借地権の買取を求められたら

前回は、「離婚の話し合いの最中に配偶者の親族から退去を求められたら?」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/835

空き家問題の仕事に取り組んでいると、他人の土地を借りて、その土地の上に自分名義の建物を建てて占有している借地人から、

「借地上の家屋が空き家になって、今後も利用する予定もないので解体を考えています。地主に対して残りの借地の賃貸期間に応じた借地権を買い取ってもらうことはできますか?」

とよく質問を受けます。

そこで、今回は、借地人は地主に対する借地権の買取について取り上げたいと思います。

 

1.借地人は地主に対して借地権の買取を求める権利があるのか?

正確に言うと、借地人は、地主に対して、借地権の買取を求める権利はありません。

似たような権利として建物買取請求権というのがあります。

建物買取請求権についてはこちら

建物買取請求権は、

  • 存続期間が満了した場合に契約の更新がないとき
  • 借地権上の建物等が譲渡された場合において賃貸人が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないとき

に、借地人あるいは建物の譲受人が、賃貸人に対して、所有する建物を時価で買い取るべきことを請求する権利です。

 

2.「存続期間が満了した場合に契約の更新がないとき」とは?

存続期間が満了した場合に契約の更新がないときには、主に次の場合があります

  • 借地人が借地契約の更新を請求したが、地主が更新を拒絶し、正当事由がある場合
  • 借地期間満了後における土地の使用継続について、地主から有効な異議が述べられて更新が生じなかった場合

いずれも、地主が借地人による土地の使用継続を拒んでいる場合です。

一方で、借地人において期間満了で契約を終了させることを希望するなど、地主と借地人の間で合意解約する場合においては、建物買取請求権が発生するかどうかは様々な説がありますが、判例は、原則的には、発生しないとしています(最判昭29.6.11判タ41-31)。

 

3.「借地権上の建物等が譲渡された場合において賃貸人が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないとき」とは?

例えば、不動産会社が借地権付きの建物を借地人から買い取った場合、建物の所有権は不動産会社に移りますが、借地権については地主の許可がなければ譲渡・転貸することができませんので、自動的に不動産会社に借地権が移るわけではありません。

そして、この許可を得ることができなければ建物を取得しても、土地上に建物を占有する権原がないので建物を収去しなければならなくなりますので、そのような場合には、地主に対して、建物買取請求権が発生します。

また、特に承諾することで地主に不利となるおそれがないのにも関わらず、承諾しないような場合には、建物の買取に先立ち、借地人(元の賃借人)から、地主の承諾に代わる許可の裁判(「代諾許可の裁判」)を求める申立をされる場合があります。

 

空き家となるような建物は、建物が建ってから相当期間が経過している場合がほとんどで、建物価値がゼロとなってしまう場合も少なくないことから、空き家になったことを理由に、借地契約を終わらせて地主に建物を買い取ってもらうということは難しいという印象です。

 

いつもありがとうございます。

離婚の話し合いの最中に配偶者の親族から退去を求められたら

前回は、「離婚の話し合いの最中に夫婦の一方が所有する家に住むことはできるのか?」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/831

前回に引き続き、離婚協議に伴い、同居していた建物からの立ち退きに関するトラブルについて取り上げたいと思います。

今回は、配偶者の所有する建物ではなく、配偶者の両親などの親族が所有する建物に夫婦で居住していたところ、夫婦間で離婚協議が行われることになった場合に所有者である配偶者の親族から立ち退きを求められた場合について取り上げます。

〈事例〉

私(夫)は、妻と一緒に妻の父が所有する家に同居していましたが、このたび妻と離婚することになり、その話し合いの最中において、妻の父が私に直ちに家から立ち退くよう求めています。

この場合に、私は妻の父の要求に応じて直ちに立ち退かないといけないのでしょうか?

 

〈結論〉

過去の裁判例において、夫婦間の離婚協議中に使用貸借契約の解除を理由として無条件に即時明け渡しを求めることは、権利の濫用という意味で時期尚早であり、解除の意思表示の効力は夫婦関係の解消によって確定的に生じると判断されています。

 

〈解説〉

1.事例において、夫が妻と一緒に妻の父が所有する家に同居することは、妻の父との関係では使用貸借か?

使用貸借が何かについては、前回の記事で取り上げましたのでそちらをご確認ください。

この事例において、夫が妻と婚姻期間中に妻の父の所有する家に同居することは、夫と妻の父の関係は使用貸借契約に該当します

 

2.夫は、妻の父の所有する家からはいつ立ち退かなければならないか?

配偶者の親族の所有する家において夫婦が同居する場合に、使用期間や使用目的を定めていないことが一般的ですので、上記事例でいう夫(借り主)と妻の父(貸し主)との関係が使用貸借契約だとすると、法律上、妻の父はいつでも夫に使用貸借契約を解除して夫に立ち退きを求めることが可能となり、夫はこれに応じなければならないということになります。

しかし、裁判例においては、夫婦間で離婚訴訟が係属している場合に、配偶者の親族から使用貸借契約の解除をされた場合には、借り主にとって酷であるので、権利濫用の意味で時期尚早であるとして、その解除の効力を離婚訴訟の判決が確定して、夫婦間の婚姻関係が解消したときに解除の効果が確定的に生じるとしています。

この裁判例の趣旨からすると、本件の事例の場合でも同様の事が考えられ、夫は妻の父からの立ち退き要求に直ちに応じなければならないというわけではなく、正式に離婚が成立するまでは立ち退きの義務は生じないと考えられそうです。

 

次回は、「借地権の買取を求められたら」というテーマでブログを書きます。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akiyamondai/846

 

いつもありがとうございます。

離婚の話し合いの最中に夫婦の一方が所有する家に住むことはできるのか?

前回は、「シェアハウスの活用と契約上の注意点」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/821

今回は、夫婦のうちの一方が所有する建物に配偶者が同居する場合に、その夫婦が離婚することになり、それに向けた話し合いが進められている場合に、家の所有者でない方の配偶者は出ていかなければならないのかということについて取り上げます。

〈事例〉

私(妻)は、夫が所有する家に同居していましたが、このたび離婚することになり、離婚の話し合いの最中において、夫が私に直ちに家から立ち退くよう求めています。

 

〈結論〉

過去の判例においては、離婚が成立するなど婚姻関係が解消されるまでは、同居して家を利用する権利があるので、それまでは立ち退く義務はないと判断されています。

 

〈解説〉

1.事例において、夫が所有する家に妻が同居することは使用貸借か?

使用貸借とは、貸主から無償で物を借りることをいいます。

物の返還時期が定められていれば、借主はその時期に返還しなければなりません。

返還時期が定められていなくとも使用目的が定められていれば、使用目的に従った使用及び収益が終わったときに返還しなければならず、使用目的も定められていなければ、いつでも貸し主の返還請求に応じなければなりません。

それでは、上記事例のように、夫が所有する家に妻が同居することは使用貸借になるのでしょうか。

この妻が夫の所有する家を利用する点については、特に特別の事情もない限り使用貸借と考えるのではなく、婚姻から生じる権利と考えられています。

夫婦は同居義務があるとともに相互に扶助する義務があるので、妻は夫と同居する家を利用する権利があり、夫が所有する家を使用することができます。

 

2.夫の所有する家からはいつ立ち退かなければならないか?

夫が所有する家を利用する権利が婚姻から生じる権利であるということから、婚姻関係が解消されたときには、その利用する権利が当然に消滅すると考えられており、婚姻関係が解消されたときには夫の所有する家から立ち退かなければなりません。

そのため、離婚に向けた協議中であったり、調停手続き中など、正式に離婚が決まっていない状態ではまだ家を利用する権利は消滅していないので、本事例の場合は直ちに立ち退く必要はなく、正式に離婚が決まったときに立ち退くことになります。

 

次回は、「離婚の話し合いの最中に配偶者の親族から退去を求められたら」のテーマでブログを書きたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/835

いつもありがとうございます。

シェアハウスの活用と契約上の注意点について

前回は、「入居者の騒音をやめさせないリスク」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/mansyonkanri/812

近年、新しい賃貸の形として、持ち家をシェアハウスとして貸し出している大家さんが増えてきています。そこで、今回はシェアハウスの活用と契約上の注意点について取り上げたいと思います。

1.シェアハウスとは?

一つの建物(一軒家、マンションの一部屋)の中で、各居室に他人同士が住み、リビング、ダイニング、キッチン、トイレ、バス等の設備を共同で利用する賃貸借です。

賃貸に出して有効利用したいと考える広い家を所有する大家さんと、自分の個室はちゃんと用意されていながらも、充実した設備のもと、比較的安い価格で入居したいとする賃借人のニーズが一致した新しい形の賃貸借ということができます。

 

2.シェアハウスの活用で得られる大家さんのメリット

①客付けしやすくなる。

広い家を一軒あるいは一部屋丸ごと貸しだそうとすると、広い家を探している少数の人しかその賃貸物件を見てもらうことができません。

しかし、シェアハウスにして一部屋単位で貸しだそうとすれば、全体の数として多い個人の入居者も、入居先の候補として見てもらうことができるようになります。

また、女性専用などといったコンセプトのあるシェアハウスにして、インテリアなどの共用設備を工夫すれば、容易に付加価値をつけて差別化をすることができます。入居者にとってもメリットになります。

②普通に1世帯に貸し出すより多くの賃料収益が見込める。

ファミリータイプとして貸し出すのではなく、ワンルームの部屋を複数貸し出す形になるので、広さで賃料を決定できるようになることから、各部屋満室になればトータルでは多くの賃料収益が見込めます。

③設備にかける費用が節約できる。

アパートと異なり、各部屋にキッチンやトイレ、バスといった設備が備わっているわけではないので、共用設備にかける費用が1軒分だけで済みます。

 

3.シェアハウスの注意点

シェアハウスは、他人が共同生活をする場なので、中には社会的な常識や、建物内での共通ルールを守らないといったように共同生活になじめないといった方も入居されることもあります。

その結果、他の入居者とトラブルが生じ、問題のない入居者が退去してしまったり、近隣から苦情が来たりということがあります。

そこで、そのような問題のある入居者を退去させやすくするためにも、入居者とは定期借家契約を結んでおくと良いでしょう。最初は試験的に賃貸期間を短くしておいて(例えば、1年とか)、問題の無い入居者であれば再契約の際に期間を長くするといったようにしていくのが良いと思われます。

定期借家契約の特徴についてはこちらを参考にして下さい。

 

次回は、「離婚の話し合いの最中に夫婦の一方が所有する家に住むことはできるのか?」について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akewatashi/831

いつもありがとうございます。

入居者の騒音をやめさせないリスクについて

前回は、「Airbnbを利用した空室物件の活用」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/801

今回は、賃貸物件を利用する入居者が騒音を出すなどして近隣に迷惑をかける場合に、賃貸人は入居者の迷惑行為をやめさせないとどのようなことになるのかについて取り上げたいと思います。

特にアパート、マンションと言った共同住宅の場合に多いのですが、ある部屋に住む入居者が騒がしくしたりすると、その近隣に住む入居者から大家さんに対して、「静かにさせてほしい。」などと苦情がでます。

1.アパートの場合

アパートの場合、特に苦情が来るのは、アパートの他の入居者からです。

大家さんは、入居者全員に対して、適切な状態で賃貸物件を利用させる義務を負っていますから、ある入居者の迷惑行為について、認識しているのにこれを注意せず放っておいたり、あるいは、注意してもやめさせることができないような場合は、他の入居者に対して適切な住環境を提供できていないことになります。

その結果、入居者から、適切な住環境を提供していないことを理由に、

損害賠償請求をされる

家賃の減額を要求される

家賃の支払いを拒まれる

退去されてしまう

といったリスクが生じます。

2.賃貸マンションの場合

(1)他の部屋の区分所有者あるいは占有者に対して

マンション管理組合の管理規約あるいは使用細則などで、

①「占有者は、対象物件の使用方法につき、区分所有者がこの規約に基づいて負う義務と同一の義務を負う。」

②「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項を第三者に遵守させなければならない。」

と定めてあることが一般的です。

賃貸に出しているマンションの入居者(占有者)が、騒音を出すなどして近隣に迷惑をかけるような行為があれば、入居者は①のルールに違反していることになります。

そして、迷惑行為をしている入居者に対して、迷惑行為をやめさせて管理規約や使用細則を守らせない場合には、区分所有者(賃貸人)は②のルールに違反していることになります。

その結果、他の部屋の入居者が退去してしまった、近隣の入居者が睡眠障害になってしまったといった損害が出てしまうと、他の部屋の区分所有者あるいは入居者(占有者)から、

損害賠償請求をされる

というリスクを負います。

 

(2)マンション管理組合に対して

入居者の迷惑行為を放置したままにしていたことで、マンション全体に関する何らかの損害が生じた場合には、マンション管理組合からは、

「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項を第三者に遵守させなければならない。」

というルールに違反したことに基づき、

損害賠償請求をされる

というリスクを負います。

 

なお、入居者(占有者)に対しては、管理組合集会で決議をとった上で、

迷惑行為の停止、結果の除去、迷惑行為を予防するための必要措置を求める訴え

あるいは

賃貸借契約の解除、専有部分の引き渡しを求める訴え

を起こされる可能性があります。

※入居者(占有者)に対する管理組合の対応についてはこちらを参考にして下さい。

 

次回は、シェアハウスの活用と契約上の注意点について取り上げたいと思います。

いつもありがとうございます。

Airbnbを利用して空室物件を活用してみよう。

前回は「定期借家の再契約の予約について」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/688

今回は、「Airbnbを利用した空室物件の活用」について取り上げたいと思います。

1.Airbnbとは?

Airbnbとは、米国Airbnb社が提供する民泊仲介サービスです。

自宅を宿として貸したい人と、宿泊料金を抑えて泊まりたいという人をつなぐサービスで世界中で利用されています。

例えば、空き家となってしまった自宅を貸し出して有効活用したいと思うのであれば、そのサービスに自宅の情報、利用方法、宿泊料などを設定して登録します。そして、借り手はその登録された情報を閲覧して物件を探し、希望に合致する物件の利用の申し込みをします。

貸し手にとっては、全く使わなくなった自宅や、自宅を一定期間空き家にする場合などに登録しておいて貸し出すことで有効活用することができ、また借り手にとっても宿泊料金を抑えられることで双方にメリットがあり、急成長しているサービスです。

そして、このサービスにより建物を、主に外国人観光客に利用してもらうことを狙いとしています。

2.「民泊」は自由にすることができるのか?

日本には、「旅館業法」という法律があり、「旅館業」に該当する場合には都道府県知事の許可を取得する必要があります

「旅館業」とは、厚生労働省のガイドラインによれば、①宿泊料を受けて、②人を宿泊させる、③営業を指します。

厚生労働省ガイドライン→http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei04/03.html

そうすると「民泊」も①、②、③の要件を満たし、「旅館業」に該当するように考えられます。

そして、「旅館業」に該当するため、都道府県知事の許可を取得したとしても、その先には、建物の入り口にフロント施設を作り、そのフロントに受付の人を滞在させなければならないとか、宿泊者には必ず住所と氏名を書かせなければならないといったルールが課せられることになります。

そうすると、気軽に民泊を行うことができません。

3.国家戦略特区に指定されたエリアなら?

現在、日本は2020年の東京オリンピックに向けて、国家戦略特別区域法が制定されて、いくつかのエリアが国家戦略特区として指定されています。

指定されているエリアはこちら→http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kokkasenryaku_tokku2013.html

この指定されたエリア内においては、「民泊」について、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業として内閣総理大臣の認定を受ければ館業法の規制が緩和されるため、以後都道府県知事の許可を受ける必要が無くなり、民泊が合法化されます国家戦略特別区域法13条)。

問題は、この内閣総理大臣の認定を受けるための要件の中に、

①利用期間が7日から10日の範囲で条例で定めた期間以上であること

②一部屋の面積が25㎡以上であること

③施設の使用方法について外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供等をすること

といった制約があります(国家戦略特別区域法施行令12条)。

訪日外国人の宿泊日数は短期間が多いと言われていますので、特に①がネックになりそうです。

ここ数年で、中国、ミャンマー、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナムといったアジア圏についてのビザ要件を緩和し、外国人観光客を誘致しようとする動きからしても、短期間の宿泊日数のニーズが多いとなるとそれに合わせた期間の短縮の可能性も考えられます。

Airbnbが今後どのように活用されていくのか注目していきたいです。

 

いつもありがとうございます。

定期借家の再契約の予約について

前回は「使用しない不動産は放棄することができるか?」というテーマでブログを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akiyamondai/684

今回は、「定期借家契約の終了後に再度定期借家契約を結ぶ」旨を、最初の契約段階で予約することについて取り上げたいと思います。

1.定期借家契約とは

期間の定めのある建物の賃貸借契約をする場合において、公正証書等の書面により、契約の更新ができないことを内容とする賃貸借契約を交わすことです。

2.定期借家契約の特徴

定期借家契約の最大の特徴は、「契約の更新ができないこと」です。

賃貸人の立場から見れば、契約の更新ができず、期間の満了後に確実に入居者を退去させることができるようになるため、将来的に建物の建て替えを予定している場合や単身赴任など一時的に自宅として使用しない場合などに定期借家契約を使うメリットがあります。

また、迷惑行為をする入居者の立ち退きの場面でも役立ちます。

契約が一度終了することになるので、市場の賃料相場と連動させた賃料の見直しをしたい方にも活用できます。

しかし、入居者の立場からすれば、定期借家契約であると期間満了後には必ず立ち退かなければならないので、賃貸期間以上に利用したいと考える入居希望者からは敬遠され、客付けが難しくなり、低い賃料設定で募集をかけざるを得ない場面もあります。

それでは、当初の定期借家契約の段階で「期間満了後に新たに再契約すること」の予約ができれば、入居希望者に長期間の安定的な居住を提供できるようになるのでしょうか?

3.定期借家の再契約の予約

当初の定期借家契約の段階で「期間満了後に新たに再契約すること」を予約することはできます

しかし、予約の中で再契約ができない事項を定め、その事項に該当する場合には再契約しない(予約を完結しない)と定める場合には注意が必要です

具体的には、賃借人において賃貸期間内に近隣迷惑をかけるような行為があった場合とか、賃貸人の単身赴任が終了してその建物を利用する事情が生じた場合といった事項が挙げられます。

そのような事項に該当することがあった場合、近隣迷惑行為の有無や、安定的な居住を受けられないという理由で賃貸人と賃借人の間でトラブルになる可能性があります。

そのため、再契約の予約は、ある程度賃借人との信頼関係ができている場合や、賃貸人側の事情にも理解を示してくれるような賃借人である場合などには有効に活用できると思います。

 

次回は、「Airbnbを利用した空室物件を活用」について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/801

いつもありがとうございます。

使用しない不動産は放棄することができる?

前回は、空き家を放置しておくことについての注意点や、有効利用する方法などについて取り上げました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/663

今回は所有している不動産を利用しない場合に、その不動産の所有権を放棄することができるかについて取り上げたいと思います。

1.所有者のない不動産は誰の物?

民法239条2項には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」と規定があります。

つまり、誰の物でもない不動産は国の物になるということです。

2.不動産の所有権を消滅させることはできるか?

不動産を所有していれば、毎年毎年固定資産税が発生し、管理のための費用もかかります。その結果、不動産を所有し続けることがコストにしかならない場合もあると思います。

そのような不動産を売却して手放すことができれば良いのですが、利用価値に乏しい不動産である場合は売却するのに相当時間がかかったり、売却自体がそもそも困難な場合が多いです。

不要な不動産が建物であるなら、費用はかかってしまいますが解体して、滅失登記をすることで建物を消滅させることができます。

それでは土地の場合はどうでしょうか。

所有する土地を放棄したり、無料で寄付するなどして国に引き取らせることはできるのでしょうか?

寄付については、国は行政目的で使用する予定のない土地等の寄付を受けることには合理性がなく、これを受け入れることはできないようです。

参考→https://www.mof.go.jp/faq/national_property/08ab.htm

3.土地の所有権は放棄できるか?

この点に関して、参考となる先例があります。

(事例)

ある神社が所有する崖地が今にも崩壊しそうである。

しかし、その崖地の補修には高額の費用が見込まれるが、所有者である神社にはそれを負担する資力がない。

そこで崖地の所有権を放棄して国庫に帰属させて、国の資力によって危険防止を計ろうと考えた。

そこで、所有者である神社は、

①土地の所有権は一方的に放棄することが可能かどうか?

②放棄することができるのであればその登記手続はどのようにするのか?

を照会した。

(回答

「所問の場合は所有権の放棄はできない。」(昭和41年8月27日付民事甲第1953号)

この先例によれば、土地の所有権の放棄はできないということになりそうです。

実際には、所有権の放棄は相手方のない単独行為なので、単に「要らない。」と意思表示すればよさそうですが、所有権の放棄によって不動産が国庫の帰属となるのであれば、登記が必要になりますので、この点について国の協力が得るのが難しいと思います。

4.相続の場面において不要な不動産を取得しないために

不動産を所有する方が亡くなった場合に、誰も相続を受ける者がいない場合(相続人不存在)などには、不動産の所有権は国庫に帰属します(民法959条)。

相続人がいても、相続人となるべき人が全員相続放棄をした場合も同様に相続人不存在となりますので、不動産を含めた被相続人の財産は一切受け取らないのであれば、相続放棄により不要な不動産を取得しないようにするのも方法です。

いつもありがとうございます。

空き家問題について

前回は、埼玉司法書士会で建物明け渡し請求の研修講師のレポートを書きました。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/seminar/671

今回は、最近問題となっている空き家問題について取り上げたいと思います。

1.なぜ空き家が増えているのか?

自宅が空き家となるのは、

①買い手や借り手がつかず、売ることも貸すこともできない。

②子供も独立して自分の家を持っているので、実家に住んでいた親が亡くなった後、実家を利用する者がいなくなってしまった。

③高齢に伴い老人ホームなどの施設や子供の家に移った。

といったことから始まります。

そして、こういった場合に、その空き家を簡単に処分できないところが問題なのです。

2.空き家が処分しにくい理由について

(1)家に対して思い入れがある。

長年利用してきた家であればあるほど処分することに慎重になるケースが多いです。

(2)相続が発生した後の家の承継方法を決めておかなかった。

相続が発生すると家は遺産となり共同相続人間の共有となります。このとき、遺言などで相続発生後にその家をどのように承継させるかを決めておかなかったため、共同相続人間で揉めて、遺産分割協議に時間がかかり、その間ずっと空き家であるという場合があります。

なお、遺言で承継する者を決めていても、遺留分を主張してきて遺産分割協議で揉めてしまうケースもあります。

(3)空き家を解体するとその敷地に再建築ができなくなってしまう。

新しく建物を建築するためには、道路に2メートル以上接していなければならないこと(接道要件)が建築基準法で定められています。

現在の空き家を解体してしまうとその接道要件を満たさなくなってしまうような場合には、再建築ができなくなってしまいます。

また、市街化調整区域内において建物を建てられる土地(既存宅地)に建物を再建築する場合には、都道府県知事の許可が必要で、許可されるためにはに建物が建っていることが必要です。

この許可を取らずに解体してしまうと再建築ができない土地となり価値が落ちますので、その許可を取る必要性だったり、タイミングによっては空き家のままにしておかざるを得ない場合があります。

(4)お金がかかる。

建物を解体するには解体費がかかります。

そして、解体後には土地は更地となりますので、建物に課税されていた固定資産税・都市計画税はなくなるものの、住宅用地の課税標準の特例が適用されなくなってしまい土地の固定資産税・都市計画税が高くなってしまうため、結果的に固定資産税が従前より高額になることもあります。

住宅用地の課税標準の特例についてはこちら

空き家のままにしているのはもったいないから、住宅用の家屋を店舗用として貸し出すという利用方法をすると、その建物は住宅用でなくなってしまうため、同様に住宅用地の課税標準の特例が適用されなくなってしまいます。

(5)売ろうとしても良い値段がつかない。

不動産を買ったとの値段と売ろうとしたときの値段が違いすぎて売却を躊躇し、そんな値段なら売らずに持っていようと考える方もいらっしゃいます。

3.空き家にしておくことで生じる問題点、デメリット

空き家は処分しにくいとはいっても、何もしないでそのままにしておくと次のような問題、デメリットが生じます。

(1)空き家を所有している以上、固定資産税・都市計画税が課税される。

(2)管理をしていなかったがために、

・老朽化が進み倒壊のおそれが出て、近隣に危険を感じさせている。

・放火のターゲットになりやすい。

・虫の発生源、動物の住処になっている。

(3)嫌悪施設と評価され隣地の不動産価値が下がる。

4.空き家対策の推進に関する特別措置法により行政ができること

以上のような空き家問題があることから、昨年空き家対策の推進に関する特別措置法が制定され、今年5月26日に完全施行されました。

この法律により、行政は次のようなことを行うことができます。

(1)空き家の実態調査

敷地内への立ち入り、個人情報を収集した所有者の調査をすることができるようになりました。

(2)適正管理をしない所有者への行政指示(助言、指導、勧告)、行政指導(命令)

(3)勧告を受けた場合の空き家について「特定空き家」の指定

「勧告」の行政指示を受けると特定空き家に指定されます。

(4)命令に従わない所有者への罰金、行政代執行

命令に従わない所有者へは50万円以下の罰金が科せられ、行政が所有者の代わりに建物の解体等を行います。その解体費用は所有者に請求します。

5.特定空き家に指定されると

特定空き家等とは次のような空き家です。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

具体的には、「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)を参照して下さい。

この特定空き家に指定されると、住宅用地の課税標準の特例が適用されなくなってしまい固定資産税・都市計画税が高くなってしまいます。

また、近隣住民にも知らせるため、市町村ホームページや広報誌などで空き家の場所、所有者の住所と氏名が公表されます

6.空き家の有効利用のために

このような空き家が問題となっているのは、人口が少なくなっている地方の問題だけではなく、今後は既に余っているのに更に作り続けている都市部にもおいても増えてくると考えられています。

そのため、空き家をそのままにしておくのではなく、今のうちから有効利用できるようにしていかなければなりません。

これまでは、空き家の所有者と空き家を必要としている人が巡り会う機会がなかったのですが、市区町村によっては「空き家バンク」の制度を提供して、不動産会社が取り扱ってくれないような低額の不動産の取引を支援しています。

また、空き家を利用することを前提としてリフォームする場合に補助金を支給してくれる自治体、再建築することを前提として解体費用の補助金を支給してくれる自治体もあるようです。

今のうちから、将来を見込んでどのように利用・処分するか対策を考えていく必要が出てきそうです。

 

次回は使用しない不動産は放棄することができるか?について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akiyamondai/684

いつもありがとうございます。

埼玉司法書士会で建物明け渡し請求の研修講師をしてきました。

前回は、遺産分割協議が成立するまでの賃料についてというテーマでブログを書きました。

その記事→https://k-legal-office.com/blog/fudousankeiei/658

 

平成27年12月5日に、埼玉司法書士会主催の研修において、建物明け渡し請求のセミナー講師をして参りました。

研修の模様の写真です。多くの方にご参加いただきました。

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1.研修テーマは家賃滞納トラブルの相談から訴状作成まで

今回は、大家さん向けのセミナーではなく、同業の司法書士の方、特に登記業務が主であまり裁判業務の経験が少ない方向けのセミナーをしてきました。

具体的には、

  1. 賃貸借契約の基礎知識の復習
  2. 滞納家賃の回収の相談があった場合に意識すべきこと
  3. 解決手続方法の選別
  4. 内容証明郵便の書き方
  5. 建物明け渡しのための交渉テクニック
  6. 訴状作成のポイント

について解説して参りました。

そのほか、

  • 契約時に預かっている敷金は賃借人から充当を指示できるのか?
  • 充当の時期はいつか?
  • 保証会社が立て替え払いをした場合に賃貸借契約を解除することはできるのか?
  • 所有権留保がついている自動車が駐車してある駐車場の明け渡しにおいて気をつけるべきこと

といったちょっと脱線した話で実務に役立ちそうな情報も織り交ぜながら解説し、セミナーを無事終えることができました。

この研修が受講者の方の実務において役立てていただければ幸いです。

そして、このような研修の機会を与えていただいた埼玉司法書士会研修部、民事実務委員会の皆様には感謝しております。

2.司法書士の裁判業務について

司法書士といえば、売買・相続といった不動産に関する登記手続や会社の役員変更といった登記手続をする人というイメージがあるかと思いますが、そのほかにも法務大臣からの認定を受けた司法書士であれば、請求額140万円までの訴訟手続については簡易裁判所で代理人として手続を行うことができます(仮に請求額が140万円を超えるものであっても、本人訴訟支援として、裁判所に提出する書類を作成することはできます。)。

そのため、

戸建て、マンション、アパートの一室、駐車場の明け渡し

滞納賃料請求

原状回復請求、敷金返還請求に対する対応

マンション管理費請求

などは司法書士でも対応できることが多いです。

このようなことでお困りの方は一度ご相談ください。

 

次回は空き家問題について取り上げたいと思います。

その記事はこちら→https://k-legal-office.com/blog/akiyamondai/663

いつもありがとうございます。