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遺産分割協議が成立するまでの賃料について

前回は、東京司法書士会中野支部で建物明け渡し請求の研修講師のレポートを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/seminar/646

このところ相続にまつわる相談が増えてきて、その中で、よく質問される「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料について」というテーマでブログを書きたいと思います。

1.相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料は相続人が相続分に応じて取得する。

被相続人が所有していた賃貸物件(賃貸建物など)の所有権については遺産分割協議の対象となります。

その賃貸物件から相続発生後に生じる賃料についてはちょっと注意が必要です。

かつては、相続開始後の賃料は、賃貸人の地位が相続によって共同相続人に承継されて、共同相続人らは「共同賃貸人」となり、賃借人に目的物(賃貸建物など)を使用収益させる義務は性質上不可分債務(分けられない債務)であることから、この対価としての賃料も不可分債権(分けられない債権)と考えられていました。

しかし、平成17年9月8日の判例によって、この「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」は、遺産とは別個の財産であって、「共同相続人の共有財産」であると解されて各共同相続人がその相続分に応じて取得することができるとしました。

そのため、「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」については、そもそも遺産分割協議の対象ではないので、協議を経ることなく各相続人が分割単独債権として確定的に取得することができます。

2.遺産分割協議の対象に加えることもできる。

「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」については、そもそも遺産分割協議の対象ではないのですが、共同相続人全員の合意があれば遺産分割協議の対象とすることができます

実際のところ、被相続人の面倒をよく見ていた相続人のうちの一人が、相続発生後に相続財産である賃貸物件の管理をしているケースが多く、その場合の賃料も長年その相続人が受け取っていることが多いので、その点も含めて遺産分割協議の中でまとめて話し合いをすることが多いと思います。

いつもありがとうございます。

東京司法書士会中野支部で建物明け渡し請求の研修講師をしてきました。

平成27年11月6日に、東京司法書士会中野支部主催の研修において、建物明け渡し請求のセミナー講師をして参りました。

研修の模様の写真です。多くの方にご参加いただきました。

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1.研修テーマは家賃滞納トラブル

今回は、大家さん向けのセミナーではなく、同業の司法書士の方に向けた研修をしてきました。

司法書士といえば、売買・相続といった不動産に関する登記手続や会社の役員変更といった登記手続をする人というイメージがあるかと思いますが、そのほかにも法務大臣からの認定を受けた司法書士であれば、請求額140万円までの訴訟手続については簡易裁判所で代理人として手続を行うことができます(仮に請求額が140万円を超えるものであっても、本人訴訟支援として、裁判所に提出する書類を作成することはできます。)

そのため、

戸建て、マンション、アパートの一室、駐車場の明け渡し

滞納賃料請求

原状回復請求、敷金返還請求に対する対応

などは司法書士でも割と対応できることが多いです。

研修では賃貸経営トラブルの中でも割と相談の多い家賃滞納による建物明け渡し請求を解説しました。

東京司法書士会中野支部の司法書士の方だけではなく、他の支部からわざわざお越しいただいた方もいて参加された方の意識の高さに驚かされました。

この研修が受講者の方の実務において役立てていただければ幸いです。

そして、このような研修の機会を与えていただいた東京司法書士会中野支部の皆様には感謝しております。

2.大切なのは早期の相談

この研修の実施にあたり、レジュメ等の資料を作成していく中で、どういうシナリオにしようかとか、この場合だとこういうところで問題が生じるとかいろいろと考えさせられる事が多く、自分自体の知識の再確認もすることができました。

そして、こういうトラブルに関わってしまった場合には、やはり早めの相談が解決の早道と感じました。

これまでに相談された方の中には何年と家賃の滞納が続いているのに、催促だけしかしていなくてそれ以上は何もしていないという大家さんもいらっしゃいました。

また、滞納家賃の回収のため、ご自身で支払督促の申立をして、その時点で滞納している分について支払を求める仮執行宣言付き支払督促正本は取得したけど、その滞納分も回収できていないし、それ以降に発生している家賃も支払ってもらっていないという大家さんもいらっしゃいました。

早期に根本的な解決に結びつかせるためにも一度相談をお受けいただき、一日でも早い正常な賃貸経営が行えるよう今後も尽力して参りたいと思います。

 

次回は、遺産分割協議が成立するまでの賃料についてというテーマでブログを書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/658

いつもありがとうございます。

解約の申し入れを理由とした建物明け渡し請求が認められました。

前回は、仮処分命令の申立の際に納める供託金の払い戻しについてブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/629

建物の老朽化に伴い建物の解体を考えているため、入居者の立ち退きを考えているというオーナー様から相談があり、建物明け渡し訴訟を提起していました。

その賃貸借契約は、定めていた賃貸借期間が満了し、その後入居者の方が、更新契約に応じていただけなかったことから同じ内容で賃貸借契約が法定更新され、期間の定めのない賃貸借となっていました。

入居者の方は家賃滞納はなかったため、一般の賃貸借の解除をすることができなかったため、賃貸人がその建物を利用したいとする正当事由(老朽化に伴い建物の解体の必要性)があることを根拠に、事前に解約の申し入れをして6か月以上経過した上で訴訟を提起しました。

解約の申し入れについてはこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/152

この事案は、賃貸人がその建物を利用したいとする事情(正当事由)と賃借人がその建物を利用したいとする事情(正当事由)の比較と、立ち退き料、信頼関係の破壊の有無などがポイントとなった事案でした。

私は賃貸人の代理人として出頭して、賃貸人の正当事由(建物老朽化に伴い解体を考えていること、現状のままだと風災などにより看板、網戸などが外れ、近隣あるいは通行人に危害を加えるおそれがあること)があることを主張しました。

このような事案は、一般的には賃貸人側が不利になることが多く、さらに今回の賃借人は居住用だけではなく事業としても建物を利用していたということもあり、判断がどうなるかと思っていましたが、過去に風災でニュースになったこともあるエリアだったりしたことも影響したのか、正当事由があり、有効に賃貸借契約が終了していることが認められ、勝訴判決を得ることができました。また無事に判決も確定しました。

問題はこの後に入居者の方がスムーズに退去してくれるかどうかが問題なのですが・・・

やはり、事業目的で建物の賃貸借契約をするなら、その建物の築年数によっては定期借家契約をしておいた方が無難だと感じました。

 

次回は、東京司法書士会中野支部で建物明け渡し請求の研修講師をしてきたことについてのレポートについて書きたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/seminar/646

いつもありがとうございます。

供託金の払い戻しに行ってきました。

前回は暴力団関係者との賃貸借契約を避けるために必要なことというテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/622

先日、仮処分命令のために供託した供託金の払い戻し手続のために東京法務局に行ってきました。

以前は、代理人名義の口座に振り込む方法では払い戻しを受けられなかったので、本人名義の口座に振り込んでもらうか、小切手で受け取っていました。

本人名義の口座に振り込む方法はともかく、小切手で受け取る方法を選ぶと40分から50分くらい待たされますし、日本銀行の代理店窓口で呈示して返金を受けようとすると手数料もかかってしまいますので、使い勝手が良くありませんでした。

それで、今回も本人名義の口座に振り込む方法をとろうと考えていたのですが、調べてみると供託規則が改正されていて平成26年6月2日から代理人名義で供託金の払い渡しを受けられることになっていました!

ただ、本人の意思確認のために、代理人名義で供託金の払い渡しを受ける場合には、払い渡しの委任状に印鑑証明書の添付が必要となっていました

もっとも、私は供託をした際に代理確認請求をしていて、供託時に呈示した供託委任状に供託官から代理権限証明の確認済みの印判をもらっていましたので、払い渡し時にはその確認済みの印判のある供託委任状を添付して印鑑証明書も添付しませんでした。

そもそもこれまでは、依頼者が法務局に印鑑を届けていない個人の場合は、供託金の払い渡しの際に裁判所が発行してくれた供託原因消滅証明書を呈示すれば印鑑証明書を添付しなくても良かったので、供託時に代理権限証明の確認済みをするメリットがあまりなかったのですが、今後はご依頼をいただいた時点で供託時の供託委任状と払渡時の払渡委任状にそれぞれ同じ印鑑で押捺してもらって、供託時に供託委任状に代理権限証明の確認請求する実益が出てきそうですね。

 

次回は、解約の申し入れを理由とした建物明け渡し請求が認められた件についてブログを書きます。参考にしてみて下さい。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/635

いつもありがとうございます。

暴力団関係者との賃貸借契約を避けるために必要なこと

前回は、入居中の外国人が帰国してしまったらというテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/615

今回は、暴力団関係者との賃貸借契約を避けるために必要なことというテーマでブログを書きたいと思います。

賃貸物件の一室を暴力団関係者が利用していることで、他の関係者が出入りするようになり、その他の部屋の借り主に割り当てられた駐車場に常習的に違法駐車したり、近隣住民へ暴言・嫌がらせをするといったことがあります。

その結果、その他の部屋の住民は退去するようになり、収益力が低下し、さらに建物自体の資産価値も減少するおそれがあります。

暴力団関係者が賃貸借契約を結ぼうとするときは、他の人間を介して賃借人としたり、使用目的を隠したままにすることがありますので、賃貸借契約締結時にはその建物の利用者が暴力団関係者なのかどうか分からないことが多いです。

そこで、できる限り暴力団関係者との契約を避け、または契約後に明け渡しを有利に進めるためにも、そのような者らしい方との賃貸借契約締結時には、次の点を確認する必要があります。

1.本人確認

賃貸借契約をして入居する賃貸人と、保証契約をする保証人の本人確認をしてください。具体的にはその者らが契約書に押捺した印鑑の印鑑証明書、運転免許証の写しの提出を求めましょう

ちゃんと家賃を払い続けることができるか資力の確認も兼ねて、給与明細書や源泉徴収票などの提出を求めてもいいと思います。

2.賃貸借契約書の中に暴力団排除条項を設けること

契約者が暴力団関係者である場合には賃貸借契約を締結しないこと、あるいは、契約後に暴力団関係者であることが判明した場合に契約を解除して明け渡しを求めることができるように、賃貸借契約書の中に、暴力団排除条項を設けておくと良いでしょう。

参考として、国土交通省が賃貸住宅標準契約書の中に掲げている暴力団排除条項のサンプルとリンクを下に挙げておきます。

このような条項を定めた上で賃貸借契約を締結し、その条項違反の事実が判明すれば信頼関係が破壊されているという事情となりますので、賃貸借契約の解除が有効と認められやすくなります。

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(反社会的勢力の排除)

第7条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。

二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。

三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。

四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。

ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為

イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000019.html

 

次回は、供託金の払い戻しの際の代理人名義の振込についてブログを書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/629

いつもありがとうございます。

入居中の外国人が帰国してしまったら

前回は、直ちに明け渡しを求めたいときはというテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/606

今回は、外国人に借家を貸していたところ、契約の途中で鍵を返すこともなく、自分の国に帰ってしまった場合にどのようにしたらよいかについて取り上げたいと思います。

当事務所によく相談のあるケースとしては、

「外国人を入居させていたのですが、突然家賃を滞納するようになり、現在は保証会社から立て替えをしてもらっています。保証会社の担当者の方が様子を見に行っていただいたところ、荷物も全部持っていって部屋は空っぽにしているのが見えたとの事でした。電気もガスも止められているし、もう既に引き払っていると思うとのことでした。ただし、鍵を返してもらっていないので、賃貸借契約をこのままにしておいていいのかどうか分かりません。」

といったものです。

こういった場合、一般的にはその入居者の外国人から鍵の返還を受けていないので、明示ないし黙示の賃貸借契約の終了があったとは言いにくいと考えられます。

そこで、その入居者がどこに行ったかを調査するのですが、調査した結果、

転居先が分かれば、転居先を住所地として建物明け渡し請求の訴訟をすることを検討します。

転居先が分からなければ、裁判書類の公示送達をすることを前提として建物明け渡し請求の訴訟をすることを検討します。

参考→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/310

問題は、どのように調査したら良いかと、その調査の結果、転居先が母国であることが判明した場合です。

調査はまず住民票を取得して転居の届出をしているかどうかを調査することから始めます

平成24年7月8日までは、外国人登録原票記載事項証明書というものが発行されていましたが、現在は住民票の写しによって証明されます。

そして、その住民票の住所の異動を確認しますが、これが外国であると国名までしか書いていないので、出国先の住所を調べることはできません。

そのため、出国先の住所まで調べる必要があるのであれば、法務省入国管理局が管理している出入国記録の照会をして調査することになりますが、その照会は裁判所からするため、別途申立等の手続が必要になります。

さらに、その調査の結果、出国先の住所が分かれば、そこを住所地として建物明け渡し訴訟を起こしますが、外国の住所地宛てに裁判書類の送達手続をするのはとても時間がかかり、その方法も容易ではないので一度専門家に相談して進める方が良いでしょう。

 

次回は暴力団関係者との賃貸借契約を避けるために必要なことというテーマでブログを書きます。

その記事→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/622

いつもありがとうございます。

直ちに明け渡しを求めたいときは

前回は、貸家に誰が住んでいるか分からないときは?というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/599

今回は、建物の入居者が暴力団事務所として利用していることが発覚するなど、直ちに明け渡しを求めたい場合はどうすべきかについて取り上げたいと思います。

一般的に、建物明け渡し訴訟は、着手してから、交渉→訴訟→強制執行という手順で進めるのですが、裁判所の期日の混み具合や、訴状等の送達がスムーズにできるかどうかなどによっても変わるので、どんなに早くても着手から半年くらいはかかってしまうのが一般的です。

しかし、その手続が終わるのを待っていては将来の明け渡しに困難を来す場合もあります。

そのような場合に一刻も早く明け渡しを求めるために用いられる手続として、

建物明渡断行仮処分の申立

が挙げられます。

1.建物明渡断行仮処分とは?

訴訟手続を始める前に、建物明渡断行仮処分の申立をして、現実に債務者(賃借人)から賃貸している建物の明け渡しを受ける手続です。

この場合、建物明渡断行仮処分決定の主文例としては、

「債務者は、債権者に対し、本決定送達の日から○日以内に、別紙物件目録記載の建物を仮に明け渡せ。」

といったものになります。

2.仮処分が発せられるための要件

法律上、争いがある権利関係について債権者に著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができるとされています。

建物明渡断行仮処分の手続において、申立が認められた場合には、賃借人(債務者)は現実に賃貸建物の明け渡しをしなければならないことから、認められた場合の賃借人(債務者)に与える影響が大きいので決定の前に審尋期日(裁判所が賃借人(債務者)を呼び出して、意見を聞く期日)が開かれることが原則となり、決定のための担保(供託金等)も高額になります。

3.類似する手続

一般的に、占有移転禁止の仮処分は賃借人(債務者)に使用を許す内容の決定を求めることが多いですが、賃借人(債務者)によっては、債務者への使用を許さず、債権者(賃貸人)に使用を許す内容の決定を求めることもあります(債権者使用型の占有移転禁止の仮処分)

この手続も、建物明渡断行仮処分と同様に賃借人(債務者)は賃貸建物を現実に明け渡す事になりますので、認められた場合に賃借人(債務者)に与える影響が大きくなるため、同様に審尋期日を開くことが多く、決定のための担保(供託金等)も高額になります。

 

次回は、入居中の外国人が帰国してしまったらというテーマでブログを書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/615

いつもありがとうございます。

貸家に誰が住んでいるか分からないときは?

前回は、保証会社からの滞納家賃の立て替えがあっても解除できる?というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/590

今回は、賃貸している建物に、賃借人(契約者)あるいはその家族ではない知らない者が入居しているような場合にどのように対応したらよいかについて取り上げてみたいと思います。

1.賃借人以外の者が使用していることを知るきっかけ

賃貸人が賃貸している建物や部屋に、賃借人以外の者が使用しているということを知るきっかけとしては、

・近隣の住民から、賃借人以外の者が居住して夜中に騒いでいるから何とかしてほしいと苦情を受けた

・部屋やポストの表札が賃借人とは別人の氏名になっている

・会社として使用している

などといったことが挙げられます。

2.賃借人以外の者が使用していることについての問題点

賃借人以外の者が使用している場面としては、

無断転貸

一方的な不法占有

が挙げられます。

一般的に賃貸借契約では又貸し(転貸借)は禁止されており、賃借人以外の者が入居あるいは使用することについて、賃貸人が承諾していない限り、そのような者が入居あるいは使用することはできません。

これは、賃貸借契約というものが、賃貸人が、その賃借人の属人的要素(職業、年齢等)を加味して契約するものであり、両者の信頼関係の上で成り立っているものであるからです。

無断転貸は、信頼関係を破壊する事情としては大きく、賃貸借契約を解除する事由の一つとなっています。

参考→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/146

また、無断転貸ではなく、一方的に勝手に他人の不動産を占有すること(不法占有)についても同様に許されません。

無断転貸であっても、一方的な不法占有であっても、賃貸人側からすれば、どういう者か分からない者が入居していることは管理が行き届かないことになってしまい、不動産自体の破損、近隣住民へ迷惑などといった問題が生じてしまうことが多いです。

3.賃借人以外の者の占有を排除するには

賃借人以外の者の占有を排除するには、その占有者に対して建物明け渡し請求を行っていくことになるのですが、そもそもその者がどういう人でどういう名前なのかも分からないような場合は、建物明け渡し請求の前に、債務者(占有者)を特定しない占有移転禁止の仮処分の申立をしておいたほうがよいでしょう。

この申立をする場合は、債務者(占有者)を特定することが困難とする特別の事情が必要になります。

この仮処分の執行手続により、実際に占有している者を特定し、その上で建物明け渡し請求をすることになりますが、その執行手続で特定できない場合は執行不能となってしまいますので注意が必要になります。

 

次回は、「直ちに明け渡しを求めたいときは」について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/606

いつもありがとうございます。

保証会社から滞納家賃の立て替えがあっても解除できる?

前回は、相続対策としてアパート建設は有効?というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/582

賃貸借契約時において、賃借人の債務について保証会社が賃借人と保証契約を結んでいるなら、賃借人が家賃を滞納した場合には、保証人が賃貸人に対して賃借人に代わって家賃債務を支払ってくれます。この支払のことを代位弁済といいます。

代位弁済後、保証会社は、賃貸人に支払った保証債務を賃借人に対して請求していきます。

そして、この場合に、賃貸人は賃借人に賃料の不払いがあったとして、賃貸借契約を解除することはできるのでしょうか?

(結論)

判例においては、解除することを認めています。

(解説)

保証会社から賃貸人に対して、家賃債務の代位弁済がなされているので、その代位弁済がされた限度では、賃貸人は賃借人に対しては、滞納家賃というものが存在しないことになります。

そうすると、契約書などで定めている、「賃料等の支払を2か月以上滞納したら賃貸借契約を解除する。」という条項に引っかからなくなるようにも思えます。

しかし、この点について、判例は、賃借人の債務不履行(家賃滞納の事実)について、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当ではないとしました。

あくまでも、解除事由の発生は、賃借人の賃料不払いの事実のみをもって考えるべきであり、保証会社による代位弁済をもってその解除事由の発生に影響を与えないと判断しました(大阪高裁H25.11.22)。この判断は、上訴されましたが、最高裁でもこの結論は覆りませんでした。

以前からこの点については、滞納家賃がない以上、債務不履行がないとして、解除を認めないとする下級審判例も出ていたので、今後は統一的な取り扱いがなされていくのではないかと考えられます。

ただし、結局は家賃不払いの事実に加え、そのほかの事情を総合的に判断して、全体として信頼関係が破壊されているかどうかで解除事由が発生したかどうかを考えることになるのでしょう。

 

明日は、東京ビッグサイトで全国賃貸住宅新聞社様主催の賃貸住宅フェア2015に参加してきます。

Airbnbなど新しい不動産の運用方法のセミナーなどいろいろ聞いてこようと思います。

次回は、貸家に誰が住んでいるか分からないときは?について書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/karisyobun/599

 

いつもありがとうございます。

相続対策としてアパート建設は本当に有効?

前回は、火災保険の長期契約が廃止に!というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/576

近年は、いろんな業種の方が相続対策・節税対策として様々な手法でサービスを提案しています。

その一つとして挙げられるのが、遊休地を利用したアパート建設です。

相続が発生したときに、預金などの現金をたくさん持っていると税金が多くかかってしまうため、生前に収益物件(アパート・賃貸マンション・賃貸戸建て)を購入あるいは建築して、現金を物にする。そして、その収益物件を賃貸に出し、賃料収入を得る。

不動産の固定資産評価額は、実際の購入・建築価格に比べて低下するので、その低い評価額を基準に税金が課せられるので、相続時においては、現金で相続するより、物として相続を受ける方が節税効果があります。一等地の高層マンションの上層階なんかは特にその効果が強く出ますよね。

そして、物は年数が経てば経つほど劣化していくので価値が落ちていきますので(減価償却)、さらに節税効果は上がると言えます。

たしかに、相続税の節税という観点から考えれば、現金を物として残すということもその通りということもできますが、その後の賃貸経営の面から考えるとどうでしょうか?

近年は、人口の都市部・中核市への集中化が進んでいます。この減少は今後ますます進んでいくと言われています。

そのような中、都市部・中核市からちょっと離れた地域にアパートを建設した場合に、入居者対策は大丈夫なんでしょうか?

ある程度、都市部・中核市から離れた地域においても人口がゼロになるということはなかなかないと思いますが、今の流れから行くと人口減少は進むでしょう。実際に現在においても、普通の民家の空き家が増加していますよね。

そんな中、「アパート建設が止まらない。~人口減少社会でなぜ~」というニュースを見つました。

これは、地主さんが不動産会社や建築会社から、「アパート収入は年金の足しになる。」、「サブリース契約をするから満室でなくとも賃料は保証する。」という提案を受けて、アパート建設をしたところ、ほとんど満室にはならず、さらに、その保証額の減額の提案を受けているというニュースでした。

中には、サブリース契約を解約して、借金と空室率の高いアパートが残ってしまったという方もいらっしゃいました。

これは、賃料額の改訂がされて保証額が減額になるということについて地主さんに説明がなく、そのようなことが契約書に盛り込んであったことを確認しなかったことによるトラブルになります。

やはり、不動産を購入するなど大きな買い物をする場合には、事前に契約書の写しをもらってじっくり読み込み、気になる点については専門家に相談するなどしてから、契約に臨むべきだなと思いました。

次回は、保証会社から滞納家賃の立て替えがあっても解除できる?について書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/yachintainou/590

 

いつもありがとうございます。