契約後に賃料を増額することは可能?

前回は近隣に騒音などで迷惑をかける入居者への対応について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/320

今回は、賃貸借契約後に予見することができないような状況が生じ、近隣との相場から契約当時の賃料額が相当ではなくなった場合に賃料を増額することができるか?ということについてご説明させていただきます。

1.賃料の増額請求はどのようなときに行うことができるのか?

賃貸借契約締結後に、その契約で定めた賃料が相当でなくなるような事情が発生しない限り、当初の賃貸借契約の内容に拘束されるため増額請求はすることができません。

この相当でなくなる事情の例としては、

① 固定資産税・都市計画税、維持修繕費の増加

② 周辺地域の利便性の向上などによる不動産の価格の上昇(経済事情の変動)

③ 近隣類似の不動産の賃料との比較

などが挙げられます。

また、このような客観的な事情に加え、貸し主と借り主の個人的な事情も考慮の要素となります。例えば、当初の契約が、借り主の窮状を見かねて相場より安い賃料で契約したことや借り主の営業が契約当時とは異なり軌道に乗っていて、低額な賃料で契約し続ける必要がなくなったことなどが挙げられます。

 

2.増額後の賃料はいつから請求するべきか?

賃料増額請求は、上記1の事情があることを前提に、借り主に対して賃料増額請求の意思表示(内容証明郵便等)を行う必要があります。

そのため、上記の事情が発生した当時に遡って請求することができるわけではなく、意思表示が到達してから賃料増額の効果が生じますので、内容証明郵便には「意思表示が到達した日の属する月の翌月1日から賃料を増額させる。」などと記載しておくことで、翌月分からの賃料は増額後の賃料を請求することになります。

 

3.借り主が賃料増額請求に応じない場合の手続の流れ

内容証明郵便等で、賃料増額請求の意思表示をした後、貸し主、借り主間で協議をすることになりますが、その協議で合意に至ることは多くはありません。

そのような場合は、次に宅地建物調停手続を行う必要があります。その調停手続を経ても合意に至らない場合には訴訟手続に進むことになります。原則的にこの訴訟を行うためには、いったん調停手続を経る必要があるのです。

 

Q:裁判手続において、賃料増額請求が認められた場合、差額の賃料額に利息をつけて請求することは可能ですか?

A:可能です。不足額に対して、意思表示が到達した後の賃料の支払期限から支払い済みまで1割の利息を請求することができます。

 

次回は、連帯保証人である元妻に滞納賃料を請求することができる?について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/330

 

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