合意書・誓約書・念書等を公文書とするには

前回は、調停手続による滞納家賃の回収について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/405

今回は、滞納家賃についてどのように支払っていくかについて合意ができた場合に、大家さん、入居者、連帯保証人との間で交わす、合意書・誓約書・念書等の書類を公文書とする方法についてご説明させていただきます。

これらの書類を公文書とする方法は次の方法が挙げられます。

1.訴え提起前の和解手続

2.公正証書

(解説)

1.合意書・誓約書・念書等を公文書とするメリット

以前、滞納家賃の支払について、話し合いがまとまったら合意書・誓約書・念書等の書面で残しておくことの必要性について取り上げたことがあります。

合意書・念書・誓約書の必要性の記事→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/278

これらの書類は、訴訟において強い証拠にはなりますが、これらの書類を元に強制執行手続をすることはできません。

そのため、これらの書類を最初から債務名義(強制執行をするために必要な公文書)としておけば、合意内容をまもってもらえなかったときに、訴訟手続を省略して強制執行手続に進むことができます。

2.訴え提起前の和解手続について

この手続は、相手方(入居者)の住所地を管轄する簡易裁判所に、訴え提起前の和解手続の申立書を提出して、裁判官の面前で当事者間の合意を確認し、その合意内容を公文書である和解調書とする手続です。

連帯保証人も交えて、合意ができるようなときは、入居者の住所のみならず、連帯保証人の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てをすることができます。

申し立てをした後は、和解期日が指定されるのでその日に当事者全員が出席する必要があります。

この手続のメリットは、とにかく費用が安いことです。申立手数料2000円と数千円程度の郵便切手と不動産登記事項証明書程度の実費で手続ができます。

将来的に強制執行手続を踏むことができるような内容にしておく必要がありますので、申し立て前に一度専門家に相談した方がよいでしょう。

3.公正証書

この手続は、合意書・誓約書・念書等の原案が作成できたら、公証人に連絡をとり内容を詰め、当事者全員が公証役場に赴き、本人確認手続の上で、その合意書の内容を元に公証人に作成していただく手続です。

費用もさほど高くないことや、裁判所に行かずに行える手続なので利用しやすい手続かと思われます。

費用について→http://www.koshonin.gr.jp/hi.html

ただし、公正証書により合意書・誓約書・念書等を債務名義とする場合には、

・金銭の支払いに関しては、公正証書の中に「もし債務を履行しなかったときは強制執行を受けても異議のないことを承諾する」などという執行受諾文言の記載が必要である

・建物明け渡しについては、公正証書では強制執行を行うことができない

ため、ご注意ください。公正証書とする場合においても、一度事前に専門家に相談してからにすると良いでしょう。

次回は、賃料相当損害金は賃料の2倍の額を請求できるか?ということについて取り上げていきたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/427

 

いつもありがとうございます。