前回は、強制執行における目的外動産の売却について取り上げさせていただきました。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/464
今回は、競売で取得した不動産の占有者に対する引き渡し命令の申立について取り上げさせていただきます。
1.引き渡し命令の申立とは
不動産競売手続において売却許可決定が確定し、代金を納付することによって、買受人は競売物件の所有権を取得します。
一方で、競売物件を占有している債務者(元所有者)は占有権原(所有権)を失いますので、買受人は、債務者(元所有者)に対し、所有権に基づく引き渡し請求権を有することになります。
また、抵当権者、差押債権者等に対抗することのできない用益権(地上権、賃借権等)は、売却により消滅するため、消滅する用益権を根拠に占有していた者は占有権原を失い、買受人は、債務者(元所有者)に対し、所有権に基づく引き渡し請求権を有することになります。
これらの占有者が任意に不動産の引き渡しをしない場合、本来であれば、建物明け渡し請求などの訴えを提起して判決等(債務名義)を取得し、強制執行手続を行うべきでありますが、それに要する時間、費用を考えると、買受希望者を広く募ることが困難になってしまうため、競売手続の中で簡易迅速に明け渡しの債務名義を取得することができるよう、引き渡し命令の申立を行うことができます。
2.引き渡し命令の申立時期について
買受人が代金を納付してから6か月以内に申し立てる必要があります。
ただし、順位番号の一番古い抵当権設定時期よりは遅れるものの、競売手続開始前に建物賃貸借契約を締結して居住していた入居者に対して、引き渡し命令を申し立てる場合は代金を納付してから9か月以内に申し立てる必要があります(賃借人は、代金納付から6か月以内は引き渡しをしなくてもよいため、申立期間が長くなります。)。
3.申立人について
代金を納付した買受人又はその相続人等が申立人になります。
買受人から転売等で譲り受けた者は申立を行うことができませんが、そのような場合でも、買受人は申立権を失うことはありません。
なお、買受人が目的不動産の占有を取得したり、占有者に対して占有権原を付与した場合は、以後、申立権を失いますので注意が必要です。
4.相手方について
(1)債務者(所有者)
債務者(所有者)は、実際にその競売物件を占有していなくても、引き渡し命令を発することができます。
破産手続中で破産管財人が選任されているようであれば、破産管財人が相手方となります。
(2)不動産の占有者
競売手続の事件記録上、抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原(地上権、賃借権等)を有していると認められる占有者以外の占有者は相手方となります。
抵当権者、差押債権者等に対抗することができる占有権原を有していると認められるか否かについては、あらためて詳しく取り上げたいと思います。
次回は、引き渡し命令の相手方となる不動産の占有者について取り上げます。
その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/484
いつもありがとうございます。