遺産分割協議が成立するまでの賃料について

前回は、東京司法書士会中野支部で建物明け渡し請求の研修講師のレポートを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/seminar/646

このところ相続にまつわる相談が増えてきて、その中で、よく質問される「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料について」というテーマでブログを書きたいと思います。

1.相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料は相続人が相続分に応じて取得する。

被相続人が所有していた賃貸物件(賃貸建物など)の所有権については遺産分割協議の対象となります。

その賃貸物件から相続発生後に生じる賃料についてはちょっと注意が必要です。

かつては、相続開始後の賃料は、賃貸人の地位が相続によって共同相続人に承継されて、共同相続人らは「共同賃貸人」となり、賃借人に目的物(賃貸建物など)を使用収益させる義務は性質上不可分債務(分けられない債務)であることから、この対価としての賃料も不可分債権(分けられない債権)と考えられていました。

しかし、平成17年9月8日の判例によって、この「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」は、遺産とは別個の財産であって、「共同相続人の共有財産」であると解されて各共同相続人がその相続分に応じて取得することができるとしました。

そのため、「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」については、そもそも遺産分割協議の対象ではないので、協議を経ることなく各相続人が分割単独債権として確定的に取得することができます。

2.遺産分割協議の対象に加えることもできる。

「相続発生から遺産分割協議が成立するまでの賃料」については、そもそも遺産分割協議の対象ではないのですが、共同相続人全員の合意があれば遺産分割協議の対象とすることができます

実際のところ、被相続人の面倒をよく見ていた相続人のうちの一人が、相続発生後に相続財産である賃貸物件の管理をしているケースが多く、その場合の賃料も長年その相続人が受け取っていることが多いので、その点も含めて遺産分割協議の中でまとめて話し合いをすることが多いと思います。

いつもありがとうございます。