家賃滞納が発生した場合の対応について

前回は建物明け渡しの強制執行手続の準備について取り上げました。

その記事→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/36

大家さんは、借り主が家賃の支払いが遅れた場合に、速やかに家賃の支払いを催促することが多いと思います。

この記事では、家賃の滞納について催促する場合に大家さんが注意すべき事について取り上げます。

催促を行う場合に注意すべき行為の一例を挙げると、

・鍵の無断交換、荷物の無断搬出をしないこと

・催促の際に暴力的な態度、乱暴な言葉を使わないこと

・早朝や深夜などの時間帯に催促しないこと

・張り紙、立て看板等をたてて催促しないこと

・不必要に勤務先や保証人ではない親族へ催促しないこと

・多人数で、借り主や保証人の家に押しかけないこと

などです。

(解説)

1.鍵の無断交換、荷物の無断搬出をしないこと

日本の法律においては、権利者の自力救済を認めていません。仮に自力救済をしてしまった場合、その行為は法律に反する行為になってしまうため様々なペナルティを課せられることになってしまいます。

自分の所有する建物であったとしても、その建物を利用する権利は借り主にあるので、鍵の無断交換や、荷物の無断搬出を行うと、住居侵入や器物損壊といった刑事上の責任を負うことになることのほか、民事上においても損害賠償請求をされる可能性があります。

また、そのような行為を管理会社の方が行った場合には、その管理会社は法律違反行為をする会社と知らしめられ社会的評価を下げる結果につながります。

2.催促の際に暴力的な態度、乱暴な言葉を使わないこと

大家さんには家賃を回収する権利があります。しかし、この権利行使を楯になんでもやってよいかというとそういうことはありません。

家賃の支払い催促において借り主にプレッシャーを与えることは時には必要ですが、催促の際に暴力的な態度、乱暴な言葉を使うなど度が過ぎると恐喝罪となって刑事上の責任を追うことになります

そのような行為をして成立させた合意は、借り主の意思に基づくものではないとして合意が取り消される可能性もあります。

3.早朝や深夜などの時間帯に催促しないこと

一般的に、早朝や深夜は借り主は建物内で睡眠を取っていることが多いと考えられ、必要性も無くそのような時間帯に催促に行くことは、いくら家賃の回収という権利行使であっても平穏な生活を妨げる行為と評価される可能性があります。

4.張り紙、立て看板等をたてて催促しないこと

張り紙や立て看板をたてて催促することは、借り主以外の者に借り主が家賃を滞納していることを知らしめる結果となり、借り主の名誉を傷つける行為と評価される可能性があります。

5.不必要に勤務先や保証人ではない親族へ催促しないこと

催告をする方法について勤務先に催告する以外に執るべき手段があるなど、勤務先に催促する必要性も高くない場合に、借り主が勤めている勤務先に家賃滞納の事実を伝え間接的に催告することは、借り主以外の者に借り主が家賃を滞納していることを知らしめる結果となり、借り主の勤務先内での評価が下がるなど、借り主の名誉を傷つける行為と評価される可能性があります。

6.多人数で、借り主や保証人の家に押しかけないこと

多人数で家賃の支払いの催促をすることは、借り主にとって過度なプレッシャーを与えることになります。

そのような行為をして成立させた合意は、借り主の意思に基づくものではないとして合意が取り消される可能性もあります。

 

以上のようなことをすると、建物明け渡し請求の訴訟の中で、家賃滞納している借り主に交渉道具を与え、場合によっては契約解除が認められなくなる可能性も生じてきます。大家さんとしては法律の手続に従って家賃を回収する必要があるので、その方法が法律違反にならないようにしなければなりません。

そのため、その手段が法律に反していないか?社会一般的に妥当と言えるものかを意識して催告するように努めなければなりません。

Q:家賃の滞納があったので早急に口頭で催告はしたのですが、借り主は滞納している家賃をいっこうに払おうとしません。法律に反せず、妥当な方法で再度催告してみようと思いますが、どのようにしたらよいですか?

A:催告は口頭だけでなく書面でしていただいても構いません。また、催促して無視される場合に放っておくと許されていると考え始めるので、多少「しつこいな。」と思われるくらいの頻度で催促してください。

また、催告した記録は残しておいてください。催促の適正さを裏付ける証拠となります。

何度か催告しても応じない場合は内容証明郵便による方法で催促すると、大家さんの本気度を感じ、連絡をしてくる場合もあります。

いつもありがとうございます。

次回は、大家・借主が亡くなったら滞納家賃はどうなる?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/62