放置自動車に所有権留保が設定されていたら

前回は駐車場の明け渡し請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/449

今回は、放置自動車に所有権留保が設定されていた場合の土地明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方は誰になるか?についてご説明させていただきます。

1.自動車の所有権留保とは

駐車場に放置されている自動車の使用者が、その自動車をオートローンなどの分割払いで購入していた場合には、販売店や立て替え払い業者の担保のため、その自動車に所有権留保が設定されていることが一般的です。

自動車の所有権留保とは、販売代金あるいは立て替え払い代金の分割払いを完了するまで、担保のために自動車の車検証(登録事項等証明書)の名義を使用者ではなく、販売店名あるいは立て替え払い業者名にしておくことをいいます。

自動車使用者が代金を完済した場合には、車検証の所有者名を使用者名に変更することになります。

一方、オートローンの分割払いを滞納した場合には、使用者は自動車販売店等に自動車を引き上げられ、売却されてその売却代金はオートローンの残債務に充当されるとする内容の契約になっていることが多いです。

2.駐車場の賃貸借契約の解除の相手方について

所有権留保の設定されている自動車の使用者が駐車場代金を滞納した場合に、賃貸借契約を解除する相手方は、賃借人である自動車の使用者になります。

3.駐車場の賃貸借契約解除後の土地の明け渡し(車両の撤去)請求、賃料相当損害金請求をする相手方について

この点については、「車検証上の所有者である自動車販売店等は担保目的で所有者名義になっているにすぎず所有権は帰属していない。」「使用者が分割払いを滞納して期限の利益を喪失したため、自動車販売店等に自動車の引き上げ義務が生じている場合でも、現実に自動車を使用・利用していないため、自動車の占有者とはならない。」という見解もありますが、判例(平成21年3月10日最高裁第三小法廷判決)においては、

「残債務弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である。」

として、使用者が自動車のオートローンの分割払いを滞納した場合に、留保所有権者(車検証上の所有者である自動車販売店等)に自動車の撤去義務があると判断しました。

また、駐車場の賃料相当損害金請求については、

「妨害の事実を告げられるなどこれを知ったときに不法行為責任を負う。」

として、自動車が放置されている事実を知ったときから不法行為責任として賃料相当損害金を請求することができると判断しました。

放置自動車を撤去する場合には、まず車検証の内容を確認して、所有権留保が設定されているなら、まず留保所有権者に分割払いが滞っているか、滞っている場合には自動車を撤去していただくよう連絡することが必要になります。

次回は、強制執行における目的外動産の売却について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/464

 

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