障害を持つご家族のためにやっておいた方がよいこと

前回は建物明け渡しの強制執行について取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/kyouseisikkou/76

この記事では、大家さんのご家族の方の中に障害を持つ方がいて、大家さんが亡くなった後に障害を持つ方のお世話を福祉施設に委ねるために、かかる施設料を所有しているアパートの賃料収入をもって充てたいというお悩みを抱えた大家さんがどのようなことをしておいたらよいかということについて取り上げます。

このような場合に適しているのが、民事信託制度を活用した収益物件の管理です。

1.民事信託とは?

ある人(委託者)が、自分が有する一定の財産(信託財産)を別扱いとして、信頼できる人(受託者)に託して名義を移し、この託された人において、その財産を一定の目的に従って管理活用処分して、その運用益を特定の人に(受益者)に給付する制度です。

この制度を、高齢者や障害をもつ人の生活支援のために活用することで、自分の判断能力が低下してしまった場合や自分の亡き後に残された家族の幸せな生活を確保することが可能となります。

2.具体的事案

アパートを所有しているAさんは現在、家賃収入で生活している。Aさんには、Bさんと障害をもつCさんの二人の子供がいる。

Aさんは自分が認知症になり判断能力が低下したり、あるいは亡くなった後、Cさんの世話を福祉施設に委ねるため金銭を確保したいと考えている。そしてその福祉施設料は、現在所有するアパートの家賃収入をもって充てたいと考えているが、仕事をしているBさんにアパートの管理を任せ、Cさんのお世話をしてもらうことができるのか悩んでいる。

3.民事信託制度の活用

Aさんを委託者、Bさんを受託者、Cさんを受益者、司法書士等の専門家をCさんの代理人(受益者代理人)とし、アパートを信託財産として、民事信託契約を行います。

Aさんから委託を受けたBさんは、アパートの家賃収入等の管理を行い、その家賃収入の中からCさんに対し施設料相当の金銭の支払を行います。

Cさんの代理人として、司法書士等の専門家を指定しているため、Cさんが直接Bさんに生活費等の請求をする意思表示ができなくとも、代理人がCさんに代わりBさんに請求して、施設料等の支払いをしておいてくれます。

 

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4.民事信託制度の効果

民事信託制度は、委託者であるAさんの信託契約締結時の意思が、契約後の状況変化(Aさんが認知症になる、Aさんが亡くなる。)に関係なく半永久的に係属します。これを意思凍結機能といいます。

そのため、Aさんの、Cさんを最後まで扶養したいとの意思が、Aさんが認知症になった後、あるいは亡くなった後においても変わることなく活かされます。

民事信託制度は、遺言や成年後見制度とは異なり、大家さんが元気なうちからも利用することもでき、また、大家さんの状況が変化してもなお、民事信託契約の効力は維持しますので、様々な活用方法があります。今後も有益な活用方法を取り上げていきたいと思います。

 

次回は、期間満了による賃貸借契約の終了について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/92

 

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