自分の全財産は長男に遺贈する。」という内容のものです。

この後継ぎ遺贈を内容とする遺言は、いくつかの考え方がありますが、妻から子への遺贈が、妻の財産処分権を侵害するものとして問題があると考えられております。有効か無効かについて判断した裁判例はありませんが、無効とする考え方が有力のようです。

このような、夫から妻へ、妻から子へあるいは親から子へ、子から孫へといった資産承継は、遺贈によらなくとも次のような手順で民事信託を活用することで行うことができます。これを受益者連続型信託といいます。

2.受益者連続型信託の活用例

賃貸建物を所有する夫が、自分が亡くなった後はその建物を特定の相続人に相続させ、その建物から生じる賃料収入をその相続人のみが受け取れるようにしたい場合を例にします。

① 夫(委託者)が、信頼できる人(受託者)との間で、所有する賃貸建物を信託財産として財産管理を委託し、その賃貸建物から生じる賃料を、夫(受益者)に給付する内容の信託契約をします。

※ 委託者と受益者は同じ人、つまり夫になります。これにより夫は、信託契約後、自己が生存中は自己の賃貸建物から生じる利益(賃料)を自分で受け取ることができます。

② また、信託契約において、「夫が亡くなった後は、妻を第二次受益者とする。妻が亡くなった後は、子を第三次受益者とする。」という内容を定めておくことで、その賃貸建物から生じる賃料収入を特定の者に受け取れるようにすることができます。このことで実質的に後継ぎ遺贈と同様の資産承継を実現することができます。

※ 受益者連続型信託は契約時から30年経過した時点の受益者まで有効な受益者として扱われます。

このように受益者連続型信託を利用することで、相続により妻側への親族に自己の資産が流れることを防ぐことで紛争を未然に回避し、かつ、自己の意思で残される家族の生活保障など自ら望む資産承継を実現することができます。

次回は、借り主が行方不明になった場合はどうしたらいい?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/310

いつもありがとうございます。