借り主に相続人がいない場合の取り扱い

前回は、更新料の請求についてご説明させていただきました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/koushinryo/293

今回は、居住用の建物の賃貸借契約期間中に借り主が亡くなり、その借り主に相続人がいない場合について取り上げたいと思います。

借り主に相続が生じ、相続人がいる場合には相続人が借家権を相続します。しかし、借り主に相続人がいない場合や相続人がいても全員が相続放棄をした場合には、大家さんは家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをして、選任された相続財産管理人との間で賃貸借契約の終了(合意解除)について話し合いをすることになります。

ここで注意が必要なのが、賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子が同居していた場合です。この場合について詳しく解説していきます。

(解説)

賃貸物件に内縁の妻や事実上の養子など相続人ではない者が居住していた場合

借地借家法36条においては、「建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。」ということを定めています。

したがって、内縁の妻や事実上の養子に対して居住権がないとして建物の明け渡しを求めることはできません。

また、その内縁の妻などが借り主の権利義務を承継することから、借り主が生存中に滞納していた家賃などの債務があれば、その内縁の妻などが承継することになります。

 

Q:借り主に相続人がいる場合には借家権は相続人が相続するため、賃貸物件内に内縁の妻が居住していても、内縁の妻には賃貸物件の借家権はありませんので、明け渡しを請求することができますか?

A:判例(最判昭和37年12月25日判決)は、「内縁の妻は、借り主の相続人の借家権を援用できる。」として、内縁の妻がそのまま賃貸物件に居住することを認めていますので、建物明け渡し請求をすることはできません。

ただし、内縁の妻は、大家さんに対しては、相続人が取得した借家権を自分の権利として主張することができるだけで、相続人に対しては借家権を主張することはできないため、内縁の妻は相続人に対して不法行為あるいは不当利得として賃料相当額を支払う義務を負うことになります(賃料は相続人が大家さんに支払う義務を負うことになります。)。

 

次回は、サブリース契約の期間が満了した場合に、契約を終了できるか?について取り上げます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/301

 

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