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滞納家賃の時効について

前回は、動産執行の申し立てについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/243

借り主の家賃滞納が続いている場合に、その滞納状態を放置しておくと消滅時効にかかってしまい、滞納した家賃を請求することができなくなってしまいます。

この記事では、家賃の時効はいつから何年間なのか?時効を中断するためにはどうしたらよいのか?について取り上げていきたいと思います。

家賃の時効は、賃料支払時期から5年間です。

時効期間を中断させるためには、次の方法を採る必要があります。

① 訴訟、調停等を起こす。

② 差押あるいは仮差押の申し立てをする。

③ 承認(借り主に念書等で滞納家賃の支払い義務があることを認めてもらう。)

(解説)

1.時効期間について

(1)時効期間の開始時期(起算点)について

消滅時効は、権利を行使することについて、法律上の障害がなくなったときが起算点となります。

例えば、賃料の支払時期を「当月分を当月末日払い」と定めている場合などは、8月であれば8月31日24時00分までは期限という法律上の障害がついているので時効期間は開始していません。この場合は9月1日午前0時00分が到来することで時効期間が開始します。したがって、9月1日が時効の起算点となります(8月31日24時00分と9月1日午前0時00分は実質的には同じですが、厳密には違います。)。

「翌月分を当月末日払い」と定めているような場合は、8月分の家賃であれば、8月1日午前0時00分が起算点となります。

なお、賃貸借契約について特に賃料支払時期を明確に取り決めていなかった場合は、「当月分を当月末日払い」となることが法律で定められていますので、翌月1日が起算点になります。

(2)時効期間について

家賃は毎月定期的に発生しますので、通常の時効期間である10年間より短い5年間になります。

家賃は各月ごとに起算点が異なりますので、時効期間満了日は別々になります。

 

2.時効の中断について

時効を中断、つまりこれまで経過した時効期間をゼロに戻すためには、前述したとおり、

① 訴訟、調停等を起こす。

② 差押あるいは仮差押の申し立てをする。

③ 承認(借り主に念書等で滞納家賃の支払い義務があることを認めてもらう。)

という方法を採らないといけません。

家賃滞納者に、支払を督促するために内容証明郵便を送る大家さんがいらっしゃいますが、その督促だけでは時効は止まりませんその内容証明郵便が到達してから6か月以内に訴訟、調停等の申し立てをすることで、内容証明郵便が到着したときを起算点として時効の効力が生じます

そのため、内容証明郵便を出したからといって安心はできないのです。

 

Q:借り主に滞納している家賃の支払いを認めてもらうために念書を書いてもらうことを要求したのですが、書いてもらうことができません。ただし、滞納している家賃の一部を支払ってくれました。それでもまだ滞納家賃は残っています。この場合、残っている家賃については承認して時効期間は中断されたのでしょうか?

A:中断されたとは言いがたいです。

一度発生した一つの債権を時期をずらして分割して支払うのであれば、一部支払であっても全体について承認したものとして時効が中断されますが、家賃債権は毎月定期的に発生するものであることから、一部支払により先に発生している古い滞納家賃に充当されるだけでその余の滞納家賃については、承認による中断の効力が生じているとまでは言えません。

もっとも、借り主が全体の滞納家賃を認めた上で、一部支払をしたのであれば、残りの滞納家賃についても承認されたものとして時効が中断します。

Q:借り主が行方不明のため、保証人に滞納家賃を承認してもらいました。この場合、借り主に対する時効期間も中断しているのでしょうか?

A:借り主に対する時効は中断していません。

保証人が承認したのは滞納家賃の保証債務について承認したのであり、保証人は借り主の滞納家賃債務自体を承認することはできないことから借り主に対する時効は中断となっていません。

このまま、借り主に対する滞納家賃債務が消滅時効にかかってしまった場合、保証人が途中で保証債務について承認したとしても、主たる滞納家賃債務の消滅と同時に保証債務も消滅してしまうため保証人にも請求できなくなってしまいます。

このような場合は、訴訟手続に進むのがよいと考えられます。

 

次回は、敷金の滞納家賃への充当について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/254

いつもありがとうございます。

動産執行の申立について

前回は連帯保証人に対する請求の範囲について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/228

建物明け渡しの訴訟において、判決ないし和解で終了した場合に、滞納家賃や損害金などの金銭の支払いについての条項が記載されることがあります。

この金銭の支払条項に基づき、借り主から金銭を回収する方法として、給料ないし銀行預金などといった債権を差し押さえる方法がありますが、実際には仕事をしておらず収入がないため、家賃滞納に至ったケースが多いので債権差押の申立をしても回収できる可能性は低いと言えます。

債権差押の申立以外の方法として、借り主が借りていた建物内で所有していた動産を差し押さえて売却しその売却代金を、滞納家賃や損害金に充てるという動産執行の申立という方法があります。

今回は、この動産執行の申立について取り上げていきたいと思います。

結論から言うと、動産執行の申立は、物件内に滞納賃料・損害金に充てるだけの高価な動産がある場合にのみ申立をする実益があります

(解説)

1.動産執行の申立の時期

一般的には、賃料滞納を原因として賃貸借契約の解除を行い、建物明け渡しの訴訟で認容判決あるいは和解成立となった後に、建物明け渡しの強制執行の申立をするのと同時に動産執行の申立を差し押さえるべき物の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に申し立てることが多いです。費用は2万円から5万円ほどかかります。

このように同時に申し立てるのは、建物明け渡しの強制執行手続における明け渡しの催告期日に借り主の住所地に行く日に併せて、動産の差し押さえ続き(動産を処分できないようにする手続)をするためです。

2.動産執行の対象動産について

民事執行法131条においては、差押禁止動産を定めています。その一例を挙げると、衣服、寝具、台所用品、畳、建具、66万円までの現金、タンス、洗濯機、冷蔵庫、 電子レンジ、ラジオ、テレビ(通常のサイズのもの)、掃除機、エアコン、位牌などの動産は差し押さえて売却することはできません。

このような差押禁止動産は、建物明け渡しの強制執行手続の目的外動産として売却手続をすることになります。

そのため、動産執行の対象動産としては、マッサージ機、宝石、絵画、ピアノといった価値のある動産でなければなりません

3.差押・売却の方法

動産を差し押さえると、執行官はその動産に「差押物件封印票」により封印したり、「差押物件標目票」を作成して管理します。

差し押さえられた動産は、基本的には債務者である借り主が建物の中で保管することが多いですが、大家さんや倉庫業者などの第三者が保管することも可能です。倉庫業者の費用は大家さん負担になります。

差押後の動産の売却方法には競り売りの方法と入札の方法があります。一般的には、借り主の居室内を売却場として、競り売りの方法で大家さんが買い受けることが多いです。

差押動産の価額は執行官の裁量によってなされますが、市場価格より安い価格で評価されます。

得られた売却代金は大家さんの滞納家賃・損害金に充てられます。

4.まとめ

実際には、借り主が動産執行の対象となるような高価な動産を所有していることは稀ですので、申立をしても執行不能で終了することが多いので、費用対効果を考えて動産執行の申立を検討する必要があるでしょう。

 

Q:借り主が動産執行の対象となるような価値のある動産を所有していることは判明しているのですが、執行官に対する申立費用などで足が出てしまう場合はどうなりますか?

A:差押をすることができません。

このように申立費用を弁済すると剰余を生ずる見込みのないことを無剰余といいますが、この場合は手続を進めることでかえって大家さんの損失になるため、差押をすることが許されないのです。

 

Q:賃貸物件である建物の玄関の外に出ている借り主の動産を差し押さえる場合はどのようにしたらよいですか?

A:動産執行の申立書において「執行の場所」欄に、玄関脇の場所を加えるのを忘れないでください。

 

次回は滞納家賃の時効について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/247

いつもありがとうございます。

連帯保証人に対する請求の範囲

前回は、連帯保証人に対する大家さんの対応についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/157

今回は、連帯保証人に請求できる借り主の債務の範囲について取り上げていきます。

賃貸借契約書に、「連帯保証人は、借り主と連帯して、本契約から生じる借り主の債務を負担するものとする。」との条項が書いてあることから、大家さんとしては借り主に対する債務であれば何でも連帯保証人に請求してよいと考えることがあるかと思います。

しかし、その性質上、連帯保証人に請求できないものもありますので、この記事では連帯保証人に対する請求ができないものについて取り上げていきます。

連帯保証人に対して請求できないものとしては次の例が挙げられます。

1.建物明け渡し請求

2.借り主に対して明け渡しの強制執行手続をするのが容易な場合に、あえてそれをせず、増大させた賃料相当損害金請求

(解説)

1.大家さんが連帯保証人に請求することができるもの

連帯保証人に請求できるものの例としては次のものが挙げられます。

1.賃料請求

2.遅延損害金

3.賃料相当損害金請求

4.借り主が建物を壊したり、傷つけたりした事についての損害賠償請求

5.原状回復義務の履行請求

 

2.大家さんが連帯保証人に請求することができないもの

(1)建物明け渡し請求

建物の明け渡しは、建物を実際に使用している借り主だけが義務を負っているため、連帯保証人が代わりに明け渡すことはできません(大阪地判昭和51年3月12日)。

仮に契約書の中に、「借り主が建物内に残置した動産があるときはその処分、建物明け渡しに関する一切の権限を連帯保証人に委任する。」という条項があったとしても、その合意自体が問題になる可能性があります。この条項を根拠に、連帯保証人の承諾を得て借り主の残置動産を処分したり、建物明け渡しを実行してしまうと、借り主から損害賠償請求を受ける可能性があります。

(2)借り主に対して明け渡しの強制執行手続をするのが容易な場合に、あえてそれをせず、増大させた賃料相当損害金請求

連帯保証人は、基本的には、借り主の家賃滞納が長期間にわたり、滞納額が高額になったとしても借り主の債務について予期できる範囲内の債務として滞納家賃の支払い義務を免れることはできません。

しかし、連帯保証人としては、大家さんに滞納家賃を弁済した後は、借り主に対して代わりに払った滞納家賃額を請求することになります。そうであるなら、連帯保証人としては、滞納額が高額になる前に大家さんに早く借り主との間の賃貸借契約を終了してもらいたいと考えます(連帯保証人は賃貸借契約自体を終了させる権利がありません。)。

このような場合、連帯保証人は、借り主の滞納状況を知った時点で将来の保証債務に対する責任を負わない旨の意思表示(保証契約解除の意思表示)をすることで、連帯保証人の責任を免れる場合があります(大判昭和8年4月6日判決、東京地裁昭和51年7月16日判決)。

そのため、借り主に対して明け渡しの強制執行ができるのにもかかわらずそれをせず、賃料相当損害金を増大させた上で、連帯保証人に請求する場合には、信義誠実の原則に反して許されません。

 

次回は動産執行の申立について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/243

いつもありがとうございます。

連帯保証人に対する大家さんの対応

前回は、解約申し入れによる賃貸借契約の終了について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/152

今回は連帯保証人に対する大家さんの対応について取り上げていきます。

一般的に賃貸借契約を締結するときには、「連帯保証人は、借り主と連帯して、本契約から生じる借り主の債務を負担するものとする。」との条項が書いてあるかと思います。そして、その賃貸借契約書に大家さん、借り主、連帯保証人が署名押印することで賃貸借契約及び保証契約が成立します。

基本的に契約が成立した後に生じる賃料は借り主に請求をしますが、借り主がその賃料を支払わなかった場合、連帯保証人に請求することになります。

しかし、賃貸借契約の期間が満了し、契約が更新された場合には、連帯保証人に請求することができるのか?ということが問題になることがあります。

この記事では、どのタイミングで連帯保証人に請求すべきか?賃貸借契約更新後は連帯保証人との関係は維持されるのか?といった連帯保証人に対する大家さんの対応について説明させていただきます。

1.賃料滞納があった場合

借り主が賃料を滞納していることが発覚した場合、大家さんとしては次の流れで対応するのが良いでしょう。

(1)賃料滞納が発生してから1週間以内

電話などで借り主本人に繰り返し催促します。

(2)賃料滞納から1週間程度経過

連帯保証人に報告して、連帯保証人を通じて支払を催促します。

(3)賃料滞納から2週間程度経過

借り主に書面で催告したり、自宅に直接訪問して催告するようにします。

(4)賃料滞納から3週間経過した場合

連帯保証人に滞納家賃を請求します。

(5)賃料滞納から1か月経過した場合

借り主、連帯保証人に対して内容証明郵便を送付して請求します。

2.賃貸借契約更新後の連帯保証人について

賃貸借契約において定めた賃貸借期間が満了し、再度同じ条件で賃貸借契約を合意更新、あるいは法定更新した場合において、当初の原賃貸借契約における連帯保証人との関係について説明します。

合意更新の際に、改めて連帯保証人の意思確認をして、保証書などの書面を差し入れさせたり、連帯保証人の署名押印のある更新契約書を交わす場合には、その連帯保証人との関係は維持されるので特段問題はありません。

問題は、合意更新の際に連帯保証人の意思確認をしない場合法定更新の場合です。

(1)合意更新の際に連帯保証人の意思確認をしない場合

判例(最判平成9年11月13日)においては、「賃貸借の保証における当事者の通常の合理的意思からして、保証人が更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う。」として、合意更新後の滞納家賃について連帯保証人に支払義務があることを認めています。

(2)法定更新の場合

一般的に、賃貸借契約の期間が満了した後、賃貸人(大家さん)としては更新を拒絶することは難しいことから、連帯保証人としても賃貸借契約が継続することは予期すべき事であり、当初の契約において、「更新後の責任は負わない。」などの取り決めがない限り、連帯保証人は法定更新後の滞納家賃についても責任を負います(大判昭和8年4月6日)。

以上のことから、原則としては、連帯保証人は更新後の滞納家賃についても支払義務を負います。もっとも、借り主が家賃を滞納させている状態で契約を更新し、そのことを連帯保証人に伝えていなかったような場合は、連帯保証人に対する請求が信義則に反して許されないとされる場合もあるようです。

 

Q:連帯保証人に滞納家賃を請求したところ、「借り主にまず請求してください。」と言われましたが、借り主に請求してからでないと、連帯保証人に対して請求できないのでしょうか?

A:請求できます。

単なる保証契約であれば、保証人としては「借り主に請求してください(「催告の抗弁権」といいます。)」とか、「借り主は価値ある財産を持っているから、それを差し押さえて処分して、その代金を滞納家賃に充ててください(「検索の抗弁権」といいます。)」などと反論することができます。

しかし、連帯保証であるなら、そういった反論をすることはできないので、すぐに連帯保証人に請求することは可能です。

 

次回は、連帯保証人に対する請求の範囲について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/228

いつもありがとうございます。

解約申し入れによる賃貸借契約の終了

前回は特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/148

今回は解約の申し入れによる賃貸借契約の終了について取り上げていきます。

建物の賃貸借契約においては、賃貸借期間を定めることが一般的ですが、期間が1年未満であるとき、あるいは、法定更新(期間満了後も借り主が建物を使用収益する場合に、大家さんがこれを知りながら異議を述べない場合に、従前の契約と同一の条件(期間を除く。)で賃貸借契約が更新されたとするもの)されたときは、賃貸借期間を定めなかったものとされます。

このように、賃貸借契約が期間を定めていない状態になっている場合には、民法においては、大家さん、借り主ともにいつでも解約の申し入れをすることができるとなっていますが、特別法(借地借家法)により、大家さん側からの行う解約の申し入れには、

(1)解約の申し入れ後6か月の期間が経過すること

(2)解約の申し入れ時から6か月間経過する間に、解約申し入れについて正当な理由があること

が必要です。

特にこの(2)の解約の申し入れについて正当な理由があるかという点が一番のポイントです。

この記事においては、建物の賃貸借期間の定めがない場合において、解約申し入れにより賃貸借契約を終了させて、借り主に明け渡しを求める場合について説明します。

(解説)

1.正当な理由とは

解約の申し入れの際に必要となる正当な理由とは、期間満了を原因とする賃貸借契約の終了の場合と同様に、次の点がその判断材料になります。

(1)大家さん(賃貸人)が建物の使用を必要とする事情があるか

自己又は親族が居住するため、あるいは会社の事務所として利用するために建物を使用する必要があるといった事情が必要です。

この場合、その使用の目的も重要で、どうしてもその建物に住む必要がある、その建物で事業を行わないと生計が成り立たないなどの理由があると、さらに有力な事情となります。

一方で、借り主側においても、居住あるいは事業を行う必要性があり、さらに資力の問題、家族の健康状態の問題など、どうしてもその建物を利用する必要があると、大家さんの正当理由を妨げる事情となります。

(2)建物の賃貸借に関する従前の事情

大家さんと借り主の間のこれまでの賃貸借関係に関する事情です。権利金等の支払の有無、契約期間の長さ、賃料額の相当性、信頼関係の状況などが要素となります。

(3)建物の現況

建物が老朽化し、耐震性の問題で立て替えの必要性があるなどといった事情です。

(4)明け渡しの条件として立ち退き料を支払う、あるいは、別な建物に入居させる旨の申し出をしている

この点は、正当理由を補完する事情に過ぎないため、このことだけでは正当理由があるとは認定されません。

また、解約の申し入れ時に立ち退き料の支払いを提案しなければならないというわけではなく、裁判になってから提案するものであっても可能です。

提案する立ち退き料の金額は、事案ごとにケースバイケースです。借家権価額に権利金の有無、残存期間の賃料額、引越費用、住居補償・営業上の損失補償などの費用を負担することになり、金額としては高額になるケースが多いです。

これらを総合的に判断して、借り主が賃貸借契約を建物を利用し続けること以上に、大家さん側に明け渡す必要性があることを認めてもらわなければなりません。

 

2.解約申し入れ後の大家さんの対応

大家さんが借り主に建物から退去を求めることに正当な理由があり、かつ、解約を申し入れて6か月経過した場合であっても、借り主が建物の使用を継続し続けており、大家さんから借り主に対して遅滞なく異議を述べない場合は、賃貸借契約が法定更新されてしまいますので、6か月経過直後に速やかに異議を述べるようにしてください!

次回は、連帯保証人に対する大家さんの対応について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/157

いつもありがとうございます。

特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除

前回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/146

今回は、特約違反による賃貸借契約の解除、特にペット飼育禁止特約の条項がある場合に、その特約に違反して賃貸借契約を解除する場合について取り上げていきます。

一般的に建物の賃貸借契約を締結した場合、大家さんには次のような義務が課せられます。

・借り主に建物を使用収益させる義務

・建物を借り主に使用収益に必要な修繕をする義務

・借り主が、屋根のふき替えや塗り替えなど、本来大家さんが負担すべき費用を支出したときは、その費用額を返還する義務

一方、借り主は、次のような義務が課せられます。

・家賃支払義務

・建物の保管についての善良な管理者の注意義務

・賃貸借契約が終了した場合には、建物の返還義務(明け渡し)

・無断転貸・無断譲渡の禁止

そして、この基本的な賃貸借契約の内容に加えて、大家さんと借り主の間で特約を設けることがあります。「家賃の支払を何ヶ月分怠ったら、催告することなく、賃貸借契約を解除する。」という内容の無催告解除特約などがその例の一つになります。

実務上よくある特約としては、「賃借家屋内において、犬、猫等の動物類を飼育してはならない。これに違反した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除する。」というペット飼育禁止特約が挙げられます。そしてよく問題となるのが、ペット飼育禁止の特約を設けていたにもかかわらず、それを破って建物内でペットを飼っていた場合です。

この記事では、ペット飼育禁止の特約について借り主が守らなかった場合における賃貸借契約の解除の注意点について取り上げていきたいと思います。

 

1.そもそもペット飼育禁止特約は有効?

この特約が、借り主に不利な特約として、借地借家法30条に該当して無効となるのではないかという問題がありますが、裁判例においては、このペット飼育禁止特約は有効としています。

その理由としては、共同住宅においては、鳴き声、排泄物、におい、毛等により建物に損害を与えるおそれがあるほか、同一住宅の居住者に対し迷惑又は損害を与えるおそれがあるためです。

 

2.ペット飼育禁止特約違反の事実だけで賃貸借契約を解除することは可能?

裁判例においては、5年近く居室内に犬を飼っていたが、隣室等に注意を払って飼育し、特に苦情もでていなかったという事案においては特約違反の事実だけで解除を有効としています(東京地裁平成7年7月12日判決)

ただし、多くの裁判例は特約違反の事実のみならず、他の要素も踏まえて、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されていることを理由に解除を有効と認めていますので、他の解除原因と同様に、信頼関係が破壊されたという事情がある方が解除を有効なものと評価される可能性が高いということができます。

例えば、マンションの賃貸借契約において、特約として「犬猫等の家畜を飼育してはならない」と定めたにも関わらず、その特約に違反して猫を飼育していた場合においては、特約自体は、猫の飼育により傷・排泄物等で室内が不衛生となり、また、転居時に棄てられることで野良猫化し近隣の環境を悪化させることになること等を踏まえて有効としました。

さらに借り主が、その特約に違反して居室で猫を飼育し、マンション敷地内で野良猫に餌を与えていたことや、賃貸借契約書の特約部分を塗りつぶし、猫の飼育について承諾を得たかのような工作をしていたという事情も考慮して、信頼関係が破壊されているとして、解除を有効としています。(東京地裁昭和58年1月28日判決)

 

3.ペット飼育禁止特約を設けていなかった場合は、建物内でペットを飼っていたことを理由に解除することはできない?

ペット飼育禁止特約がない場合には、通常の飼育方法の範囲内なら飼育は許されていることになります。

そのため、その飼育方法により、建物が損害を被り、近隣住民にも迷惑をかけるなど、通常の飼育方法の範囲を超えてしまった場合は用法違反の要素も加味して信頼関係が破壊されているとして賃貸借契約を解除することができるということができます。

裁判例においても、ペット飼育禁止特約がない場合においても、用法違反、信頼関係破壊を理由に賃貸借契約の解除を有効と認めているものもあります。

 

次回は、解約申し入れによる賃貸借契約の終了について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/152

いつもありがとうございます。

無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除

前回は、無断増改築による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/144

今回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

賃貸借契約においては、原則、賃借物である不動産を無断で転貸(又貸し)、あるいは賃借権を無断で第三者に譲渡することはできません。そして、民法においては、無断転貸・無断譲渡が行われた場合には、賃貸借契約を解除することができると定めています。

ただし、無断転貸・無断譲渡があれば常に賃貸借契約を契約解除することができるかというと、そういうわけではありません。

「賃貸人(大家さん)の承諾がある場合」や、他の解除の原因と同様に、「借り主から、賃貸人(大家さん)に対する背信的行為と認めるに足りない事情(信頼関係が破壊されていない事情)が主張され、それが認められた場合」は解除することができません

この記事では、転貸あるいは賃借権の譲渡といえる場合はどのような場合か?無断転貸・無断譲渡を原因とする賃貸借契約の解除の際の注意点について説明します。

(解説)

1.そもそも転貸・譲渡に該当しない場合

転貸をしたといえるためには、転借人(又貸しを受けた者)が賃借人(借り主)から独立して不動産を使用収益することができる権限を与えられていることが必要です。不動産の引き渡しを受けていることはもちろんのこと、賃借人(借り主)の支配あるいは関与がない状態で不動産を利用していなければなりません。

そのため、賃借人(借り主)が、配偶者や子供といった家族を住まわせることは転貸になりません。

また、一時的に友人を同居させていた場合には、賃借人(借り主)から独立しておらず転貸に該当しないと評価されることが多いです。

 

2.無断転貸・無断譲渡についての承諾

転貸あるいは賃借権の譲渡について、借り主から事前あるいは事後に申し出があり、これに承諾した場合は有効になります。問題になるのが、そのような事実を認識していながら、黙認していた場合です。

例えば、賃貸人(大家さん)が無断転貸・無断譲渡を認識していながら、転借人あるいは譲受人に対して賃料の支払いを請求したという事実があると、黙示の承諾をしたと評価される可能性が高いので、無断転貸・無断譲渡の事実を認識した場合には、すぐに賃借人(借り主)に確認して、対応には気をつけないといけません。

 

3.背信的行為と認めるに足りない特段の事情

無断転貸・無断譲渡という事実があれば、それだけで借り主(賃借人)の大家さん(賃貸人)に対する賃貸借契約を継続するに堪えない背信的行為があったものとされるため、背信的行為と認めるに足りない特段の事情は、借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)において主張することになります

そのため、大家さん(賃貸人)としては、その借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)の主張に対する反論として、賃借人との信頼関係が破壊されていることを主張していくことになります。

例えば、店舗の借り主が個人事業主から法人化した場合に、形式的には不動産の使用者は変わっていますので、転貸あるいは賃借権の譲渡があったということはできます。しかし、借り主側としては、経営実態は変わっていないので、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があると主張してきます。この場合は、大家さん側としては、法人化によって、賃貸借契約を継続することができないといえるほどの信頼関係が破壊された事情(例えば、法人化に伴い会社の事業目的が変わった、事業主構成が大幅に変わり経営実態に大きな変更が生じたなど)を主張していかないといけません。

そういった主張を踏まえて、実質的に背信的行為があったかを評価し、解除が可能かどうかが判断されることになります。

 

次回は、特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/148

いつもありがとうございます。

無断増改築による賃貸借契約の解除

前回は、用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/142

今回は、無断増改築による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

借り主(賃借人)は、賃借物(土地・建物)を大家さん(賃貸人)に返還するまでは、善良な管理者の注意(他人の物を利用するという立場であることから要求される注意義務)をもってその物を保管しなければなりません。そのような注意義務が課されているにもかかわらず、無断で増改築をしたときは、賃貸借契約の債務不履行となり、賃貸借契約の解除の原因となる可能性があります。

一般的に無断増改築を原因として賃貸借契約を解除する場合、大家さん賃貸人)は相当の期間を定めて原状回復するように催告し、その期間を経過してもなお原状回復をしないときは、契約解除の意思表示(内容証明郵便による。)をします。

特に無断増改築による解除が問題となるのは、建物所有を目的とする借地契約において、増改築禁止の特約があるにも関わらず無断で増改築が行われた場合です。

このような特約自体は、合意による使用収益兼の制限であって借地借家法9条、借地法11条の契約条件に該当しないため有効としつつも、これにより土地の通常の利用が不当に拘束され、又は妨げられるなどの一定の条件の下においては、特約に基づく解除権の行使ができません。

この記事では、どのような場合に無断増改築を理由として契約を解除することができるのかということについて取り上げていきます。

その一般的な結論としては、用法遵守義務違反における解除の場合と同様に、無断増改築行為によって大家さん(賃貸人)と借り主(賃借人)の信頼関係が破壊されている場合に解除することができます。

(解説)

それでは、どのような場合に大家さんと借り主の信頼関係が破壊されていると認められるかについて、判例の具体的事案を挙げながら説明します。

 

1.居宅をアパートに改造するため増改築した場合

(事案)

建物所有を目的とする借地契約を締結した際に、建物を増改築するときは賃貸人の承諾を受けること及びこれに違反した場合には催告なしに解除することができる旨の特約(無断増改築禁止特約)を設けていた。賃借人はこの特約に反し、居宅(木造瓦葺2階建)の玄関部分を除く根太・柱を取り替え、2階を取り壊し、その2階に5室の小部屋を増築して、アパートにした。

土地の賃借人は、無断増改築を理由に契約解除の意思表示をした。

(結論)

裁判所は、この無断増改築禁止特約自体は有効とした上で、さらに、「増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、前期特約に基づき解除することは許されない。」しました。

本事案においては、増改築はしたものの住居用普通建物としては、居宅もアパートも同一であることを理由に、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないとして、解除は効力を生じないと判断しました。

2.居宅をバー店舗に改築した場合

(事案)

無断増改築禁止特約に違反し、借地上の居宅(15坪5合)中、9坪5合をバー店舗に改築した。

(結論)

賃借人の無断増改築行為を土地賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為として、賃貸借契約について解除をすることができると判断しました。

3.まとめ

判例は、単に無断増改築があっても、信頼関係破壊まで至っているとして賃貸借契約の解除を認めるケースは少ないため、無断増改築の事実のみならず、その増改築の程度、原状回復の可能性、その他の解除原因(用法違反等)の有無、賃貸借契約期間の経過等を踏まえて、全体的に信頼関係が破壊されていると認定される必要があるといえます。

特に建物所有を目的とする土地の賃貸借については、建物自体は賃借人の所有物であり、賃借人の所有物について賃借人が手を加えることは本来賃借人の自由なので、それを踏まえた上でも今後も賃貸借契約を継続することができない程度の賃借人の不信行為があると認められる必要があります。

 

次回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/146

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用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除

前回は家賃滞納による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/137

今回は、用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除について説明します。

借り主は、賃貸借契約または賃借物の性質によって定められた用法に従って、建物を利用しなければなりません。そのため、居宅として借りているのに別の目的のために利用している場合は用法遵守義務違反となり、賃貸借契約の解除の原因となる可能性があります。

用法遵守義務違反を原因として賃貸借契約を解除する場合、大家さんは相当の期間を定めて利用方法を改めるように催告し、その期間を経過してもなお改めないときは、契約解除の意思表示(内容証明郵便による。)をして建物明け渡し請求をします。

この記事では、どのような場合に用法遵守義務違反として契約を解除することができるのかということについて取り上げていきます。

まず、その一般的な結論としては、借り主の用法遵守義務違反行為により大家さんと借り主の信頼関係が破壊されている場合に解除することができます。

(解説)

それでは、どのような場合に大家さんと借り主の信頼関係が破壊されていると認められるかについて、判例を元に具体的事案を挙げながら説明します。

1.居住目的の一室を学習塾として使用した場合

(事案)

比較的少人数の家族が住居として使用することを予定していた建物において、契約後まもなく借り主がその建物の一部屋(6畳間)において学習塾を始めることとなった。その学習塾は、最大45名の生徒を月曜日から土曜日まで4名の教師で教えることを予定していたが、実際の生徒数は6名程度に過ぎなかった。また、借り主は、じゅうたんを敷いて建物が傷めないように配慮していた。

大家さんは、用法遵守義務違反を理由に学習塾開設から2か月で契約解除の通知を出した。

(結果)

当初予定していた内容の学習塾を経営していたとすれば、建物の利用形態が変わり建物を傷める程度も高くなるため、用法違反として評価されてもやむを得ないが、実際には生徒数は6名程度であったこと、借り主がじゅうたんを敷いて建物が傷めないように配慮していたことから、そのような利用形態ではそもそも用法違反とはいえないと判断しました。

また、大家さんは、学習塾開設の説明会の開催等に対する大家さんの中止要請に対する借り主の態度や合意解除交渉における借り主の不当要求があったことを理由に信頼関係が破壊されていると主張しましたが、借り主がそのような態度をとった原因は大家さん側にもあり、現在借り主が学習塾をやめて住居として使用していることなどの諸事情を踏まえて、信頼関係が破壊されていると認めらないと判断しました。

以上により、解除を有効と認めませんでした。

2.使用目的を飲食業として貸した賃貸ビルの店舗において、金融業を営んだ場合

(事案)

契約当初は、使用目的を「飲食業」としていたが、その後目的を「飲食業兼金融業」に変更したい旨の申し出があった。建物は既に飲食店から事務所に改装工事されており、さらに暴力団関係者も出入りして、借り主と一緒に会社組織として金融業を営むと聞かされていたことから大家さんは変更申し出に反対した。

その後、大家さんは、用法遵守義務違反及び信頼関係破壊を理由として契約解除の通知を出した。

(結果)

使用目的を無断で変えることにつき、「賃貸ビルの店舗の賃貸借契約においては、店舗の営業目的は、他の店舗賃借人の営業との関係や賃料の確保の点から見て、賃貸人にとって重要な事項と解されるから、業種指定の特約に明白に違反する営業を賃借人が行った場合は、特段の事情がある場合を除き債務不履行として解除事由に当たると解される」と判断し、また、大家さんが使用目的の変更申出について反対していたこと、暴力団関係者が関与していたことなどから信頼関係の破壊を認め、解除を有効として、建物の明け渡しの判決が言い渡されました。

3.まとめ

用法違反として賃貸借契約の解除をする場合には、単に用法違反をしたということにとどまらず、事案の全体(用法違反当時の状況、現在の状況など)を通して、用法違反の程度が重く、かつ、今後において賃貸借契約を継続することができない(信頼関係の破壊)と認められる程度の事情が必要になるということができます。

 

次回は、無断増改築による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/144

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家賃滞納による賃貸借契約の解除

前回は、賃貸借期間が満了した場合の建物明け渡しについて説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/92

今回は、賃貸借契約の解除について説明させていただきます。

そして、大家さんが借り主に対して、建物の明け渡しを求める場合に一番多い原因が、家賃滞納を理由に賃貸借契約を内容証明郵便などにより解除した場合になります。

一般的に契約の解除とは当事者の一方が、その一方のみの意思表示によって、契約の効力を当初にさかのぼって消滅させる制度です。しかし、賃貸借契約における解除は、当初にさかのぼらせると複雑になってしまうため、将来に向かって効力が生じます。

賃貸借契約における解除は次の場合に行うことができます。

1.賃料不払(家賃滞納)

2.用法遵守義務違反

3.無断増改築

4.無断転貸・無断譲渡

5.特約違反

6.信義則違反

この記事では、解除の原因として一番多い賃料不払(家賃滞納)の場合における解除について取り上げていきます。

(解説)

1.賃料不払(家賃滞納)

法律上の要件に当てはめると、借り主が家賃を支払わないことは賃貸借契約の債務不履行にあたり、大家さんが相当の期間を定めて賃料の支払いを催告したにもかかわらず、借り主が賃料の支払いをしないときは解除することができることになっています。

ただし、賃貸借契約は、大家さん(賃貸人)と借り主(賃借人)との間の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であることから、家賃滞納があることから相当期間を定めて催告した結果、支払がないので解除できるというものではなく、その家賃滞納が大家さんに対する信頼関係を破壊する不信行為と認められることが必要です。これを信頼関係破壊の法理といいます。

(1)何ヶ月分の家賃滞納があれば解除をすることができるのか?

これは特に決まりはないのですが、一般的には3か月以上の家賃滞納の事実があれば信頼関係は破壊されていると考えられています。

問題は、大家さんと借り主の間の信頼関係が破壊する程度の家賃滞納があると認められることの方が重要ですので3か月より短いからダメだとか、3か月以上の長期間にわたって家賃滞納があるから大丈夫だということは言えません。

(2)賃貸借契約時に無催告解除特約をしていた場合

無催告解除特約とは、借り主が賃料の支払いを1回でも怠ったときは、大家さんは催告を要しないで賃貸借契約を解除することができるとの特約が締結された場合です。

この場合に注意しなければならないことは、このような特約を設けているからといって、1回でも家賃滞納があれば催告することなく解除することができるというものではありません。

この場合においてもやはり、大家さんと借り主との間の信頼関係が破壊されていると認められるような事情がなければ、この特約に基づく契約解除は有効とはなりません。

(3)借り主が行方不明になり催告できない場合

借り主が行方不明になり、何ヶ月あるいは何年も家賃滞納が続いている場合は、大家さんと借り主の信頼関係を破壊し、賃貸借契約の継続を著しく困難にしたということができるため、そのような場合は催告をすることなく解除することができます。

この場合は、すぐに裁判所に訴訟を提起することになりますが、あわせて公示送達の申立をする必要があります。そして、その訴状の中に訴状の送達をもって契約を解除するという記載があれば、裁判所の掲示板に公示送達する旨の張り紙が掲示されてから2週間経過すれば、契約は解除したことになります。

(4)賃貸借契約を解除した後の建物明け渡し訴訟手続

訴状には次の事項が記載されている必要があります。

①当事者間で建物について賃貸借契約を締結したこと

②賃貸借契約に基づき建物を引き渡したこと

③一定期間(数ヶ月間)の期間が経過したこと

④賃料支払時期が経過したこと

⑤相当の期間を定めて滞納家賃の支払いを催告したこと

⑥催告後相当期間が経過したこと

⑦催告後の相当期間経過後に賃貸借契約を解除するとの意思表示をしたこと

 

Q:滞納家賃の支払いの催告の際に、相当期間を定めるのを忘れました。相当期間を定めてもう一度催告しなければなりませんか?

A:再度催告をする必要はありません。

ただし、催告をしてから相当期間が経過していることが必要になります。

相当期間は1週間から2週間程度で足ります。期間計算を明確にするためにも催告は内容証明郵便によって行うのがよいでしょう。

 

Q:支払の催告をして、相当期間が経過した後に、改めて解除の意思表示を記載し内容証明郵便を送る必要がありますか?

A:催告の際に、「平成○○年○月から平成○○年○○月までの滞納家賃○○万円を本書面到達後、1週間以内にお支払いください。同日までにお支払いがない場合には、本催告書をもって、家賃滞納を理由に、本件賃貸借契約を解除します。」と記載しておけば、改めて送る必要はありません。

 

次回は用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/142

 

いつもありがとうございます。