カテゴリー別アーカイブ: 建物明け渡し請求

賃貸借契約が解除されると転貸借契約はどうなる?

前回は、賃借人が支払った修繕費はどうなるか?ということについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/364

以前、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに、賃貸物件を無断で転貸したときには賃貸借契約の解除原因となることを取り上げたことがあります。

参考→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/146

今回は、そのこととは別に、賃借人が転貸借契約について承諾していた場合において、賃貸人と賃借人の賃貸借契約(原賃貸借契約)が解除されてしまった場合、賃借人(転貸人)と転借人の間の転貸借契約はどうなるのか?についてご説明します。

(事例)

Aは、Bに対し、平成24年12月、賃料月額6万円で賃貸家屋を貸し渡した。

Bは、Cに対し、Aの承諾を得て、平成25年1月、賃料月額8万円で賃貸家屋を転借した。

Bは、Aに対して賃料の支払を怠るようになり、滞納賃料は3か月分となった。

 

(問題点)

1.Aは、Bとの間の原賃貸借契約をBの賃料不払いを理由に解除する場合において、Cに対し、その代払の機会を与えなければならないか?

(解説)

AB間の賃貸借契約がBの賃料不払(債務不履行)を理由に解除されると、Cが有していた転借権をもってAに対抗することができなくなります。これは、転借権が賃借権の上に成立しているため、賃借権が消滅すれば、転借権も基礎を失って消滅してしまうためです。

そのため、CにとってAB間の賃貸借契約が解除により消滅してしまうことは重要な関心事になりますが、判例は、Aは、Cに対して、Bの滞納賃料の代払の機会を与える必要はないとしています。AB間の賃貸借契約関係においてCは無関係ということになります。

2.AB間の賃貸借契約が合意解除された場合はBC間の転貸借契約はどうなるか?

賃料滞納など債務不履行等の事情で法定解除された場合は1で前述したとおり、CはAに対して転借権を対抗できません。

それではこの解除がAB間の合意解除だった場合はどうでしょうか?

この場合は、Cは転借権をもってAに対抗することができるので、Cはそのまま、賃貸家屋を利用し続けることができます

これは、転貸借の期間満了までの間は、Cの賃貸家屋を利用することができるという期待を保護する必要があるため(AB間の意思だけで転貸借を終了させることを防ぐため)です。

 

次回は、承諾のある転貸借契約における転借人に対する建物明け渡し請求について取り上げさせていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/382

 

いつもありがとうございます。

借地契約において地代を滞納された場合

前回はマンションの一室の入居者が近隣に迷惑をかける場合について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanrihi/340

今回は、賃貸人が土地を賃借し、賃借人がその借地上に建物を建てている場合に、地代の滞納があって借地の賃貸借契約を解除して、建物を収去し土地を明け渡しを求める場合(建物収去土地明け渡し請求)について取り上げさせていただきたいと思います。

(事案)

賃貸人Aは賃借人Bに対し、賃借人Bの建物所有を目的として、賃貸期間を30年、地代を月額5万円として賃貸借契約を締結した。

その後、賃借人Bは、借地上に住宅用建物を建築し、その建物をCに賃借した。

賃貸借契約から約2年後、賃借人Bの賃貸人Aに対する地代の支払いが滞るようになり、滞納額は1年分以上となった。

そのため、賃貸人Aは賃借人Bとの賃貸借契約を解除して、土地を明け渡してもらいたいと考えている。

このような場合、賃貸人Aは誰にどのような手続をしたらよいか?

(解説)

基本的には、賃料不払いによる建物明け渡しの例に準じて手続を行います。

(参考)賃料不払いによる建物明け渡しについて

https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/137

ただし、建物収去土地明け渡し請求の場合は、次の点に注意が必要です。

1.訴状の請求の趣旨

「別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」とするのではなく、「別紙物件目録記載の建物を収去して、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」と記載することになります。

このようにするのは、土地明け渡しを命ずる判決では、建物の収去執行をすることができないためです。

2.被告について

今回の事案の場合、被告はBとCになります。

そして、賃借人Bには建物収去土地明け渡し請求を行い、建物賃借人Cには建物退去土地明け渡し請求になります。

そして、賃貸人Aと建物賃借人Cとの間では、契約関係はないので、建物賃借人Cに対しては、賃借人Bの場合と異なり、賃貸借契約の解除による賃貸借契約の終了を理由とするのではなく、賃貸人Aがその土地の所有者であり、建物賃借人Cが何ら権原なくその土地を占有していることを理由に建物退去土地明け渡し請求を行っていきます

3.建物賃貸借の終了時期について

賃借人Bとの間で敷地についての賃貸借契約が解除されたからといって、直ちにBC間の建物賃貸借が終了するわけではありません。賃貸人Aと賃借人Bとの間で土地の明け渡し義務が確定されるなど、建物の使用収益が現実に妨げられる事情が客観的に明らかになり、又は建物賃借人Cの現実の明け渡しが余儀なくされたときにBC間の建物賃貸借契約は履行不能により終了することになります。

 

Q:土地の賃貸借契約が終了した場合に、建物賃借人Cに対して賃料相当損害金の請求をすることができますか?

A:必ず請求できるとは限りません。

建物賃借人Cに賃料相当損害金を請求するには、賃貸人Aにとって、建物賃借人Cが土地上に占有を続けるため、その土地を使用収益できないという事情が必要です。例えば、賃貸人Aが建物収去土地明け渡しをしようとしているにも関わらず、建物賃借人Cが故意に退去しないなどの事情です。

また、建物賃借人Cには土地全体の地代ではなく、建物敷地部分の土地の地代を請求することになります。

 

次回は無断増改築された物置は誰の物?について取り上げさせていただきたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/354

 

いつもありがとうございます。

近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応について

前回は、滞納家賃は契約者の配偶者に請求できるのか?について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/315

今回は近隣の入居者に迷惑をかける入居者への対応について取り上げたいと思います。

1.迷惑をかける入居者への注意について

入居者の中には、共用部分の通路に通行の妨げとなるような私物を置いたり、騒音を出して風紀を乱すなどの近隣の迷惑となるような方もいらっしゃいます。そのような場合、大家さんは迷惑を被っている入居者から、「やめるよう注意してほしい。」と頼まれることがあります。

大家さんには入居者に安心して居住できるような状態で建物を使用収益させる義務がありますので、迷惑をかける入居者に対して注意しなければなりません。

2.特約違反による解除は可能か?

契約書の中には、「テレビ、ステレオ等を大音量で流し、近隣に迷惑をかけるような行為をしてはならない。これに違反した場合は賃貸人は契約を解除することができる。」とか、「庭や物置などを近隣の迷惑をかけないように使用する。」といった特約を設けることが多いようです。

しかし、このような特約を踏まえて賃貸借契約を締結したとしても、その特約に違反したからというだけでは解除することができません。その迷惑行為の結果、信頼関係が破壊されたといえるほどの事情が生じた場合に賃貸借契約を解除することができます。なお、そのような信頼関係が破壊されたという事情があるなら特約がなくても解除することも可能です。

3.騒音の程度について

アパート等で共同生活をしていれば、一定の生活音は発生するのはやむを得ないことかと思われます。そのため、入居者は一定の生活音は受忍すべきであって、お互いに迷惑をかけないようにする配慮が必要です。

そして、この生活音が受忍すべき限度を超えたとき(例えば、夜間に長時間大音量でステレオを流すなど)に特約違反行為(騒音)となります。特約違反行為(騒音)は、やむを得ない生活音か?、音を出す時間帯は昼か夜か?音量は一般的に大音量と言えるものかどうか?などといった事情によって判断することになります。

入居者がそのような特約違反行為(騒音)となる生活音を出しているため、大家さんがやめるよう注意してもなお続けるような場合は信頼関係が破壊されているとして賃貸借契約の解除が有効になると考えられます。

次回は、契約後に賃料を増額することは可能?ということについて取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tinryouzougaku/162

 

いつもありがとうございます。

借り主が行方不明になった場合はどうしたらいい?

前回は後継ぎ遺贈と受益者連続型信託についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/minnjishintaku/306

今回は、借り主が行方不明になった場合の今後の対応について取り上げたいと思います。

家賃の滞納が続いているため、入居者に連絡してもつながらず、どういう状況になっているのか確認するために入居者の借りている物件に行ったところ、郵便物が溜まっていたり、住んでいる様子がないということの相談をよく受けます。

このような場合、まず、連帯保証人や入居者の家族に連絡し、入居者と連絡をとってもらって入居者と連絡がつくようであれば、今後の賃貸借契約を終了させる方向での話し合いをします

連帯保証人や家族の方を通じても入居者と連絡がつかないような場合には、裁判を起こし、訴訟手続の中で賃貸借契約を解除して、強制執行手続により建物を明け渡すように進めることになります

(解説)

1.連帯保証人や家族に連絡して、入居者に連絡を取ってもらうことについて

入居者が建物に住んでいる様子がないといっても、長期間の旅行に行っていたり、あるいは何らかの事故に巻き込まれたなどの事情で家を空けていることもあります。そのため、まず、入居者と関係のある方に連絡をとって、入居者の現状について確認することになります。

連帯保証人には、滞納賃料を請求することができますが、連帯保証人ではないご家族の方には滞納賃料の請求はできないので対応には十分気をつけてください。

入居者と連絡がつくようでしたら、事情を確認して滞納賃料の支払いや今後の賃貸借契約を継続するのか、それとも終了して明け渡す方向で進めるのかについて話し合いをします。

2.連帯保証人等を通じても入居者と連絡が取れない場合

賃料不払いにより信頼関係が破壊されたとして、建物明け渡し請求の訴訟手続をします。

事前に滞納賃料支払いの催告や契約解除についての意思表示を内容証明郵便によってすることができないので、訴状の中に「訴状の送達をもって解除する。」という記載が必要になります

そして、訴状の提出にあわせて、公示送達の申し立てをする必要があります。

公示送達とは、当事者の住所、居所その他送達をすべき場所がしれない場合に、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、裁判所の掲示板にそれらの書類を交付すべき旨を記載した書面を掲示して2週間を経過すると、それらの書類が送達されたとする制度です。

公示送達の申し立てをする場合には、入居者が住所地等に住んでいないことを証明するために、添付資料として入居者の所在調査報告書入居者の住民票が必要になります。

そして、訴訟手続を終えて勝訴判決がでた場合は、その判決に基づき強制執行手続をして建物明け渡しを進めることになります。

 

Q:入居者が行方不明の場合、状況確認のために室内に入ってもよいですか?

A:入ってはいけません。このようなことをしてしまうと後々損害賠償請求を受ける可能性もあります。

また、賃貸借契約の特約として「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに本件建物内に立ち入り適当な処置を取ることができる」といった条項を設けていたとしても、裁判例によるとそのような条項は公序良俗に反し無効としているものもありますので(東京地判平成18年5月30日)、その特約があることを根拠として入室することは避けた方がよいでしょう。

 

次回は、滞納家賃は契約者の配偶者にも請求できるのか?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/315

 

いつもありがとうございます。

サブリース契約の期間が満了した場合、契約を終了できるか?

前回は、借り主に相続人がいない場合の取り扱いについてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/297

今回は、不動産業者が土地の所有者の建築した建物において転貸事業を行うため、土地建物の所有者とサブリース契約を締結していた場合に、契約期間が満了することでサブリース契約を終了させることができるかということについてご説明します。

(回答)

この場合、期間満了を理由として賃貸借契約を終了させる場合と同様に借地借家法28条を適用し、期間満了の1年前から6か月までの間に相手方に対して更新拒絶の通知を行うことのほか、賃貸人が建物の使用を必要とする事情等の正当事由が必要になります。

(解説)

1.サブリース契約とは

不動産業者が土地所有者の建築した建物において転貸事業を行うため、あらかじめ両者間で賃貸期間等についての協議を調え、土地所有者が協議の結果を前提とした収支予測の下、融資を受けて建物を建築し、不動産業者がその建物を一括して賃借することを内容とした賃貸借契約です。

サブリース契約により、土地建物の所有者は、空室リスクを不動産業者に転嫁し、安定的な賃料収入が見込めます。一方、不動産業者もその建物を転貸することで、入居者から得られる転貸料と土地建物の所有者に支払う賃料の差額の利益を得ることができます。

2.サブリース契約に対する借地借家法の適用

裁判所は、サブリース契約も賃貸借契約であるとして、サブリース契約に借地借家法の適用を認めています(サブリース契約の賃料増額請求につき借地借家法の適用を認めた判例 最高裁平成15年10月21日判決)。個人と不動産業者の間のサブリース契約ばかりでなく、事業者と事業者の間のサブリース契約においても借地借家法の適用があるとしています(札幌地裁平成21.4.21判決参照)。

そのため、サブリース契約を期間満了で終了させる場合には、借地借家法28条により、更新拒絶通知のほか、正当事由が必要です。

この正当事由は、土地建物の所有者がその建物を利用する必要性と不動産業者がその建物を利用する必要性を比較衡量したり、立ち退き料の支払いの申し出があるなどの諸事情を考慮して判断されますが、一般的にサブリース契約は建物一棟の賃貸借契約が多く、所有者がその一棟の建物を利用する必要性が高いと判断されにくいため、正当事由があると認められるケースは多くはありません。

正当事由が認められないといった事態を避けるためにもサブリース契約時においても、定期借家契約を締結しておくことを検討しておく必要があると言えます。

 

次回は、後継ぎ遺贈とは?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/minnjishintaku/306

 

いつもありがとうございます。

借り主に相続人がいない場合の取り扱い

前回は、更新料の請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/koushinryo/293

今回は、居住用の建物の賃貸借契約期間中に借り主が亡くなり、その借り主に相続人がいない場合について取り上げたいと思います。

借り主に相続が生じ、相続人がいる場合には相続人が借家権を相続します。しかし、借り主に相続人がいない場合や相続人がいても全員が相続放棄をした場合には、大家さんは家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをして、選任された相続財産管理人との間で賃貸借契約の終了(合意解除)について話し合いをすることになります。

ここで注意が必要なのが、賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子が同居していた場合です。この場合について詳しく解説していきます。

(解説)

賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子など相続人ではない者が居住していた場合

借地借家法36条においては、「建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。」ということを定めています。

したがって、内縁の妻や事実上の養子に対して居住権がないとして建物の明け渡しを求めることはできません。

また、その内縁の妻などが借り主の権利義務を承継することから、借り主が生存中に滞納していた家賃などの債務があれば、その内縁の妻などが承継することになります。

 

Q:借り主に相続人がいる場合には借家権は相続人が相続するため、賃貸物件内に内縁の妻が居住していても、内縁の妻には賃貸物件の借家権はありませんので、明け渡しを請求することができますか?

A:判例(最判昭和37年12月25日判決)は、「内縁の妻は、借り主の相続人の借家権を援用できる。」として、内縁の妻がそのまま賃貸物件に居住することを認めていますので、建物明け渡し請求をすることはできません。

ただし、内縁の妻は、大家さんに対しては、相続人が取得した借家権を自分の権利として主張することができるだけで、相続人に対しては借家権を主張することはできないため、内縁の妻は相続人に対して不法行為あるいは不当利得として賃料相当額を支払う義務を負うことになります(賃料は相続人が大家さんに支払う義務を負うことになります。)。

 

次回は、サブリース契約の期間が満了した場合に、契約を終了できるか?について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/301

 

いつもありがとうございます。

借り主の破産について

前回は、原状回復費用について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/266

今回は、借り主が破産した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。

借り主が破産手続をした場合に大家さんとの関係で問題となるのは、

1.賃貸借契約は解除することができるのか?

2.滞納賃料・賃料相当損害金は破産手続の中でどのように回収されることになるのか?

の場面かと思われます。

結論から言うと、1については、

破産手続開始の申し立てをしたことのみでは大家さんからは賃貸借契約を解除することができない

2については、

破産開始決定の前後、破産管財人の関与の有無によって弁済の順番が異なる

ということができます。

以下、解説します。

 

(解説)

1.賃貸借契約の解除について

賃貸借契約において、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を設けていることがあります。

かつては、民法において借り主が破産した場合には、大家さんからも解約の申し入れをすることができるとする規定を定めていたこともありましたが、借り主の賃借権の保護の観点や、判例において賃料未払のない借り主が、破産手続開始の申し立てをしたという事実のみで解除することに否定的であったことなどから現在はそのような規定は削除されています。

そのような経緯から、借り主が破産手続開始申し立て等をした場合を解除事由とする特約を有効とするのは困難とする見解が多いです

なお、破産管財人においては、賃貸借契約について履行するか解除するかの選択権が与えられています。

もっとも、大家さんからの一般的な解除事由(賃料滞納など)に基づく賃貸借契約の解除は可能です。

 

2.滞納賃料・賃料相当損害金について

(1)破産手続開始前(決定日は含まない。)の滞納賃料・賃料相当損害金について

破産債権となりますので、破産手続の中で破産財団(破産者の財産)から清算します。

 

(2)破産手続開始後(決定日を含む。)の滞納賃料について

財団債権となりますので、破産手続によらず破産財団(破産者の財産)から随時弁済を受けます(破産債権となる上記(1)の債権よりも優先的に弁済を受けます。)。

 

(3)破産手続開始後(決定日を含む。)の賃料相当損害金について

破産財団(破産者の財産)である動産等で賃貸物件を占有している場合など、破産管財人がした行為によって生じた賃料相当損害金は財団債権となりますが、それ以外は劣後的破産債権(破産手続の中で配当の順位が劣後する破産債権)となります。

 

Q:借り主が破産手続をした場合、預かっている敷金はどうしたらよいですか?

A:賃貸借契約が解除されたわけではないので、そのままで結構です。

なお、破産手続き中に賃貸借契約が解除されて、明け渡しが終了した場合には、敷金から借り主の債務を控除した残額については、借り主の大家さんに対する敷金返還請求権という債権となり、破産財団(破産者の財産)を構成しますので、破産管財人が就いているときは破産管財人に返還することになります。

 

次回は家賃滞納者の念書・誓約書の必要性について取り上げさせていただきたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/278

 

いつもありがとうございます。

解約申し入れによる賃貸借契約の終了

前回は特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/148

今回は解約の申し入れによる賃貸借契約の終了について取り上げていきます。

建物の賃貸借契約においては、賃貸借期間を定めることが一般的ですが、期間が1年未満であるとき、あるいは、法定更新(期間満了後も借り主が建物を使用収益する場合に、大家さんがこれを知りながら異議を述べない場合に、従前の契約と同一の条件(期間を除く。)で賃貸借契約が更新されたとするもの)されたときは、賃貸借期間を定めなかったものとされます。

このように、賃貸借契約が期間を定めていない状態になっている場合には、民法においては、大家さん、借り主ともにいつでも解約の申し入れをすることができるとなっていますが、特別法(借地借家法)により、大家さん側からの行う解約の申し入れには、

(1)解約の申し入れ後6か月の期間が経過すること

(2)解約の申し入れ時から6か月間経過する間に、解約申し入れについて正当な理由があること

が必要です。

特にこの(2)の解約の申し入れについて正当な理由があるかという点が一番のポイントです。

この記事においては、建物の賃貸借期間の定めがない場合において、解約申し入れにより賃貸借契約を終了させて、借り主に明け渡しを求める場合について説明します。

(解説)

1.正当な理由とは

解約の申し入れの際に必要となる正当な理由とは、期間満了を原因とする賃貸借契約の終了の場合と同様に、次の点がその判断材料になります。

(1)大家さん(賃貸人)が建物の使用を必要とする事情があるか

自己又は親族が居住するため、あるいは会社の事務所として利用するために建物を使用する必要があるといった事情が必要です。

この場合、その使用の目的も重要で、どうしてもその建物に住む必要がある、その建物で事業を行わないと生計が成り立たないなどの理由があると、さらに有力な事情となります。

一方で、借り主側においても、居住あるいは事業を行う必要性があり、さらに資力の問題、家族の健康状態の問題など、どうしてもその建物を利用する必要があると、大家さんの正当理由を妨げる事情となります。

(2)建物の賃貸借に関する従前の事情

大家さんと借り主の間のこれまでの賃貸借関係に関する事情です。権利金等の支払の有無、契約期間の長さ、賃料額の相当性、信頼関係の状況などが要素となります。

(3)建物の現況

建物が老朽化し、耐震性の問題で立て替えの必要性があるなどといった事情です。

(4)明け渡しの条件として立ち退き料を支払う、あるいは、別な建物に入居させる旨の申し出をしている

この点は、正当理由を補完する事情に過ぎないため、このことだけでは正当理由があるとは認定されません。

また、解約の申し入れ時に立ち退き料の支払いを提案しなければならないというわけではなく、裁判になってから提案するものであっても可能です。

提案する立ち退き料の金額は、事案ごとにケースバイケースです。借家権価額に権利金の有無、残存期間の賃料額、引越費用、住居補償・営業上の損失補償などの費用を負担することになり、金額としては高額になるケースが多いです。

これらを総合的に判断して、借り主が賃貸借契約を建物を利用し続けること以上に、大家さん側に明け渡す必要性があることを認めてもらわなければなりません。

 

2.解約申し入れ後の大家さんの対応

大家さんが借り主に建物から退去を求めることに正当な理由があり、かつ、解約を申し入れて6か月経過した場合であっても、借り主が建物の使用を継続し続けており、大家さんから借り主に対して遅滞なく異議を述べない場合は、賃貸借契約が法定更新されてしまいますので、6か月経過直後に速やかに異議を述べるようにしてください!

次回は、連帯保証人に対する大家さんの対応について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/157

いつもありがとうございます。

特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除

前回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/146

今回は、特約違反による賃貸借契約の解除、特にペット飼育禁止特約の条項がある場合に、その特約に違反して賃貸借契約を解除する場合について取り上げていきます。

一般的に建物の賃貸借契約を締結した場合、大家さんには次のような義務が課せられます。

・借り主に建物を使用収益させる義務

・建物を借り主に使用収益に必要な修繕をする義務

・借り主が、屋根のふき替えや塗り替えなど、本来大家さんが負担すべき費用を支出したときは、その費用額を返還する義務

一方、借り主は、次のような義務が課せられます。

・家賃支払義務

・建物の保管についての善良な管理者の注意義務

・賃貸借契約が終了した場合には、建物の返還義務(明け渡し)

・無断転貸・無断譲渡の禁止

そして、この基本的な賃貸借契約の内容に加えて、大家さんと借り主の間で特約を設けることがあります。「家賃の支払を何ヶ月分怠ったら、催告することなく、賃貸借契約を解除する。」という内容の無催告解除特約などがその例の一つになります。

実務上よくある特約としては、「賃借家屋内において、犬、猫等の動物類を飼育してはならない。これに違反した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除する。」というペット飼育禁止特約が挙げられます。そしてよく問題となるのが、ペット飼育禁止の特約を設けていたにもかかわらず、それを破って建物内でペットを飼っていた場合です。

この記事では、ペット飼育禁止の特約について借り主が守らなかった場合における賃貸借契約の解除の注意点について取り上げていきたいと思います。

 

1.そもそもペット飼育禁止特約は有効?

この特約が、借り主に不利な特約として、借地借家法30条に該当して無効となるのではないかという問題がありますが、裁判例においては、このペット飼育禁止特約は有効としています。

その理由としては、共同住宅においては、鳴き声、排泄物、におい、毛等により建物に損害を与えるおそれがあるほか、同一住宅の居住者に対し迷惑又は損害を与えるおそれがあるためです。

 

2.ペット飼育禁止特約違反の事実だけで賃貸借契約を解除することは可能?

裁判例においては、5年近く居室内に犬を飼っていたが、隣室等に注意を払って飼育し、特に苦情もでていなかったという事案においては特約違反の事実だけで解除を有効としています(東京地裁平成7年7月12日判決)

ただし、多くの裁判例は特約違反の事実のみならず、他の要素も踏まえて、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されていることを理由に解除を有効と認めていますので、他の解除原因と同様に、信頼関係が破壊されたという事情がある方が解除を有効なものと評価される可能性が高いということができます。

例えば、マンションの賃貸借契約において、特約として「犬猫等の家畜を飼育してはならない」と定めたにも関わらず、その特約に違反して猫を飼育していた場合においては、特約自体は、猫の飼育により傷・排泄物等で室内が不衛生となり、また、転居時に棄てられることで野良猫化し近隣の環境を悪化させることになること等を踏まえて有効としました。

さらに借り主が、その特約に違反して居室で猫を飼育し、マンション敷地内で野良猫に餌を与えていたことや、賃貸借契約書の特約部分を塗りつぶし、猫の飼育について承諾を得たかのような工作をしていたという事情も考慮して、信頼関係が破壊されているとして、解除を有効としています。(東京地裁昭和58年1月28日判決)

 

3.ペット飼育禁止特約を設けていなかった場合は、建物内でペットを飼っていたことを理由に解除することはできない?

ペット飼育禁止特約がない場合には、通常の飼育方法の範囲内なら飼育は許されていることになります。

そのため、その飼育方法により、建物が損害を被り、近隣住民にも迷惑をかけるなど、通常の飼育方法の範囲を超えてしまった場合は用法違反の要素も加味して信頼関係が破壊されているとして賃貸借契約を解除することができるということができます。

裁判例においても、ペット飼育禁止特約がない場合においても、用法違反、信頼関係破壊を理由に賃貸借契約の解除を有効と認めているものもあります。

 

次回は、解約申し入れによる賃貸借契約の終了について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/152

いつもありがとうございます。

無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除

前回は、無断増改築による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/144

今回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

賃貸借契約においては、原則、賃借物である不動産を無断で転貸(又貸し)、あるいは賃借権を無断で第三者に譲渡することはできません。そして、民法においては、無断転貸・無断譲渡が行われた場合には、賃貸借契約を解除することができると定めています。

ただし、無断転貸・無断譲渡があれば常に賃貸借契約を契約解除することができるかというと、そういうわけではありません。

「賃貸人(大家さん)の承諾がある場合」や、他の解除の原因と同様に、「借り主から、賃貸人(大家さん)に対する背信的行為と認めるに足りない事情(信頼関係が破壊されていない事情)が主張され、それが認められた場合」は解除することができません

この記事では、転貸あるいは賃借権の譲渡といえる場合はどのような場合か?無断転貸・無断譲渡を原因とする賃貸借契約の解除の際の注意点について説明します。

(解説)

1.そもそも転貸・譲渡に該当しない場合

転貸をしたといえるためには、転借人(又貸しを受けた者)が賃借人(借り主)から独立して不動産を使用収益することができる権限を与えられていることが必要です。不動産の引き渡しを受けていることはもちろんのこと、賃借人(借り主)の支配あるいは関与がない状態で不動産を利用していなければなりません。

そのため、賃借人(借り主)が、配偶者や子供といった家族を住まわせることは転貸になりません。

また、一時的に友人を同居させていた場合には、賃借人(借り主)から独立しておらず転貸に該当しないと評価されることが多いです。

 

2.無断転貸・無断譲渡についての承諾

転貸あるいは賃借権の譲渡について、借り主から事前あるいは事後に申し出があり、これに承諾した場合は有効になります。問題になるのが、そのような事実を認識していながら、黙認していた場合です。

例えば、賃貸人(大家さん)が無断転貸・無断譲渡を認識していながら、転借人あるいは譲受人に対して賃料の支払いを請求したという事実があると、黙示の承諾をしたと評価される可能性が高いので、無断転貸・無断譲渡の事実を認識した場合には、すぐに賃借人(借り主)に確認して、対応には気をつけないといけません。

 

3.背信的行為と認めるに足りない特段の事情

無断転貸・無断譲渡という事実があれば、それだけで借り主(賃借人)の大家さん(賃貸人)に対する賃貸借契約を継続するに堪えない背信的行為があったものとされるため、背信的行為と認めるに足りない特段の事情は、借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)において主張することになります

そのため、大家さん(賃貸人)としては、その借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)の主張に対する反論として、賃借人との信頼関係が破壊されていることを主張していくことになります。

例えば、店舗の借り主が個人事業主から法人化した場合に、形式的には不動産の使用者は変わっていますので、転貸あるいは賃借権の譲渡があったということはできます。しかし、借り主側としては、経営実態は変わっていないので、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があると主張してきます。この場合は、大家さん側としては、法人化によって、賃貸借契約を継続することができないといえるほどの信頼関係が破壊された事情(例えば、法人化に伴い会社の事業目的が変わった、事業主構成が大幅に変わり経営実態に大きな変更が生じたなど)を主張していかないといけません。

そういった主張を踏まえて、実質的に背信的行為があったかを評価し、解除が可能かどうかが判断されることになります。

 

次回は、特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/148

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