敷引き特約の有効性について

前回は、敷金・礼金・権利金・保証金の意味合いについてご説明させて頂きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/435

今回は敷引き特約の有効性についてご説明させていただきます。

1.敷引き特約とは

敷引き特約とは、賃貸借契約における敷金について、賃貸借契約終了後にそのうち一定金額又は一定割合の金員を返還しない旨の特約をいいます。

2.敷引き金の性質

敷引き金の性質は、①謝礼(礼金と同じ性質)、②自然損耗料(通常使用による損傷部分の補修費)、③更新料免除の対価(契約更新時に無条件で更新を承認する対価)、④空室補償、⑤賃料の一部などと説明されていますが、主に②の自然損耗を補修するための財源を理由に徴収していることが多いです。

3.敷引き特約の有効性

敷引き特約(性質としては特に自然損耗料として)の有効性については、消費者契約法の規定により無効となるかならないかについて争いになることが多いです。

このような問題が生じるのは、以前、原状回復費用の記事について触れたことがあるのですが、賃借人は、特約のない限り、通常損耗について原状回復義務を負わず、その補修費用を負担する義務を負いません。そのため、通常損耗等の補修費用を負担させる趣旨の敷引き特約は、消費者である賃借人の義務を過重するものと考えられてしまうためです。

原状回復費用の記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/266

そのため、判例においては、「通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無その額等に照らし、敷引き金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。」としています(最高裁平成23年3月24日判決)。

そのため、敷引き特約を設けている場合は、その額が高額過ぎるわけではない、近隣の賃料相場に比べて基本賃料を低額に設定しているなどといった特段の事情があるかどうかによって有効か無効かの判断が分かれることになりますので注意が必要となります。

 

次回は、駐車場の明け渡し請求について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/tochiakewatashi/449

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