賃借人が支払った修繕費はどうなる?

前回は、賃貸家屋の増改築部分の清算についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/shikikin-genjyoukaifuku/360

今回は、前回取り上げた増改築部分の清算関係に関連して、賃貸借契約期間中に賃借人が賃貸家屋に修繕を加えた場合に要した費用はどのように清算することになるかについて取り上げたいと思います。

1.賃貸人の修繕義務

賃貸人は、賃借人に対し、適切な状態で賃貸物件を使用収益させる義務を負っていることから、賃貸物件を使用収益させるため必要な修繕をする義務をも負っています。

そのため、不可抗力の原因で賃貸物件が損壊して修繕を要することになっても賃貸人に修繕する義務があります。

賃貸人が修繕する義務を履行しない場合には、その程度に応じて賃借人は賃料の支払いを拒むことができます。

2.建物の賃貸借契約において、賃借人が賃貸家屋を修繕あるいは改良した場合、その費用はどうなるか?

(1)賃借人が、賃貸家屋を使用収益するのに適した状態にするために修繕を施した場合(例えば、雨漏りがするので屋根を修理した、備え付きの給湯器やエアコンを修理したなど)の費用は、必要費となります。

この必要費は、賃貸人は賃借人に対して直ちに償還しなければなりません。

(2)賃借人が、賃貸家屋に改良を加えて賃貸家屋の価値を増加させたような場合(例えば、賃貸家屋の前の道路をコンクリートで舗装した、クロスを張り替えたなど)の費用は、有益費となります。

この有益費は、賃貸借契約終了時において、価値の増加が現存している場合に限り、賃貸人の選択に従い、支出された金額、または増加額のいずれかを賃借人に償還することになります。

3.償還請求期間について

賃借人は必要費、有益費のいずれにおいても、賃貸人が賃貸物件の返還を受けたときから1年以内に請求する必要があります。

この点、前回ご説明した増改築部分の償還については、特に請求期間はありませんが、実質的には必要費、有益費償還請求と実質的には同じなので、同様に賃貸物件の返還を受けてから1年経過した場合には償還請求できなくなるという考えが有力のようです。

4.予期せぬ必要費、有益費償還請求を回避するために

賃借人による必要以上の修繕、改良による必要費、有益費償還請求を回避するため、賃貸借契約時の特約において賃貸人が修繕義務を免れる旨を定めておくことが有効です。ただし、この定めを設けていても大修繕の場合には賃貸人が修繕義務を負います。

 

次回は、賃貸借契約が解除されると転貸借契約はどうなる?についてご説明させていただきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/375

 

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