使用しない不動産は放棄することができる?

前回は、空き家を放置しておくことについての注意点や、有効利用する方法などについて取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/663

今回は所有している不動産を利用しない場合に、その不動産の所有権を放棄することができるかについて取り上げたいと思います。

1.所有者のない不動産は誰の物?

民法239条2項には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」と規定があります。

つまり、誰の物でもない不動産は国の物になるということです。

2.不動産の所有権を消滅させることはできるか?

不動産を所有していれば、毎年毎年固定資産税が発生し、管理のための費用もかかります。その結果、不動産を所有し続けることがコストにしかならない場合もあると思います。

そのような不動産を売却して手放すことができれば良いのですが、利用価値に乏しい不動産である場合は売却するのに相当時間がかかったり、売却自体がそもそも困難な場合が多いです。

不要な不動産が建物であるなら、費用はかかってしまいますが解体して、滅失登記をすることで建物を消滅させることができます。

それでは土地の場合はどうでしょうか。

所有する土地を放棄したり、無料で寄付するなどして国に引き取らせることはできるのでしょうか?

寄付については、国は行政目的で使用する予定のない土地等の寄付を受けることには合理性がなく、これを受け入れることはできないようです。

参考→https://www.mof.go.jp/faq/national_property/08ab.htm

3.土地の所有権は放棄できるか?

この点に関して、参考となる先例があります。

(事例)

ある神社が所有する崖地が今にも崩壊しそうである。

しかし、その崖地の補修には高額の費用が見込まれるが、所有者である神社にはそれを負担する資力がない。

そこで崖地の所有権を放棄して国庫に帰属させて、国の資力によって危険防止を計ろうと考えた。

そこで、所有者である神社は、

①土地の所有権は一方的に放棄することが可能かどうか?

②放棄することができるのであればその登記手続はどのようにするのか?

を照会した。

(回答

「所問の場合は所有権の放棄はできない。」(昭和41年8月27日付民事甲第1953号)

この先例によれば、土地の所有権の放棄はできないということになりそうです。

実際には、所有権の放棄は相手方のない単独行為なので、単に「要らない。」と意思表示すればよさそうですが、所有権の放棄によって不動産が国庫の帰属となるのであれば、登記が必要になりますので、この点について国の協力が得るのが難しいと思います。

4.相続の場面において不要な不動産を取得しないために

不動産を所有する方が亡くなった場合に、誰も相続を受ける者がいない場合(相続人不存在)などには、不動産の所有権は国庫に帰属します(民法959条)。

相続人がいても、相続人となるべき人が全員相続放棄をした場合も同様に相続人不存在となりますので、不動産を含めた被相続人の財産は一切受け取らないのであれば、相続放棄により不要な不動産を取得しないようにするのも方法です。

いつもありがとうございます。