賃貸物件の現況調査について

前回は、一時使用のための賃貸借契約について取り上げさせていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/489

今回は、建物明け渡し請求を行う際の賃貸物件の現況調査について取り上げたいと思います。

家賃滞納など様々な理由から建物明け渡し請求を行うかどうか検討する場合に、まず賃借人に内容証明郵便で催告書を送り、未払賃料を催告して賃貸借契約を解除することが多いと思いますが、それと同じくらいに重要なことが賃貸物件の現況調査になります。

1.賃貸物件の現況調査とは

賃貸物件の現況調査とは、現地に行って建物の利用状態を調査・確認することです。

2.現況調査が必要な理由

建物明け渡し請求の前提として、未払賃料の催告や賃貸借契約の解除をするため、賃借人に対し、催告書を内容証明郵便で送り、それに対する応答がないため訴訟を起こし判決を取得したとしても、その建物に賃借人以外の者が居住していると、その賃借人以外の者に対して強制執行を行うことができない場合があります。また、はじめから賃借人が建物に居住しておらず、不法占有者や無断転貸の転借人などが賃借人になりすまして書類を受け取っている場合もあります。

そのような場合、その賃借人以外の占有者を相手に訴訟を行うことから始めないといけなくなり、手続が二度手間になり、明け渡し手続を完了させるための時間と費用がかかってしまいます。

そのため、まず、賃貸物件の現況調査をして、現在の賃貸物件の占有状態を確認する必要があります。

3.現況調査において行ってはいけないこと

現況調査を行う場合は、外観から判断できることしかできませんので次のようなことは行ってはいけません。

(1)無断で家の中に入って確認すること

(2)勝手にポストを空けて中を確認すること

(3)玄関入り口の共用部分に置かれている占有者の動産の処分

など

このようなことをしてしまうと住居侵入・器物損壊といった刑事上の責任を負うことになることのほか、民事上においても損害賠償請求をされる可能性があります。

また、賃貸人に限らず、そのような行為を管理会社の方が行った場合には、その管理会社は法律違反行為をする会社と知らしめられ社会的評価を下げる結果につながります。

どのように現況調査をしたらよいかは、事案によりきりですので、一度専門家に相談した方がよいでしょう。

4.賃借人以外の者が占有していることが判明した場合の対応

現況調査の結果、賃借人以外の全くの他人や、賃借人が代表を務める会社などが占有していることが判明した場合は、その占有者との接触は避けてください。その様な者を建物明け渡し請求の相手方とすべきか、占有移転禁止の仮処分の申立が必要かどうかなどを検討することが必要になるので、一度、専門家に相談した方がよいでしょう。

 

次回は、民法改正による敷金と原状回復請求の明文化について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→ https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/504

いつもありがとうございます。