無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除

前回は、無断増改築による賃貸借契約の解除について説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/144

今回は、無断転貸・無断譲渡による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

賃貸借契約においては、原則、賃借物である不動産を無断で転貸(又貸し)、あるいは賃借権を無断で第三者に譲渡することはできません。そして、民法においては、無断転貸・無断譲渡が行われた場合には、賃貸借契約を解除することができると定めています。

ただし、無断転貸・無断譲渡があれば常に賃貸借契約を契約解除することができるかというと、そういうわけではありません。

「賃貸人(大家さん)の承諾がある場合」や、他の解除の原因と同様に、「借り主から、賃貸人(大家さん)に対する背信的行為と認めるに足りない事情(信頼関係が破壊されていない事情)が主張され、それが認められた場合」は解除することができません

この記事では、転貸あるいは賃借権の譲渡といえる場合はどのような場合か?無断転貸・無断譲渡を原因とする賃貸借契約の解除の際の注意点について説明します。

(解説)

1.そもそも転貸・譲渡に該当しない場合

転貸をしたといえるためには、転借人(又貸しを受けた者)が賃借人(借り主)から独立して不動産を使用収益することができる権限を与えられていることが必要です。不動産の引き渡しを受けていることはもちろんのこと、賃借人(借り主)の支配あるいは関与がない状態で不動産を利用していなければなりません。

そのため、賃借人(借り主)が、配偶者や子供といった家族を住まわせることは転貸になりません。

また、一時的に友人を同居させていた場合には、賃借人(借り主)から独立しておらず転貸に該当しないと評価されることが多いです。

 

2.無断転貸・無断譲渡についての承諾

転貸あるいは賃借権の譲渡について、借り主から事前あるいは事後に申し出があり、これに承諾した場合は有効になります。問題になるのが、そのような事実を認識していながら、黙認していた場合です。

例えば、賃貸人(大家さん)が無断転貸・無断譲渡を認識していながら、転借人あるいは譲受人に対して賃料の支払いを請求したという事実があると、黙示の承諾をしたと評価される可能性が高いので、無断転貸・無断譲渡の事実を認識した場合には、すぐに賃借人(借り主)に確認して、対応には気をつけないといけません。

 

3.背信的行為と認めるに足りない特段の事情

無断転貸・無断譲渡という事実があれば、それだけで借り主(賃借人)の大家さん(賃貸人)に対する賃貸借契約を継続するに堪えない背信的行為があったものとされるため、背信的行為と認めるに足りない特段の事情は、借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)において主張することになります

そのため、大家さん(賃貸人)としては、その借り主(譲渡人)あるいは転借人(譲受人)の主張に対する反論として、賃借人との信頼関係が破壊されていることを主張していくことになります。

例えば、店舗の借り主が個人事業主から法人化した場合に、形式的には不動産の使用者は変わっていますので、転貸あるいは賃借権の譲渡があったということはできます。しかし、借り主側としては、経営実態は変わっていないので、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があると主張してきます。この場合は、大家さん側としては、法人化によって、賃貸借契約を継続することができないといえるほどの信頼関係が破壊された事情(例えば、法人化に伴い会社の事業目的が変わった、事業主構成が大幅に変わり経営実態に大きな変更が生じたなど)を主張していかないといけません。

そういった主張を踏まえて、実質的に背信的行為があったかを評価し、解除が可能かどうかが判断されることになります。

 

次回は、特約(ペット飼育禁止)違反による賃貸借契約の解除について取り上げていきます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/148

いつもありがとうございます。