家賃滞納による賃貸借契約の解除

前回は、賃貸借期間が満了した場合の建物明け渡しについて説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/92

今回は、賃貸借契約の解除について説明させていただきます。

そして、大家さんが借り主に対して、建物の明け渡しを求める場合に一番多い原因が、家賃滞納を理由に賃貸借契約を内容証明郵便などにより解除した場合になります。

一般的に契約の解除とは当事者の一方が、その一方のみの意思表示によって、契約の効力を当初にさかのぼって消滅させる制度です。しかし、賃貸借契約における解除は、当初にさかのぼらせると複雑になってしまうため、将来に向かって効力が生じます。

賃貸借契約における解除は次の場合に行うことができます。

1.賃料不払(家賃滞納)

2.用法遵守義務違反

3.無断増改築

4.無断転貸・無断譲渡

5.特約違反

6.信義則違反

この記事では、解除の原因として一番多い賃料不払(家賃滞納)の場合における解除について取り上げていきます。

(解説)

1.賃料不払(家賃滞納)

法律上の要件に当てはめると、借り主が家賃を支払わないことは賃貸借契約の債務不履行にあたり、大家さんが相当の期間を定めて賃料の支払いを催告したにもかかわらず、借り主が賃料の支払いをしないときは解除することができることになっています。

ただし、賃貸借契約は、大家さん(賃貸人)と借り主(賃借人)との間の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であることから、家賃滞納があることから相当期間を定めて催告した結果、支払がないので解除できるというものではなく、その家賃滞納が大家さんに対する信頼関係を破壊する不信行為と認められることが必要です。これを信頼関係破壊の法理といいます。

(1)何ヶ月分の家賃滞納があれば解除をすることができるのか?

これは特に決まりはないのですが、一般的には3か月以上の家賃滞納の事実があれば信頼関係は破壊されていると考えられています。

問題は、大家さんと借り主の間の信頼関係が破壊する程度の家賃滞納があると認められることの方が重要ですので3か月より短いからダメだとか、3か月以上の長期間にわたって家賃滞納があるから大丈夫だということは言えません。

(2)賃貸借契約時に無催告解除特約をしていた場合

無催告解除特約とは、借り主が賃料の支払いを1回でも怠ったときは、大家さんは催告を要しないで賃貸借契約を解除することができるとの特約が締結された場合です。

この場合に注意しなければならないことは、このような特約を設けているからといって、1回でも家賃滞納があれば催告することなく解除することができるというものではありません。

この場合においてもやはり、大家さんと借り主との間の信頼関係が破壊されていると認められるような事情がなければ、この特約に基づく契約解除は有効とはなりません。

(3)借り主が行方不明になり催告できない場合

借り主が行方不明になり、何ヶ月あるいは何年も家賃滞納が続いている場合は、大家さんと借り主の信頼関係を破壊し、賃貸借契約の継続を著しく困難にしたということができるため、そのような場合は催告をすることなく解除することができます。

この場合は、すぐに裁判所に訴訟を提起することになりますが、あわせて公示送達の申立をする必要があります。そして、その訴状の中に訴状の送達をもって契約を解除するという記載があれば、裁判所の掲示板に公示送達する旨の張り紙が掲示されてから2週間経過すれば、契約は解除したことになります。

(4)賃貸借契約を解除した後の建物明け渡し訴訟手続

訴状には次の事項が記載されている必要があります。

①当事者間で建物について賃貸借契約を締結したこと

②賃貸借契約に基づき建物を引き渡したこと

③一定期間(数ヶ月間)の期間が経過したこと

④賃料支払時期が経過したこと

⑤相当の期間を定めて滞納家賃の支払いを催告したこと

⑥催告後相当期間が経過したこと

⑦催告後の相当期間経過後に賃貸借契約を解除するとの意思表示をしたこと

 

Q:滞納家賃の支払いの催告の際に、相当期間を定めるのを忘れました。相当期間を定めてもう一度催告しなければなりませんか?

A:再度催告をする必要はありません。

ただし、催告をしてから相当期間が経過していることが必要になります。

相当期間は1週間から2週間程度で足ります。期間計算を明確にするためにも催告は内容証明郵便によって行うのがよいでしょう。

 

Q:支払の催告をして、相当期間が経過した後に、改めて解除の意思表示を記載し内容証明郵便を送る必要がありますか?

A:催告の際に、「平成○○年○月から平成○○年○○月までの滞納家賃○○万円を本書面到達後、1週間以内にお支払いください。同日までにお支払いがない場合には、本催告書をもって、家賃滞納を理由に、本件賃貸借契約を解除します。」と記載しておけば、改めて送る必要はありません。

 

次回は用法遵守義務違反による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/142

 

いつもありがとうございます。